第537話 神の救い
「美味いもンだ」
「冷たさ、酸味、甘み、香り。その全てが口の中をリフレッシュしてくれるな」
「酸味も甘みも強すぎず、香りも主張が強くなく、スッと消えていく……。文字通り口直しにピッタリですわね」
「食事の合間にアイスを? と思っとったが、これはこれで納得じゃわい」
ちなみに出したゆずシャーベットは一口サイズね。
あくまで口直し目的だし、そんなにガッツリ量はいらないでしょと思って。
――まぁ、その……。
「……足りん」
マジャリスさんにとっては物足りない感じだったみたいですけど。
「別にこれがデザートと言っているわけでは無いだろうに……」
「そうですわよ? 雑炊を食べた後にきっとまだ控えていますわ」
「むぅ……」
無いけど。
いや、あるんだけどゆずシャーベットだよ?
それを先に少しだけお出ししてるだけだよ?
あれ? これ、ゆずシャーベットじゃ許されない感じ出て来てる?
どうしよう……、ヘイ神様? 何か案は無い?
(わしに聞くなわしに。……蜂蜜でもぶっかけたら満足するんじゃないかのぅ)
くっそ身も蓋も無い案が来たな。
……んでもゆずと蜂蜜って絶対に合うし、蜂蜜の甘さもシャーベットの清涼感で相殺可能。
……あれ? 意外といけるかも? もしかして神?
(紛れもなく神じゃが?)
けっへっへ、でしたでした。
「食後に出す分には蜂蜜をかけてお出ししますよ」
「ほら、カケルもこう言っておりますわよ」
「むぅ……」
納得してないみたいですよ神様。
ダメじゃないですか。
(お主の手首にはモーターでも入っとるんか?)
失敬な。
エンジン積んでます。
(ダメな方に盛るんか……)
「カケル、そろそろ頃合いだ」
「え? ……あ、はい」
急にラベンドラさんに呼ばれたから何かと思ったら、雑炊が出来上がったって話だな。
それじゃあ蓋、オープン!
「「おぉ~~」」
蓋を開けた途端に溢れる湯気と、出汁の香り。
ここに溶き卵を回し入れまして、刻んだネギを散らす。
そしたら蓋。
「出来たンじゃねぇのか?」
「卵が固まるまでもうしばらくお待ちください」
「……ぐぅ」
ぐぅの音、出ちゃった。
あるいはお腹の音かもしれないけども。
「まぁ、そんなに時間はかかりませんよ」
カッチリ固めるつもりは無いしね。
と言う事で再度、蓋オープン!
「今度こそ完成です」
「「おぉ~~」」
と言う訳で全員分取り分けまして。
もう食べる前から美味いが確定している。
長年日本人をやってる俺なら分かる。
「では改めて……いただきます!」
と、全員で宣言し、いざ実食。
――――。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
……。
はっ!? 思わず味わうことに没頭していた!?
いや待て、美味すぎるって。
とりあえず口は開きたくない。
こんな美味しい口の中の空気を外に吐き出したくない。
まずね、しゃぶしゃぶの時点で美味しかった。
うん、間違いない。
でも、ちょっと勘違いしてたかな。
……あれ、美味しさ全部を引き出せたわけじゃなかったんだね……。
イセカイカワブタから出た出汁、お野菜の出汁。
それらを吸ったお米とリボーンフィンチの卵……。
これはもう、美味しさの暴力。
どんなに怒りが沸いてる状態でも、この雑炊を食べたら一気に怒りは消え失せると思う。
「……ヤバいな」
「ヤバい」
「マジヤバいですわ」
「かなりヤバいわい」
「めちゃくちゃヤバい」
みんなヤバ過ぎて語彙力ヤバいじゃん。
いやまぁ、この雑炊にはそれくらいの力はあるか。
「ここまでうめぇか……」
「先ほどの口直しに食べたゆずシャーベットが効いている」
「確かに、しゃぶしゃぶの後に続けて食べていたらここまでの感動は無かったかもしれませんわ」
「そこまで計算づくじゃったとはのぅ」
「どう考えてもここまでとは思いませんでしたけどね」
最初の一口をゆっくりと時間をかけて飲み込んで。
ようやく口を開いて感想が言い合える。
いや、マジで美味い。
「うま味はもちろん、卵のコク、ご飯の甘み、ネギの香りと全てが最高のバランスに仕上がっている」
「全味一体でこその美味しさですわね」
「これが飯の最後に出てきたら、感動して気持ち良く寝れらぁな」
「ラベンドラ、しばらくはしゃぶしゃぶにしないか?」
「言うと思っていたが……野菜が心許ない」
「俺の鼻にかかればマンドラゴラ達を簡単に探せるぞ」
……トリュフを探す豚かな?
と言うか、マジャリスさんいつからそんな能力を?
「ここで花粉症になってから、マンドラゴラの気配にだけは敏感だからな、お前は」
あっ……。
えーっと……スギ花粉さん? ごめんなさいしましょうね?
それとも別の花粉さんかな?
あ、スギ花粉さんはマジャリスさんより先に日本国民大半にごめんなさいだね。
「変な体質だよな、全く」
「なりたくてなったわけじゃない」
「しっかし……美味かったな」
なんて話してたら、『無頼』さんが完食一番乗り。
まぁ、そんなに量は無かったし。
「これまでで一番の衝撃だったかもしれん」
「私は……やはりチョコレートの衝撃が一番だと思いますけれど……」
「間違いないな」
「酒じゃろ。どう考えても」
と、『夢幻泡影』の四人も完食。
それに少し遅れる形で俺も完食しまして……。
「デザートはもう少し後で大丈夫ですか?」
「ああ。少しゆっくりしよう」
「同感ですわ」
満場一致で雑炊の余韻を楽しみながらお茶をすすることに。
……ふぅ。マジで美味かったな。
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