第113話 翔の反乱

 質問、カキフライは美味しいですか?

 答え、はい、とても美味しいです。

 質問、ホタテのフライは美味しいですか?

 答え、はい、かなり美味しいです。

 というわけで、この二つの味の材料となったらフライしか思い浮かばなかったんや、スマンな。

 んでも牡蠣とホタテのフライだけだとなんだか物足りないので……。

 晩御飯のメニューに困った時用に買ってた、衣付きで売ってる冷凍の白身魚のフライも一緒にしちゃおう。

 シーフードミックスフライ盛り、とでも言うか。

 業務スーパーで買ったから結構な数入ってるんだけど、思えば全然使って無かったな。

 というわけで材料を切っていくわけなんですが~、


「ラベンドラさん、こいつらを普通に調理する時にはどれくらいのサイズに?」


 ラベンドラさんと、感覚の共有をば。

 これしとかないとね、適当に切って、なんて指示出したらとんかつサイズとかに切りかねない。


「私が調理する時はそのままスライスして使うな」

 

 だ、そうです。

 ……まな板サイズの薄切りされた牡蠣かぁ。

 それはそれで新しくて試してみたいけど、今日はやめとこう。

 失敗とか怖いし。

 というわけで、気持ち大きめの牡蠣の身サイズに切り揃えちゃうことに。


「傘の方は、これくらいで」


 と、俺の思う大きさに切ってラベンドラさんに見せ。


「分かった。……随分小さく切るんだな」


 なんて言いつつも、ラベンドラさんは俺の切った大きさにピタリと合わせて切り揃え。

 柄の方も、普通の貝柱の厚さくらいになる様スライスし、そこからいちょう切りに。

 いちょう切りされてようやく通常の貝柱サイズとか、改めて食材のデカさが実感できるわ。


「こんな感じか」


 なお、そちらもしっかりと俺の切った大きさに合わせているラベンドラさんなのでした。

 ここまでくれば後は簡単。

 下味として軽く塩コショウを振り、衣をつけて油にどぼーん。

 カキフライは、中は半生派な俺だけど、流石に異世界キノコを半生で食す勇気はない。

 というか、それは勇気と呼ばない。蛮勇と呼ぶ。

 そこに冷凍の白身フライも一緒に入れましてー、以下、揚げ揚げタイム。


「ほー。肉以外も油で揚げることがあるんじゃな」

「どんな味になるんだ?」

「お肉以外の揚げ物……気になりますわ」


 待機中の三人はそんな事言ってますが、別に肉以外の揚げ物って珍しくないよね。

 海鮮系のフライは当たり前だし、揚げるって点なら天ぷらだってそう。

 というか、天ぷらは肉を使う事の方が珍しいかもしれん。

 野菜天とかはよく聞くし見るけど、とり天はまだしも、豚天とか牛天とかはちょっと記憶に無いなぁ……。

 探せばありそうだけどね。天ぷら、美味しいし。

 ただなぁ……家で作るのは大変なんだよなぁ。

 いや、美味しく作るのは大変、だな。

 なんと言うかギリギリ合格七十点みたいな味には出来るんだけど、やっぱりお店で食べるような、さっくりパリッとした軽い衣にならないんだよね。

 色々調べたりしてやり方を変えてるけど、一向に上手になっているっていう自覚がない。

 なので、天ぷらはどちらかというと苦手な料理。だから、今までも作ってないし。

 あとこの人ら、エビフライの存在を忘れてる? まさかね。


「これを使ったフライは分かるが、それは中身はなんだ?」


 と、揚げてる途中の白身魚フライを指差して聞いてくるラベンドラさん。


「これは魚ですね。身が白い魚のフライです」


 原材料なんだろ。

 ……タラの一種らしい。

 タラかぁ……白子のイメージしか無いなぁ。

 あとはたらこ。……つまり、身のイメージがあまりない?

 ……そうかも。あまりタラを買おうと思って買った事無いかも。

 鍋とかに入れようとしてくらいか、俺の記憶だと。


「身が白い魚……」

「タラっていう名前の魚なんですけどね」


 ラベンドラさんにタラの名前を出して説明したけど、どうにも伝わってる様子は無いな。

 まぁ、日本以外に魚を細かく区別してる所は少ないみたいだし、そんなもんか。

 ツナとかサーモンとかはまだ通じるらしいんだけどね。

 色んな動画で見る限り、ブリをイエローテイルって言っても、そもそも知らないとかあるっぽい。

 大体がその他の魚、みたいなノリで処理されてた。

 魚……食べてみたら全然違うのにね。

 こうやって魚の違いを知って、美味しさの違いに気が付ける国、日本。


「カケルの世界の魚なんじゃろ?」

「まぁ、そうですね」

「じゃあ俺たちの世界には居ない可能性があるな」

「ふむ。だから聞き取れなかったのか」


 あ、聞いたことないとかじゃなくて聞き取れてないって事か。

 つまりは翻訳魔法の限界と。

 なるほどな?


すずき鮟鱇あんこう、舌平目にはたはた竹麦魚ほうぼう虎魚おこぜ

「「???」」


 時たまバグって俺の脳を混乱させる報復だ。

 翻訳魔法め、一切翻訳出来ない言葉の羅列に混乱するがいいわフハハハハハ!!


「カケル、そろそろ揚がるぞ」

「あ、はい。じゃあ盛り付けていきましょう」


 俺はしょうきに戻った。

 というわけで千切りキャベツを立体的に盛り、そこに白身魚のフライを立てかけて。

 ホタテと牡蠣は、重ならないように見栄えよく置きまして。

 ウスターソースにタルタルソースをテーブルへ。

 あとはご飯とみそ汁、漬物の和食セットと共に並べれば、海鮮ミックスフライ定食の完成!

 さぁ、いただきましょう!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る