第144話 影響力

 ……エルフ達にたこ焼きを振舞う場合、最低でも三桁個数は作れる分量で材料を用意しましょう。

 焦ったー!!

 もう一袋あって良かったマジで!!

 結局あれから四人ともちょい足しトッピングを全部試すとか言い出すんだもん。

 しかも実際試して全部食いきるし。

 人間なら大食い大会とかに出ても余裕で優勝掻っ攫えるレベルだと思うんですけど。


「ふぅ……満足じゃわい」

「そりゃあこんだけ食えば満足でしょうよ」

「自分で食べる分を調理して食べるのがこんなに楽しいとは思いませんでしたわ」

「材料の用意や下処理は全てカケル任せだがな」

「工程が簡単なのもいいし、簡単なのに個人で差をつけられるのもいい」


 と、全員満足気にお茶飲みながら言ってますわ。

 もうね、最後の方とかね、ガブロさんとリリウムさんは油少な目でしっとり柔らかタイプのたこ焼き。

 マジャリスさんとラベンドラさんが揚げ焼き風味のカリカリタイプのたこ焼きっつって、自分流の焼き方を極めてたからな。

 トッピングもやれ鰹節多めとか、青のり無しとか言い始めるし。

 今日一日でたこ焼きにドはまりしたみたいですわよ?


「もしなんでしたら、たこ焼きの材料を渡しますけど……」


 俺的に今日のおみやもたこ焼きだったわけで、焼いて渡すより向こうで焼いた方が美味いよねって事での提案だったんだけどさ。


「今日は大丈夫だ。向こうの世界で集まる材料でたこ焼きを作ろうと思う」


 って返されちゃった。

 まぁ、小麦粉はあるだろうし、野菜はマンドラゴラだし。

 紅しょうがとか無さそうだけど、最悪無くてもまぁいいか、って感じだろうし。

 ……ただそうなると、冷蔵庫にまだ残ってるニンテイタコカイナの消費ペースが落ちるな……。

 今日でだいぶ捌けたとはいえ、まだまだあるわけだし……。

 ん? 待てよ?


「ラベンドラさん」

「どうした?」

「ラベンドラさん達もこのタコの足は持ってるんですよね?」

「ああ、あるが……それが?」

「いえ、俺の持ってる足は今冷凍されてまして、解凍する必要はあれど下処理の工程が一つ終わってるんですよ」

「……なるほど、言いたいことは分かった」

「あと、塩も付けます」


 瞬間差し出される手。

 俺はその手を握り、握手して。

 ――交渉成立っと。

 というわけで、冷凍済みのニンテイタコカイナの足と袋に入ったままの塩を手渡し。

 魔法陣に消えていく背中を見送るのだった。



「うーん……盛況ね!」


 レシュラック領、港町ビードン。

 沖合に出現したコロッサルも無事に討伐され、町の平和は保たれて。

 そこへ、季節のお祭りが重なり、町には様々な出店が顔を出す。

 一年の豊漁と天候の安定、そして、町の平和を祈願するそのお祭りは、ここ数日の漁の成果を全て吐き出す、といったものであり。

 神も人も、あらゆる種族でも訪れた人に料理を振舞う、という形態だったもの。

 それが、まぁ当然タダで振舞っては生活出来ぬ、と、屋台という形に変化して。

 このお祭りの間は、ビードンで水揚げされた魔物たちを使った料理を出すのであれば、誰でも店を出すことが可能。

 そんなお祭りを、治安維持の名目で見回りに来ていたアキナは、


「リトルクラーケンのゲソがおいひい」


 両手に屋台で売られていた串焼きやら、魚のフライを挟んだサンドやら。

 とにかく目につく美味しそうなものを片っ端から買い食いしていた。


「にひても、あいつらのおかげで料理に変化が出たことは事実なんらよれ」


 フライサンドを頬張りながら、ラベンドラ達が『OP』枠を脱却しようと活動していた頃。

 調理ギルドに持ち込まれたラベンドラのレシピの数々は即座に公開され、町の料理店や宿屋、果てには王都の料理人すらも参考にし。

 そして、油で揚げる、という調理法の登場は、脂身が多く敬遠されていた魔物たちの需要を高めた。

 そうして始まった、創意工夫の調理士のプライドバトルは、食べ物の多様性という物に大きく貢献し。

 気が付けば、こんな港町にすらフライ、として定着していたりする。

 最も、ここら港町で使われている油は魚系の魔物から取った魚油、とでも言うべき代物で、独特の生臭さはどうしてもあってはしまうが。


「にしても、あんだけのレシピ公開しといて、まーだ何か隠してるっぽいんだよねぇ……」


 なんて言いながら、それまで買い食いしたものを食べ終えたアキナは。


「うん? 何この匂い」


 嗅いだことのない匂いに釣られ、その匂いのする方へ。

 そこには……、


「たこ焼き三人前出来たぞ!!」

「こちら五人前お待ちの方~!!」

「押すんじゃないわい!! 材料だけはたんまりあるんじゃ!!」

「今回は卵を多めに使った。小麦粉にルフ鳥の卵を混ぜて生地にし、材料をへこませた鉄板の上で焼いて完成だ」


 『夢幻泡影』の面々が、出店で猛烈に何かを作っている光景が。

 しかもその出店には長蛇の列が出来ており。

 唯一調理に参加していないラベンドラは、アキナも顔を知っている調理士ギルドの幹部に売っている物の説明中。

 

「あんたら、何を売ってるの?」


 ギルドマスター権限(乱用)により、列を無視し調理しているガブロの手元を覗き込むと……。

 そこでは、現代で言う明石焼きに非常によく似た食べ物が作られていて。


「……うん、とりあえず一人前頂戴?」


 列の先頭にいた、冒険者ギルドの職員……恐らく休憩中であろうその者へ、にっこりと笑顔を浮かべてウインクし。

 ギルドマスター権限により、その者が注文した三人前の内、一人前を掻っ攫ったのだった。

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