第276話 姉貴の秘密
というわけで帰宅。
コーヒー豆まで買いに走らされた件は、紅茶の茶葉を買って貰う事で決着した。
いや、この間のキーマンを飲んでさ、紅茶も美味しいもんだって思って……。
で、こう……何と言うか。
買って来たパンを見栄え重視で盛り付けてる所だったり。
てなもんで買って来たパンの紹介よ。
まずは塩バターパン!
もっちもちの生地とバターの塩味、香りが最高なシンプルイズベストなパン!
続いてチョココロネ!
チョコを使ったパンなら絶対間違いないって事でチョイス。
さらにチョコは続いてパン・オ・ショコラ!
なんか地域によって呼び方が違うらしいけど、あのお店ではこの表記だった。
パリパリのクロワッサン生地に、チョコと粒チョコを練りこんだ不味いわけないパン。
ここらで総菜系へ。
まずはカレーパン!
やっぱりね、作り方教えたとはいえ本場のカレーパンは味合わせたいですわよ。
続いてソーセージフランスってパン。
太めでハーブの効いた自家製ソーセージが入ったフランスパン。
焼いて食べてとのこと。
「翔ー、コーヒー淹れてー」
「ユアセルフ」
「けちんぼー」
姉貴をあしらいつつ盛り付けを再開。
俺は忙しいんだよ。
てことで総菜系最後はタマゴサンドイッチ。
もはや日本を代表するサンドイッチの具よね。
もうギッシリと具が挟まってるから美味しそうで……。
で、もちろん忘れていないメロンパンを最後に乗せて……。
デザート用に買った、桃や焼きりんご、ブルーベリーのカスタードタルトは冷蔵庫へ。
焼きりんごのタルト、姉貴が買ってたけど結局食べきれなくてさ。
半分貰ったんだけど、滅茶苦茶美味しかった。
サクッとした生地と、シャクッと食感の残った焼きりんご。
更にそこから溢れる果汁の瑞々しさ。
果物由来の甘さと酸味が、下に敷かれたカスタードクリームと混ざり合ってさ。
これなら四人も笑顔になるだろうって確信したもん。
「どうせ四人が来たら淹れるんでしょー?」
「そりゃあそうだけどさ」
なお、姉貴はもういつでも食べられます状態で、一人さっさとテーブルについてたりする。
よもやそこから動かんとか言うなよ?
今夜はベッドまで運ばんぞ?
「ん、来る」
とか言ってたら、姉貴がそんな事を言い出して。
その視線を追うと、出現する紫色の魔法陣。
あのさ、前から気になってたんだけど……。
「姉貴、絶対に魔法陣が出現する前に反応してるよね?」
「ん? そだよ?」
魔法陣が出現し、四人の姿がこちら側に現れるまでの僅かなラグ。
その間に、気になった事を聞いてみた。
「なんで?」
「なんでって……分かるから?」
「邪魔するぞい」
なお、そんなにラグは無いので四人はすぐに現れる模様。
「おお! パンか!? これ全部パンか!?」
「見たことが無い形のパンばかりですわ!!」
「という事は今日は調理をしない……?」
「発案は姉貴です」
調理が無いと知ったラベンドラさんに、秒で姉貴を売り飛ばし。
ラベンドラさんの恨めしそうな視線を気にもせず、
「リリウムさん。翔が魔法陣の出現を感知する私の事不思議だって」
姉貴は、俺の疑問の解答をリリウムさんにぶん投げて。
「簡単な事ですわ。カケルを介さずお姉さまへ宝石を送るという事で、私の髪束を探知用に持たせたことは前に話しましたわね?」
「ええ」
「あの髪束、私がこの世界への転移魔法を発動すると、感知して震えるようになっていますの」
……髪束が振動するの?
怖くね? ホラーじゃん。
周囲に人が居たらどうするねん。
「そうやって髪束が震えたら、すぐに人気のない所に移動するの。じゃないと、虚空から宝石が出現する瞬間が見られちゃうから」
……あ、なるほど。
だから震えるんだ。
どこからともなく宝石が出現する瞬間を見せないように。
つまりはアポ電みたいなもんか、髪束の振動が。
「ん? でも、どうしても人の目がある時ってのはあるよね?」
「だから、転移が無理ってなったらこの髪束をギュッと強く握るの。そしたら、その時の転移はキャンセルされるから」
「急に髪を握られて、少しびっくりしてしまいますが」
……いや。
いやいやいやいや。
髪束って、別にリリウムさんにはもう繋がってないじゃん!?
なのに感覚あるの? 握られたら分かるの? 怖くない?
「てことで、私は四人がこの世界に来ようとしたり、何かを送ろうとしたりするとちょっと前に分かるの」
「な、なるほど」
なんと言うか、納得はした、うん。
姉貴が魔法陣出現を早く察知するメカニズムは理解したさ。
でもなぁ……何と言うか、もう少しやり方あったんじゃないかって思うけどね?
「……次からは転移で食材を送りつけましょうか?」
「絶対にやめてください」
あの、笑顔で脅さないでもろて。
なんて悪魔みたいな発想するんだこのエルフ……。
「のう、そろそろ食わんか?」
「この未知なるパンたちに涎が止まらんのだが?」
なお、俺がそんな脅しを受けている間も、他の三人は映え意識で盛られたパンを観察しながら涎を垂らしてましたとさ。
「あ、ちなみに焼き戻した方が大体美味しいと思うので、食べるパンを教えて貰えたらそれ焼きますよ」
うん。
俺としてはこれでちゃんと伝わると思ったんだよ。
だけどさ、
「「全部!!」」
あの、違くて。
全部食べるのはまぁ、何となく分かってるんです。
その……食べる順番をですね……。
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