第229話 ちゃんと食べるよね?
すげぇや。
用意してた肉も、サンチュも、野菜も。
ついでに白米にワインまで綺麗サッパリ無くなってら。
大丈夫か? 神様に献上するとか言ってたはずなのに。
「気付いたらワインまで飲み干していたな……」
「美味し過ぎるのが悪い」
「一度飲み始めたら止まりませんでしたわね」
「満足じゃわ~い」
ガブロさんはすっかり出来上がってるとして、エルフ三人が我を忘れる様にワイン飲んでたの面白かったな。
――ところでなんですけど、俺、別に今出したワインが今日買って来た全部とは言ってませんよ?
「ちなみにワインはもう一本あって――」
「「ガタッ!?」」
いや、もうツマミ無いでしょ?
持ち帰って神様に献上するための奴だから座ってもろて。
「は、初めてのワインならぜひ試飲を……」
「だが、そうするとまた止まらなくなるぞ……」
「わ、ワインを頂いて元の世界に帰った時に神様に何と思われるか……」
……悩みまくってるな。
大人しく持ち帰りなさいっての。
「か、カケル。このワインの特徴だけ聞かせて貰えないだろうか?」
どうやらちゃんと飲まないと決めたらしく、けれども諦めきれないようで。
ワインの特徴聞いて、飲んだつもりにでもなろうとしてるんだろうね。
「サリーチェサレンティーノって言うワインで……」
当然特徴とか知らないから、スマホで検索。
ちなみに今日買って来てた赤ワインは、最近見始めた動画投稿者の影響がかなーり出てる。
……だって、滅茶苦茶美味しそうに飲むんだもん。
「濃厚かつボリューミーな果実感と、複雑で芳醇な香り、そして長く続く余韻が楽しめる……だそうです」
「「ゴクリ」」
前のめりになってますけど大丈夫です?
本当に開けずに持ち帰れる?
「す、すまないカケル。デザートをお願いしても構わないだろうか?」
えー、ワインの誘惑を断ち切ろうとデザートを所望するラベンドラさんの姿がこれです。
ちなみに、テーブルの上からサリーチェサレンティーノを動かしたらガブロさん以外の三人がワインの動きを目で追ってました。
猫かな?
ちなみに冷凍庫からアイスクリームを取り出したらそちらに目が奪われてました。
猫だな?
「アイスクリームか」
「焼き肉の後だ。冷たくサッパリしたものが合うだろう」
「前に食べたものより色が白いですわね?」
「貰ったアレの果汁を使って作ったんでこの色になりましたね」
ケトルに水を入れ、お湯を沸かしながら。
アイスをそれぞれ、お皿に取り分けつつ……思う。
いやぁ、最初は無理だろうなぁと思ったんよ。
バカデカアーモンドッポイミルクでアイスクリーム作るの。
……出来た。
生クリームみたいな感じなのかもしれない、バカデカアーモンドッポイミルク。
でもその割にはしつこくないし、脂っぽさも感じないし……。
あと、色に関しては前回はデカクカタイタマゴを使ったからっていうのもあるかも。
卵の黄身の分量も前回ほど多くないしね。
「ま、なんにせよ美味しくいただくぞい」
「もう少しだけお待ちください」
で、早速食べようとしたガブロさんに待ったをかける。
なお、同様にエルフも動きを止めたもよう。
早いからね、食べようとするの。
「今日はもうひと手間加えるんで」
「すぐに食べたいのだが……」
「待ちましょう? カケルの事ですもの。きっと、もっと美味しくしてくれるはずですわ」
「そうだな。待とう」
あ、期待が重い。
だが……その期待には応えられるはず!!
お湯が湧いたら、マグカップにドリップコーヒーをセットし。
ゆっくりと注いで、コーヒーを抽出。
……こいつを!! みんなのアイスに!! 回しかける!!
「あ」
苦いの苦手なマジャリスさんが何か言いかけるけどもう遅い。
コーヒーは既に!! アイスに直撃しているッッ!!
「というわけで本日のデザート、コーヒーアフォガードになります」
あ、異論や意見は締め切りましたのでまたのご来店を。
……い、家の中でやる事だから少しくらいは大目に見て欲しい。
本来のアフォガードはエスプレッソだって知ってるんだからね!!
「いうてコーヒーをアイスにかけただけじゃろ?」
「でも、絶対に美味しいですわよ?」
「疑う余地も無い」
「ア、アイスだけでよかったのに……」
なんか一人、現実を受け入れられてないエルフが居るな。
ちなみにアイスはそれで全部じゃないから、苦くて食べられないならアイスだけをお出しすることも可能。
だけど、一口くらいはチャレンジして欲しさがある。
「じゃあ早速……」
「いただくぞい」
というわけで、マジャリスさん以外の三人がアフォガードをパクリ。
ちゃんとコーヒーとアイスとをスプーンに乗せて食べてる。偉い偉い。
「おほほー! コーヒーの香りやコクはもちろんあるが、苦みはアイスと混ざってかなりマイルドになっとるぞい!!」
「スッキリした甘さのアイスの中から、香ばしさやほろ苦さがくるのが新鮮だな」
「自分でアイスとコーヒーの比率を調整できるのも素晴らしいですわ!」
ほら、三人は絶賛してるよ?
マジャリスさんも食べてみなって。
「う……いただく」
そう言って、アイス八割コーヒー二割位の配分でスプーンに乗せたマジャリスさんは。
ゆっくりゆっくり……恐る恐るといった様子で口に運び……。
「あむ!」
目をしっかりと瞑って一口。
……そのお味は?
「美味い。――美味い!!」
お気に召したようで何より。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます