第292話 多機能()
「マンドラゴラが動いた……じゃと?」
「締め方が甘かったんじゃないか?」
「んなわけありゃせんわ。現にわしらの持っとるマンドラゴラは動き出したりしとらんじゃないか」
「それもそうか」
買い物を終え、適当に時間を潰し。
紫の魔法陣が出て来て、四人が登場。
ラベンドラさんが料理を……とか言い出す前に、冷蔵庫で動くマンドラゴラの相談をしたら、こんな反応が。
つまり、異世界組には起きてない変化って事か。
「カケル、冷蔵庫の中を確認させてもらうぞ」
「あ、はいどうぞ」
ラベンドラさんに許可を求められたので許可しまして。
冷蔵庫を開けたら、サッと扉近くにいたのに奥へと移動するマンドラゴラたち。
へたに動かなければいいのに……。
「確かに……動いているな」
「ですよね」
「この魔導具の影響じゃないんか?」
と、ガブロさんは冷蔵庫をポンポンと叩く。
流石にマンドラゴラ蘇生効果とかいう機能は企業も付けないと思うんですけれど……。
一応、冷蔵庫はそれなりにいい奴を買ってますけども。
「魔導具内にも魔力は感じられない。……ならば何故、マンドラゴラが蘇生を?」
「うぅむ……分からん」
「とりあえず、動いてると色々と困るのでまた締めて貰えます?」
「分かった」
というわけでマンドラゴラを締めなおしてもらう。
その間に材料の下ごしらえでもしましょうかね。
「むぅ……」
「どうした? ガブロ」
「全然萎びておらんな。渡してから時間が経ってるとは思うのじゃが」
「……確かに。全然萎びていない。頭葉とか、まだ瑞々しい」
「あー……野菜室はなんか水分を失わせないような機能が付いてるみたいです」
日本の冷蔵庫、信じられないような機能付きがち。
両方から開く扉とか、小窓のような小さめのドアとか。
俺の買った冷蔵庫にも、保存している冷蔵庫の鮮度を長持ちさせるために、水分が抜けにくくし、乾燥しにくくしてるとかなんとか。
原理は知らん。企業に聞いてくれ。
「……ラベンドラ」
「体内に保有された水分が一定を下回らない場合、回復する可能性が出てきた」
「面白そうな会話してますのね」
それまでガブロさんとマジャリスさんがしてた会話に、リリウムさんが参戦。
目がキラキラしておりますわ。
「仮説だが、マンドラゴラは自身の体内にある水分を消費して魔力が生成できる可能性がある」
「その魔力で自身を回復する、と」
「どれくらいの期間で蘇生するか、や、蘇生にどれほどの水分が必要なのかは要検証じゃな」
「私たちがするのも面倒ですわね。研究機関に送りつけましょう」
「魔法研究と魔物研究、どちらに送る?」
「両方で、推薦状は私が書きますわ」
……なんかまとまったみたいだ。
色々と大変そうだなぁ、冒険者。
「すまない、夢中になっていた」
「締めなおしも終わったぞい」
というわけでラベンドラさん達も手が空いたね。
じゃあ早速料理をしていきましょう。
「それで? 今日は何を作るんだ?」
「今日はホイル焼きを作っていきます」
というわけで取り出したるは秘密のお薬……ではなくアルミホイル。
アルミホイルはひつまぶし握りの時に使ってるし、初見じゃないよね。
「それを使った調理か、楽しみだ」
「そういえば、異世界にもアルミホイルに似た植物があるんですっけ?」
アルミホイルに似た植物ってなんだよって言った本人なのに思っちゃったよ。
まぁ、異世界植物だしな。何でもありやろ。
「ある。まぁ、割と希少気味ではあるが……」
「群生地をいくつか知っておりますので問題ありませんわ」
「下手をすれば、我々が流通の一端を担っている」
「すこーしだけ面倒な場所に生えとるからの」
なんかとんでもない事言ってる。
まぁ、この人達だしな、何でもあり。
「それで? 何をする?」
「大まかには野菜とトキシラズを入れて、味付けして包んで焼くだけです」
「つまりは入れる食材の組み合わせ次第……という事か」
「です。というわけで張り切って参りましょう」
というわけで、早速締めなおして貰ったマンドラゴラたちをカット。
人参、玉ねぎ、ピーマン、まずはこんなもんか。
「玉ねぎとトキシラズ、そこに塩コショウとバターでどうだろう?」
「いいですねぇ! まず間違いないと思います」
「そうか!」
んで、俺が指示するまでもなく、ラベンドラさんがいい感じに中身決めてくれててさ。
だったらこれ、俺は俺でやりたいホイル焼き作っちゃって、ラベンドラさんが作ったのはドキドキしながら開けて食べればいいのでは?
「ラベンドラさん、お任せしますよ」
と、マヨネーズにチーズ。レモン汁やオリーブオイルに果てにはホワイトソースまで。
冷蔵庫に残ってる調味料や日本酒。ワインの酒類と共にラベンドラさんに渡しまして。
「ちょっと面白そうですわね?」
「俺たちも作ってみていいか?」
「酒があるぞい!!」
「料理用ですから味の保証はしませんよ?」
そんなことしてたら、いつもは見てるだけの三人も参戦。
こりゃあ、一層中身が楽しくなりそう。
というわけで、俺はアルミホイルにまずはオリーブオイル。
ここに中国産のニンニクを敷き詰めまして……。
仕上げに軽く塩を振って完成。
ニンニクのホイル焼きアヒージョ風味。
あ、と、は……かなり大きくアルミホイルを取り、そこに大量のもやしを投入。
白ワインを少量入れて、たっぷりのバター、仕上げに塩コショウ。
大きさに気を取られて取ったらもやしだけというガッカリ感、ただ、食べてみると思ったより美味しいという感情ジェットコースターを狙ったモヤシボムの完成。
ご飯も炊けたし、包み終わった奴から焼いていきますわぞ~。
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