第314話 ハハッ(甲高い声)
「持ち帰りの料理なんですけど……」
正直、困ったら揚げものでお茶を濁そうって思ってたのに。
悲しいかな、揚げ物にすると爆発しちゃうらしいしなぁ。
となると焼くか、塩茹でくらいしか思いつかない……。
というわけでラベンドラさんにぶん投げるの巻き。
「なんかリクエストとかあります?」
「そうだな……前に食べた料理をこれらで作ってみたい」
「お、いいですね。材料があれば作りますよ」
こういう時にラベンドラさんはちゃんと期待に応えてくれるの安心感凄い。
さてさて、何を食べたいんだい?
「ガワの準備はこちらでしている」
……ガワ? って事はアレか? アレなんだな?
「エビ餃子を作りたい」
「いいですね……はっ!? いい事思いつきました!」
餃子と聞いてふと思い出した。
某夢の国の海モチーフの方。
そっちで売られてる餃子ドッグ。
中身をこのシャコナリケリとコシャコナリケリで作るエビ餃子の具でやったら絶対に美味しいじゃん?
というわけで作っちゃおう!
「じゃあ、材料はみじん切りで」
「分かった」
というわけでラベンドラさんにキャベツをパスし、俺はネギを刻んでいく。
で、俺がネギを蛇腹切りにしようとした瞬間にはキャベツはとっくにみじん切りになってるわけですね。
魔法ズルいね。
「じゃあエビもいい感じに叩いて貰えます?」
「任せろ」
シャコナリケリを粗みじん切りにして貰い、俺はその間にネギのみじん切りを終わらせ、コシャコナリケリをぶつ切りに。
で、俺とラベンドラさんで刻んだ材料をボウルにぶち込み、ここに調味料をば。
塩コショウ、生姜、ごま油、お酒を投入し――味覇ぁ!! 中華最強の万能調味料!! 半練りタイプ!!
をレッツら混ぜ混ぜ。
全体的に馴染んで来たら、ラベンドラさんが持参した側を千切って伸ばし。
真ん中に先程のタネを置いて包んでいく。
当然、飾りのヒダは忘れちゃダメだぜ。
これが無いと餃子ドッグを名乗れないからな。
「後はこれを蒸すだけですね」
「なるほど。……お前たち、仕事だ」
という事で一通りの工程が終わったら、ラベンドラさんが三人へ招集をかけまして。
三人で、生地にタネ詰めて包む作業を黙々と。
その間に俺は蒸し器の準備。
水をたっぷりと張って、一、二、三……四本しか入らないか。
二段にしても合計八本。
で、今既に出来上がってる餃子ドッグが既に二十……。
まだ増えるか……?
「カケル、とりあえず最低限でいい。残ったものは後で向こうの世界で私が蒸す」
「そうして貰えると助かります」
一応出来る限りは作るけどさ。
言うても蒸し時間とか入るわけで。大体一回で20分とか蒸し時間必要だからね。
まぁ、蒸し器が一つとは誰も言ってないわけで。
一個で足りないなら二個にしよう。
というわけで二丁蒸し器で餃子ドッグ、蒸していくわぞ~。
*
「いい風だ……」
「清々しい朝ですわね」
「そろそろ起こすか?」
「じゃな。……ホレ、起きんか」
結局、翔が全ての餃子ドッグを蒸すまで待って異世界に戻った『夢幻泡影』の面々は。
まだ眠りの世界に居たオズワルドを転移魔法で拉致。
問答無用で自分たちと朝食を取らせるようにしていたりする。
「ん……うん……?」
そうして、ガブロに揺り動かされたオズワルドは、何も知らぬままに目を覚まし……。
「――どこだ!? ここ!!?」
自宅で寝ていたはずなのに、気が付けば周囲は火山地帯。
しかも、まだ冒険者の頃に、一人では到底敵わなかった魔物たちが周囲を徘徊しているような場所。
当然、狼狽えるのだが……。
「起きましたわね。さ、ご飯にしましょう」
一切動じない『夢幻泡影』。
その空気に流されるように、オズワルドも冷静さを取り戻し。
「け、結界は張ってあるんだろうな?」
「当然だ」
「張ってなくても問題ありませんわよ。あの程度の魔物、秒で片付きますもの」
「ほら、新たなレシピだ。ラヴァテンタクルを使った蒸し料理になる」
「ラヴァテンタクルねぇ……。食えるって記録は無かったはずだが?」
そう言って渡された餃子ドッグを怪訝そうな顔で眺めながら。
先に自分らで食べてみろ、とそれぞれ『夢幻泡影』へジェスチャー。
当然、その美味しさを知っている四人は、何の躊躇いもなく餃子ドッグを口に運び。
「もっちりとした生地がまず美味いわい」
「焼かずに蒸したからこその柔らかさとしっとり感だな」
「生地にも多少味を付けていたのは正解だな。生地自体が美味い」
「中の具もプリプリでとても美味しいですわ!!」
と、絶賛の嵐。
それを聞き、オズワルドも恐る恐るゆっくりと餃子ドッグを口に運び……。
「むぉ!?」
思い切って一口。
すると、四人の感想通り、もっちりしっとりした生地の中に、プリップリのラヴァテンタクルにぶつかって。
それらを口の中で噛み締めれば、ラヴァテンタクルからジュワッと溢れる肉汁が生地に沁み込み。
口の中で極上の組み合わせとして完成。
「か、かなり美味いな!!」
「じゃろ?」
そして、ようやく『夢幻泡影』を信用したオズワルドが、一気に食事のペースを上げたところで。
「時に、頼みごとがあるのだが」
絶対に断れないであろうタイミングを見計らって、マジャリスがオズワルドへと声をかけるのだった。
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