第291話 慣れちゃったなぁ……

「んじゃ、行ってくる」

「また帰ってくるときに連絡入れる事」

「翔なら私からのテレパシーを受け取れるはず」

「せめて念能力にしなさい念能力に」


 なんてバカなやり取りをしながらタクシーに乗り込んだ姉貴を見送り、家の中へ。

 おにぎり持たせたし、空港に着くまでは持つだろ、姉貴の腹も。

 ……俺は何をしようか。

 そろそろマンドラゴラを使い切りたい感じがするし、野菜たっぷりの何かを作るか。

 ――ていうか気になってたんだけどさ。

 冷蔵庫の中のマンドラゴラの配置が昨日の夜と違う気がするんだよね。

 冷蔵庫の奥にまとめてた筈なんだけど、朝起きて扉開けたら扉付近に固まってる……。

 いや、無いな。ないない。

 ちょっと怖い想像をしちゃったけど、あの四人がそんなヘマをするはず無し。

 というわけで朝兼昼ご飯のブランチを作っちゃおう。

 作るのは……ラーメン。

 マンドラゴラとトキシラズをバターで炒めて、袋麺の味噌ラーメンの上に乗せようかなと。

 絶対美味しいじゃん? というわけで早速作りましょう。


「人参、玉ねぎ、キャベツ……」


 こらこら、逃げるな。

 ――動くな。

 最近の野菜はいきがいいなぁ……。

 とりあえず取り出したマンドラゴラは逃げる前に真っ二つにし、動けなくしまして。

 人参は短冊切り、玉ねぎは薄切りに。

 キャベツは適当にざく切りっと。

 ……生きてるぅっ!!?

 ま、マンドラゴラ!? 四人に仕留められたはずじゃあ……。

 ……でも待てよ? マンドラゴラの脅威って、引き抜いた時の鳴き声であって、それ聞いたら最悪死ぬみたいな話だよね?

 つまり土の中にいないこいつらは無害?

 鳴こうともしないし……。

 ちょっと冷蔵庫確認。

 ――バッチリ目が合ったけど、鳴かないね。

 なんだ、じゃあちょっと動く味の良い野菜じゃんか。

 へーきへーき。

 ……今夜もう一回四人に『処理』してもらうかぁ。


「にしても、鮭とバターってなんでこんなに合うんだろうね?」


 バターを落としたフライパンに切った野菜を入れ、軽く塩コショウ。

 ある程度火が通ったらスライスしたトキシラズを投入し、軽く炒めて完成。

 鮭野菜炒め。あとはこれを袋麺作って乗せるだけ。

 使う袋麺は恐らく一番有名な味噌ラーメンでござい。

 やっぱりサッポロが一番と思うわけ。


「一味あったっけ……」


 七味は袋麺に別添されてるけど、正直あれじゃあ足りなくない?

 というわけで、俺は味噌ラーメンを作る時は一味を追加することにしている。

 多分これは遺書に書くね。

 お鍋にケトルで沸かしたお湯を入れ、乾麺をドボンしまして。

 袋に記載されてる作り方通りに作っていくよ。

 茹でてる間にスープを先に丼の中で作りましてっと。

 茹で上がった麺を丼に移し、鮭野菜炒めを上から全部乗せて完成!

 不味いはずが無い味噌野菜鮭バターラーメンなり。

 早速スープから……。


「あー、うっめ」


 もはや俺がよく知る味噌ラーメンじゃないね。

 スープの中にバターのコクとトキシラズの脂のコクが追加されててさ。

 このまま店で出されてるラーメンのスープって言っても通じる位なもの。

 そう言えば、市販の袋麺にサラダ油を入れるとお店の味になるってどこかで見たな。

 入れる量がおおさじ一杯とか正気を疑うような量だったりしたけど。

 でもまぁ、正直やってること変わらん。

 サラダ油か、動物性の脂かって違いな位だし。

 そんなスープの絡んだ麺が不味いはずもなく、そのスープに浸して食べる野菜炒めが不味いはずもない。

 極めつけはやっぱりトキシラズだよ。

 火が入った事で脂が出て、引き締まった身。

 そこに相性抜群の味噌スープに潜らせて口に運ぶと、もう自然とにやけちゃう。

 ちゃんちゃん焼きっていう、酒と味噌の相性を知らしめる料理すらあるわけで、この味噌ラーメンも例に漏れず。

 っていうかマジで味噌と相性いいな。

 ちゃんちゃん焼きも絶対にしよう。

 まぁ、今夜はアルミホイル焼きにするって決めてるんですけどね。


「ご馳走さまでした」


 普段はそんなことしないんだけど、今日のラーメンはスープを飲み干しちゃった。

 だって美味しかったんだもん。


「……さぁて、ホイル焼きの材料はほとんど揃っちゃってるし、改めて買うものはキノコ類くらいか」


 食べ終わり、丼と箸は食器洗浄機へ。

 冷蔵庫内のマンドラゴラに挨拶しつつ、使う材料を頭の中のレシピと照らし合わせまして。

 シメジ位だなぁ、欲しいの。

 ……そういえば、鮭のワイン包み蒸しみたいなレシピをどっかで読んだ気が……。

 検索検索ぅ!

 あったあった……。うん、ホイル焼きで出来そうだね。

 んじゃあこれも作るとして……まぁ、買い出しは行かなきゃか。

 ついでに何かデザートも買って来なくちゃだし。

 ようかんは反応どうだったんだろ。

 ていうか、久しぶりにようかん食べたけど、美味しかったよね。

 俺の記憶だと、あまりパッとしたイメージ無かったんだけどねぇ。

 あのようかん、全然そんな事無かった。

 やっぱり、良いようかんだと違うのかな。

 値段の違う理由が何となく分かった気がしましたとさ。

 んでは、買い出しして四人に備えますかね。

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