第472話 甘くとろけるような

「じゃあ、配っていきますね」


 買って来たチョコを袋から取り出せば、全員の目が輝き始める。

 ふっふっふ、堪能していってくれ給え。


「まずはガブロさん」

「ほい」

「日本酒チョコになります」

「おぉ……」


 ガブロさんには酒だろって事で、日本酒が練り込まれてるんだか中に入れられてるんだかのチョコの詰め合わせ。

 日本酒の銘柄が書いてある包みで、形も一升瓶を模したものになってるやつ。

 銘柄とかで味とか香りとか違うんだろうな。

 チョコレートボンボンの日本酒版みたいなもん。


「続いてマジャリスさん」

「はい!」


 大変元気でよろしい。


「マジャリスさんには紅茶のチョコセットをどうぞ」

「最高か?」


 エルフ組には正直どれを渡してもいいと思うんだけど、マジャリスさんには紅茶チョコかな。

 茶葉を練り込んだ物から、紅茶のガナッシュを中に詰めたトリュフチョコまで。

 コーヒーが飲めないおこちゃま舌のマジャリスさんに、このチョコの味わいが分かるかな?


「リリウムさん」

「待ってましたわ!」

「リリウムさんにはお芋のチョコです」


 芋系デザートの時の食いつきが良かったイメージだから、リリウムさんには芋チョコを。

 鳴門金時やら紅はるかと言った銘柄のサツマイモを、チョコと練りこんだり、逆にチョコを芋のペーストに練りこんだり。

 薄型からスティック状のチョコまで、幅広く完備された品物ですわよ。


「美味しそうですわ!」

「最後にラベンドラさん」

「うむ」

「ラベンドラさんには抹茶のチョコです」


 もはや定番、けど、だからこそ拘りが強く出る抹茶フレーバー。

 今回は甘さよりも深みを意識して買って来てみました。

 日本の三大茶を筆頭に、なんか有名っぽいシェフが厳選した茶葉を使用したとかなんとか。

 ……正直さ、こういう誰々監修! みたいなのってマジで知らん人なの俺だけ?

 〇〇ホテルの~とか言われても、あー、そんな人居るんだ~くらいしかならんくない?

 そりゃあ、大きなホテルとかのシェフってのは凄い! とは思うんだけどさ。

 監修しただけで手作りではないしなぁ……と思っちゃうのはひねくれ過ぎ?

 まぁ、もれなくそういうのって美味しいからいいんだけどさ。


「ちなみにカケルのは?」

「……俺のですか?」

「この世界の住人であるカケルのチョイスしたチョコ……気になるのぅ」

「俺のはフルーツフレーバーのチョコ達ですよ」


 俺が自分用に買ったのは、イチゴを筆頭にバナナやオレンジ、果てにはマスカットやカシスまで。

 普段だったらあまり見ないフレーバー達に、思わず手が伸びたんだよね。

 

「そっちも美味そうだな……」

「交換なら承りますよ?」


 自分のを食べる前から俺のを眺めるマジャリスさんにそう言いつつ、


「「いただきます」」


 全員で二度目のいただきます。

 まずは定番のイチゴからかな。


「!? くぉ~……。香りが……香りがたまらん……」


 先鋒ガブロ、鼻の付け根の所を押さえてなんか言ってる。

 結構酒を感じたんかな?


「ガブロ、感想を詳しく」

「おう! 口当たりは滑らかなチョコじゃが、中からさらに滑らかトロリな日本酒の香り強いチョコが流れてくるんじゃ。その日本酒も香りは損なわれておらず、優しい飲み口の美味い酒でな! 含有量としてはほんの数滴じゃろうが、確かに飲んだと思わせる存在感と満足感があるわい!」


 ……美味そうだな。

 日本酒チョコとか正直食べようとすら思わなかったのに、ガブロさんの食レポでちょっと興味が湧いてしまった。


「美味そうだな」


 あ、マジャリスさんも俺と一緒の感想持ってる。


「間違いなく美味い。このクオリティの日本酒チョコが異世界で売られたら、ドワーフの列が途切れることなく店に並ぶじゃろうな」

「百点満点で何点だ?」

「三極点じゃな」


 なんて?

 三極? スマホスマホ……。

 十の四十八乗か。

 ――いや、満点は百って言われただろ!

 せめて桁数は守れ桁数は。


「……リリウム?」

「――へぁ?」


 ん? こっちはこっちでなんか変な事になってない?

 リリウムさんとは思え……無い事もない間の抜けた声が聞こえてきたが?


「その……目がトロンとしているが大丈夫か?」

「……だいじょうぶですわ」


 うわぁ、大丈夫じゃなさそう。

 え? なんかヤバい成分が入ってるとか無いよね?

 普通に買って来たチョコだもんね?

 なんか、猫にマタタビみたいな感じでエルフに良くない成分入ってた!?


「このお芋チョコ、とても凄く美味し過ぎますわぁ……」


 ……美味いだけ?

 本当に?


「詳しくいいか?」

「口に入れるとまずお芋の香りが口いっぱいに広がりますの。舌の上でチョコを溶かすと、お芋の香りと甘さの奥からチョコレートの芳醇な香りと苦み、深みが顔を出しまして、それがお芋の甘さと絶妙な調和を致しますの。チョコ自体も滑らかで舌触りもよく、力を抜いてずっと堪能したいようなチョコでしたわ」


 美味しいだけっぽいな。

 と言うか、芋チョコも絶対に美味い奴だな。

 食べたいな……食べたいな。


「よし」

「行くのかマジャリス?」

「カケル、紅茶を頼む」

「……あ、はい」


 次は誰が行くかと見渡すと、気合を入れたマジャリスさん。

 俺もラベンドラさんも、てっきり食べるのかと思いきや。

 まさかの紅茶の要求。

 と言うか、今から食べようとするチョコレートも紅茶フレーバーだけど大丈夫そ?

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