第550話 心外ですね……

 調理の時は普通に取り扱ってたと思ったんだけど、どうやらラベンドラさん達、ゴーヤに抵抗感があるらしい。

 何故だろう?


「似たような生き物が居たりするんです?」


 こういう事だろうと思って聞いてみるも、あまりしっくりは来ない。

 だって、そうならさっきの調理の時に聞いてきてるはずだから。


「生き物というか……」

「というか?」

「闘魚倭種の毒袋そっくりなンだよ」


 ちなみに答えは『無頼』さんが教えてくれた。

 なるほど?

 闘魚倭種……つまりイセカイカワブタの毒袋、か。

 フグ毒については俺も知ってるし、それが異世界版にアップグレードされてたら確かに恐れもするか。


「だが触り心地から違った。似ているのは見た目だけだ」

「そうですわよね……」


 と、口では言ってても、箸が伸びる気配はない。

 はぁ……やれやれ。

 俺がファーストペンギンになってあげなきゃいけないのか。

 ……この場合、俺はリスクが無いのを知ってるんだけど、それでもファーストペンギンって表現はあってるんだろうか?


「あ」


 まぁ、考える間もなくいただくんですけど。

 豆腐、ゴーヤ、ベーコンを一緒に掴み、一回白米の上でバウンドさせて口の中へ。


「むほほほ」


 ゴーヤが若いせいかちょっと食感が固いけど、それでも十分に味わえる。

 まず何と言っても豆腐の滑らかさだね。

 レンゲで掬って入れてる都合上、形がバラバラなんだけどさ。

 それがむしろいい味出してるというか……断面にイセカイカワブタ節の旨味が吸われてて、噛むだけでジュワッと旨味が広がる。

 そこにベーコンの塩味と脂、リボーンフィンチの卵のコクと味。

 全部が一体となってひたすらに舌の上に美味しいを提供してくるのよ。


「めっちゃ美味い」


 このまま食べないなら俺だけで食べちゃうよ?

 くらいの勢いで二口目に手を伸ばしたら。


「ヨシ」


 マジャリスさんが始動。

 ……しっかりゴーヤー以外をお箸で掴んで口へ。

 何を見てヨシって言ったんですか?

 

「美味いぞ!!」


 いやそりゃあね。

 というか、そこに関しては多分誰も疑ってないのよ。

 ありがたいことにね。

 

「避けて食うな避けて」

「ま、この場所で死ぬことはねぇだろ」


 ちなみに異世界組で真っ先にゴーヤを食べたのは『無頼』さんでした。

 ラベンドラさん辺りかと思ったのに。


「ほぉ……。程よい苦みだな。――酒に合う」

「毒は?」

「僅かにも感じねぇよ」

「ホッ……」


 露骨に安心するじゃん。

 ここまで結構長い間ご飯作って来たと思うんだけどね?

 まだ俺は信用されてないって事なのか。

 もう病む。ワインの提供やめる。


(その分こっちに回しとくれ~)


 神様のあまりにも早い勧誘、俺でなきゃ見逃しちゃうね。


「豆腐の旨味とゴーヤの苦みがかなり合う」

「全体的なバランスが凄いですわ!」

「『無頼』の言う通り酒に合うのぅ」

「甘口の白ワインにももちろん合うぞ!」


 この場合、『無頼』さんがファーストペンギンになるのかな。

 その本人は特に気にすることなくゴーヤチャンプルーで焼酎の温ロックを飲んでますけども。


「ベーコンの塩味も豆腐と合うな」

「豆腐と合う具材でしか作られとらんじゃろ」

「作り方を聞いておきませんこと? 元の場所でも食べたいですわ」


 という事なので豆腐の作り方を動画で見せてあげることに。


「……カケル」

「はい」

「このにがりというのは?」

「……お渡ししますよ」

「助かる」


 悲報。

 異世界ににがりが無い。

 塩作る時の副産物らしいんだけどね。


「この豆腐は絹ごしか? 木綿か?」

「多分木綿に近いと思いますよ?」


 こし網使って絞っただけだし。

 絹ほどきめ細かくないはず。


「コレ、絞るではなく完全に液体と固体に分離させたらどうなるんだろうな?」

「クッソ興味あるんで試して貰っていいですか?」


 恐らくは魔法でやるんだろうけどさ。

 気になるじゃん? 魔法ごし豆腐なんて。


「明日、持って来よう」

「助かります」


 じゃあそれは冷ややっこで食べるか。

 生姜やネギ、イセカイカワブタ節を乗せれば見事な一品おかずになるだろう。


「カケル、ご飯お代わり」

「はいはい……ん? マジャリスさん」

「な、なんだ?」

「ゴーヤだけ避けて食べてますね?」

 

 ご飯のお代わりを所望するマジャリスさん。

 そのマジャリスさんの前にあるゴーヤチャンプルーが乗った皿は、綺麗に緑色だけが多く残っていて。


「い、いや……そんな事はしないぞ!」

「苦いから食べたくないんでしょう?」

「こいつ、ンな子供みてぇなことしてンのか?」

「誰が子供だ誰が!!」


 いや、そんな事やるの子供だろ。

 

「食えばいいんだろう食えば!!」


 なんて子供みたいな反応で、ガッ! とお箸でゴーヤを掴み。

 そのまま口に放り込んで……。

 噛んだか? レベルで即飲み込み。お口直しにワインをグビリ。

 ……やることなすこと子供っぽさがぬぐえてない……。


「フッ」

「全然決まってませんからね?」


 変なキメ顔してますけども。

 他の苦い食材の時はこんな反応無かったと思うんだけどなぁ……。

 あ、でもコーヒーダメか。

 まぁ、少しくらいは我慢して貰って。


「カケル! デザートは!」

「全員が食べ終わってから用意しますからね?」


 自分でご飯のお代わりを頼んでおいてデザートを気にするんじゃない。

 あと、食べ終わってから用意するって言った瞬間に、完食しないと昼休みを取れないと知った小学生みたいな表情するな。

 どこまでも子供っぽいんだから……全く。

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