第120話 一人で堪能

 その時ふと閃いた。

 このアイデアはリリウムさん達の食事に活かせるかもしれない。

 とまぁ、悪魔的発想で今晩のご飯を思い付いたのはお昼時。

 仕事休みだし昼御飯はどうしようかなーとか考えて、美味しそうだからというただ一点のみで傘キノコと柄キノコのアヒージョを作ろうと思い立ち。

 鍋にオリーブオイルと国産ニンニクの薄切りを入れて加熱していた時の事。

 ちなみに使ってるのはピュアオリーブオイル。

 わざわざ昼食の為に買ってきた。

 エクストラバージンオリーブオイルは仕上げに香り付け程度に使いますわ。

 ……でまぁ晩御飯のレシピなんだけどさ。

 この牡蠣とホタテなキノコを、うなぎのタレで炒めたら美味いんじゃね? と。

 いや、違うな確実に美味い、だわ。

 あのね? うなぎのタレって裏切らないの。

 常に美味しくて、ご飯を掻き込みたくなる味じゃないといけないの。

 ちなみに調べてみたら、某ドラマでカキカバ丼って名前で登場してた。

 じゃあもう確定演出じゃんってことで、晩御飯が決定ですわ。


「この先生キノコるには」


 一人だからこそ出来る、意味のない独り言を呟きながら、食材のカット。

 牡蠣味の傘の部分と、ホタテ味の柄の部分は言わずもがな。

 それとは別に、ベーコン、マッシュルーム、じゃがいもと、食べやすい大きさに切っていく。

 じゃがいもは当然皮を剥いてね。

 あと、食材を切るついでに鷹の爪も細かく刻み。

 オリーブオイルに入れたら塩パッパ。

 あとはこれに食材を入れて煮込むだけわぞ~。


「もう見た目が暴力なんだが?」


 煮込んでたらその見た目にノックアウト寸前なんだけども。

 昼にアヒージョを食べようと思った俺の発想力に脱帽だね。

 毎日山盛り二杯のシリアルを食べてたおかげだぜ。

 ……食べて無いけど。

 ちなみに口臭ケアのグッズももちろん購入済み。

 流石にニンニク臭い息であの四人を迎える気はない。

 そろそろ完成っぽいので、僕はここで追いオリーブ。

 ついでにブラックペッパーを、パッパ。

 完成!! 牡蠣とホタテのアヒージョ!!

 ……どっちも入ってないどころか魚介ですらないが。

 味が同じなら一緒でしょ。


「いただきます」


 しっかりと手を合わせて宣言し、いざ!!


「うんめっ!!」


 最初に口に運んだのは牡蠣――つまりは傘キノコの方。

 で、これヤバいわ。

 オリーブオイルで煮込まれた牡蠣。

 もうプリップリ。

 オリーブの香りとブラックペッパーの香りが鼻腔を刺激し、そのすぐ後から牡蠣のうま味の濁流よ。

 塩加減も完璧で、塩辛くなりすぎない程度に効いてる感じ。

 一人で机に突っ伏して美味しさを噛み締めてたもん。

 復帰までに三分くらいかかった。

 これまずいな。三分しか活動出来ないヒーローに食べさせてあげられないじゃん。

 美味しさに悶絶してる間に活動限界来ちゃうよ。


「お次はホタテ~」


 もうここから上機嫌も上機嫌。

 まぁ、作ってる時から機嫌はいいんだけどさ。


「こっちはほっこほこですわねー」


 牡蠣の時と違い、プリプリ感はあまりない。

 けど、それを補うほこほこ感よ。 

 噛んだ瞬間は一瞬歯を受け止めるんだけど、その後すぐにパラリとほぐれて繊維に変化。 

 その繊維を逃すもんかと噛み締めれば、オリーブとホタテのうま味がじゅわ~。

 こっちも塩加減完璧。 

 自分の才能が怖いぜ。


「次どれ行こう……」


 まぁ、メインとも言える二つは一旦通過したし。

 ここからは俺の良く知る食材だし。

 なんて思って手を伸ばしたじゃがいも。

 こいつが予想外過ぎた。


「えっ!? うっま! なにこれ!!」


 なんて言うんだろう。

 溶ける。崩れるとかじゃなく、マジで口の中で液体になってく感じ。

 しかもオリーブオイルに溶けだした傘キノコと柄キノコの美味しいダシをこれでもかと吸ってる。

 そこに入ってくるニンニクの香りと塩の塩味よ。

 これすげぇな。じゃがいもの中で美味しさがおしくらまんじゅうしてやがるぜ。

 あ、あとベーコンのうま味も入ってるな。マジで全部吸うじゃん。


「次からは絶対にじゃがいもを入れよう」


 と、心のレシピにしっかりとメモったところで。

 お待ちどうさま!! 真打登場! その名もバゲット!!

 やっぱりね、アヒージョには欠かせない存在だと思うわけですよ。

 このバゲットをな。薄く切ってな。

 アヒージョの中にダイブ!!

 そして、うま味がたっぷりと溶け出たオリーブを程よく吸ったところで引き上げ――食べる!!

 あ~~、背徳の味~~!!

 この油を身体に入れていく感覚がたまらないんじゃ~。


「引くほど美味かったわ、ご馳走さまでした」


 結局あの後もバゲットを追加しつつ、具材が無くなるまで堪能。

 残ったオリーブは明日の昼にでもパスタをするからその時に使います。

 あれだけうま味の溶け出たオリーブを使って作るパスタ。

 もうこの時点で美味いんだよな。

 ……シンプルにペペロンチーノにするか。

 というわけで明日の昼ごはんも決まったところで。

 四人が来るまで休みの日を謳歌タイム!!

 ――といきたいところだが、その前に。

 しっかり歯を磨き、口臭ケアグッズを用いてお口のリフレッシュ。

 リリウムさん達がガーリック臭をどう思うかは知らんが、ケアをするに越したことはないでしょ。

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