第92話 じっくりクタクタ

 さて、夜ご飯の準備です。

 昼飯を平らげた姉貴を最寄りの駅まで送り、買い物して帰宅。

 折角の休みですし? やっぱり時間が掛かる料理を作りたいですわね?

 というわけで本日の料理、ババン。

 トリニチカシイオニクのトマト煮込み。

 若鳥と違って結構肉が固いし、こうした方が美味しいと思ってね。

 固いと言っても噛み切れない程じゃないし、何なら噛み応えがあって美味しいんだけど、どうしても唐揚げとかには向かなさそう。

 でも薄切りにして揚げてからチキン南蛮もどきとかもやりたいんだよな~。

 ……明日にでもするか。


「塩コショウ……と」


 まずはいい感じの大きさ……よりも大きめに切り出したトリニチカシイオニクに塩コショウを満遍なく振りまして~。

 皮目だけ、こんがりと表面を焼いて行きますわぞ~。

 んで、焼いてる間にお野菜のカット。

 ド定番の玉ねぎと、スーパーでキノコ見てたら舞茸が食べたくなったんで舞茸。

 あとシメジも買ってきました。キノコなんてどれだけ入れても美味しいからね、何の問題も無いね。

 で、玉ねぎはみじん切り、キノコは汚い所を落として、手で割いて準備完了。

 肉がそろそろいい感じなので、一旦引き上げまして~。

 皮目から出た脂に、チューブにんにくをダイブさせる。

 軽く炒めてニンニクの香りを脂に移したら、先程準備した野菜を投入。

 そしたら玉ねぎがしんなりするまで炒めまして~……トマト!

 缶詰に入ったカットトマト!!

 こいつをドバーっと逆さまにして全投入。

 どうせ缶詰にトマトが付着してるので、水を入れてかき回して落として、そいつも鍋に。

 引き上げてたお肉もこれに沈め直し、固形コンソメをぶち込んで煮ろ煮ろタイム。

 水分が飛ぶ前に砂糖、ケチャップ、ソースを入れて味を調え、味見。


「美味し」


 でしょうね、って感じの美味しさでした。

 そしたら、こいつを水分が飛ぶまで煮込んでいきませう。

 あ、隠し味忘れてた。

 日本酒……は全部ガブロさんが持っていっちゃったか。

 料理酒を少々。コクと甘さが引き立つらしですわぞ?

 見ている配信者が言ってた。

 んで、このまま一時間弱……あ。

 忘れ物第二弾を発見。ローズマリーを入れ忘れてるわ。

 何事も確認大事ですわね。という事で、ローズマリーをしっかり入れ、気を取り直して、煮込んでいきますわぞ~。



「お邪魔しますわ~」

「む、既にいい匂いが」

「これはこれは」

「絶対に美味い匂いがするわい」


 四人が来ました。

 いつも通りですね。

 で、早速目ざとく――鼻ざとく? 料理に反応している様子。


「今日も調理済みか……」


 と落胆するラベンドラさんに、


「材料と一緒に煮込むだけですよ。簡単ですけど時間が掛かるんで、先に済ませちゃいました」


 説明。

 いやぁ、一人前なら一時間弱なんだけどね。

 人数分となると、その五倍は掛かるわけで。

 部屋の中に一人で五人前のチキントマト煮込みを作るのは正直辛かった。

 主にいい匂いと視覚的な意味で。

 我慢出来なくなって途中で間食挟んだもん。

 ……牡蠣を。

 牡蠣にトマトソースってのも合うんだなぁ、って確認出来た、とてもいい間食でした、まる。


「今日の料理はパンが合いそうだが、米か?」

「どちらでも大丈夫ですけど、どうします?」


 料理を確認したラベンドラさんからそんな言葉が。

 確かに、チキンのトマト煮込みがパンに合わないはずないな。

 ご飯で食べる予定だったけど、言われてみれば確かに。


「カケルはどちらで食べますの?」

「俺は米で食べる予定でしたけど……」

「ではカケルに合わせますわ」


 けど、リリウムさんの一言で全員が米になりました。

 パンがいい人とか居ないのかな? と思ったけど、


「どうせ持ち帰りはパンになるでしょう?」


 ってリリウムさんが話しててなるほどなって。

 他の三人も同じ気持ちだったらしく、その言葉を聞いて納得してたよ。

 というわけでお皿に盛り付け……る前に!

 温めなおしてるトリニチカシイオニクの上に、スライスチーズをドーン!!

 倍プッシュ!! 二枚程乗せて、とろけるまで熱するわぞ~。

 いい感じに水分の飛んだトマトソースと共にトリニチカシイオニクをお皿に盛り付け、上からパセリをパラリ。

 完成! トリニチカシイオニクのトマトソース煮込みです!


「もう美味い」

「匂いだけで米が食える」

「作り方も聞いた限り、時間が掛かるだけだったな」

「待ちきれませんわ! いただきましょう!!」


 以上、料理を前にした四人の反応でした。

 ……リリウムさんが暴走気味なのが心配ですね。


「む、肉が柔らかい……」

「ナイフがスッと入っていくな」

「じっくりと煮込んだ効果なのだろう」

「肉汁が溢れて勿体ないですわ!!」


 なお、四人にはナイフとフォークをお箸とは別に配ってます。

 別にフォークでも米は食えるし、お箸要らないかなーって思ったら要求されたんだよね。

 使いこなせればなんでも食べられて便利だと。


「いただきます」


 というラベンドラさんの言葉を合図に、四人がそれぞれ切り分けた肉を口へ。

 頬張り、一噛み、二噛み。


「……」

「……」

「……」


 あ、既視感。

 誰も何も言葉を発しない状況に見覚えあるなぁ、なんて思っていると、


「美味っっっっっっっしいですわー--!!」


 リリウムさんが爆発しました。

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