第124話 異世界お魚定食
さぁて?
会社休みの朝ご飯から贅沢しますわぞ~?
まぁ、それは一旦置いといて。
まずは昨日貰った異世界太刀魚なるものの味見から。
んで、前提ね? 絶対に太刀魚じゃない。
少なくとも、俺が知る太刀魚では決してない。
俺の知る太刀魚は、こんな体の形が丸々に太ったメダカみたいな形状では断じてない。
……メダカを例えに出したけど、多分サイズで言うなら百倍とかだけども。
「とりあえずは切っていくか……」
というわけで早速実食の儀。
まずは一番身の幅が広い部分を薄く削ぎ切り……。
身質はしっとりとしていて、きめ細やか。
包丁にべっとりと付くくらいに脂のノリがよく、身も柔らかめ。
多分だけど、ヒラメみたいな感じかな?
こいつを塩焼きにして試食。
「……ほー! 美味い!!」
舌と上あごで挟んだだけでほろりと崩れる肉。
そこから溢れる脂はさわやかな甘み。
身自体の味も良く、魚臭さがややあるものの、薬味とかが必要と思うほどでもない。
かなり上質な白身魚ですねくぉれは。
切った感覚からヒラメって表現したけど、あながち間違いじゃないな。
うん。煮つけにしたい。
甘いタレでじーっくり煮込んで、箸が当たっただけでホロホロと崩れるようにして、タレと共にご飯にかけて食べたい。
……ついでに卵黄も落としちゃったりしてさ。
たまんねぇぜ。
「んー? やっぱり身質から違うな?」
で、お次は腹? の部分。
先ほどのヒラメみたいな広い部位の後ろ側。
尻尾に向かうその途中。
一応太さというか、大きさが違う部位は確認の為に焼いて食べる予定だったけど、もう包丁を入れた時点で違いがハッキリと分かる。
さっきより明らかに締まった身。
弾力のあるその身は……何だろうな、タラとかボラとか?
あんまり魚を捌いた事なんてないから分からんわ。
……ヒラメはね、結構刺身用を買って食べたりしてたのよ。
一時期ハマっておりまして。
とまぁ身の中間部分も塩焼きにしてゴー。
「んぉっ!?」
早速塩焼きした身を口に運んだらですよ。
噛んだ瞬間に身が歯を跳ね返しましたね。
弾力すっごい。
で、負けじと何度も噛んでたら、四回目くらいかな?
いきなりスッと抵抗が無くなって、パッと解れて口の中にうま味がジュワ―。
もうね、びっくりよ。
今まで食べた魚にこんな食感の奴いなかったもん。
最初はハード系のグミって言われても驚かん。
でも、解れた瞬間の口の中に広がるうま味と脂は、マジでヤバイ。
脳みそから確実に幸せになる何かが分泌されるのを感じた。
後味は……物凄くサッパリしてる。
味はそうだな……スズキっぽい感じか。
これはソテーとかムニエルとか絶対に美味いな。
あと、多分フライにも合う……か?
サクッと衣を噛んだらハードグミの食感なんでしょ?
本当に合うか?
……やめとこ。やるなら別の部位だな。
「最後は尻尾か」
どこからが尻尾かは分からんけどね。
でも、何というか、明らかに脂のノリの境目みたいなのは分かるんよ。
一番広い部分が一番脂乗ってて、時点で中間。
尻尾付近はそこまで脂は乗ってない感じ。
んで、その尻尾周りの身なんだけど……、一番締まってる感じだったね。
包丁が入らないって程じゃないんだけど、確実に身が包丁の速度を奪ってる感覚があった。
例えるならそうだなぁ……鯖とか秋刀魚とかが割と近い?
いわゆる光物と呼ばれる連中達ね。
てなわけで塩焼きにしたんですが――、
「――!! こういうのでいいんだよこういうので!!」
思わずガッツポーズしましたわよ。
口の中に入れて広がった味はまさに秋刀魚!
しかも脂の乗りがくどくなくて丁度いい感じ。
大根おろし!! はないからかぼす!! も無い!!
クソがっ! こんなに美味い秋刀魚があるのに何もねぇじゃねぇか!!
落ち着け。落ち着いて素数を数えるんだ。
1。凄く落ち着いた。
「にしても秋刀魚かぁ!!」
どうしよう、今までの食材で一番テンション上がってるかもしれん。
無いわ。ちょっと盛ったわ。
多分一番テンション上がったのカニミタイナカタマリだわ。
でもさでもさ! 秋刀魚って恐らく日本人全員好きじゃん!?
じゃあ俺がテンション上がるのしょうがないじゃん!?
しかもだよ!? 鱗も骨も、皮までも奇麗に取ってくれてんだよガブロさん。
もう焼くだけで、魅惑の骨無し秋刀魚が食せるんだよ!?
パーティじゃん。そんなの。
神かよ。この食材。
「ちょっと尻尾のとこをもう少し」
あまりに嬉しくておかわりしたもん。
味見なのに。
んで、
「ファーー!!」
二回目で食べても美味しくて叫んだね。
ちなみにこの叫びの音階はソの♭。絶対音感とかないけど多分合ってる。
知らんけど。
「このまま塩焼きにしておろしポン酢とすだちで食べたいけど……朝は雑炊って決めたんだ……」
んで、そのまま異世界秋刀魚(太刀魚)を塩焼きにして朝ご飯にしたかったんだけどさ。
俺は昨日の夜に、笠キノコと柄キノコの雑炊を朝ご飯にするって誓っちゃったんだよ。
俺に。
というわけで今から贅沢
覚悟の準備をしておいてください。
俺は出来てる。
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