第312話 僕は関係ない、いいね?
「相変わらず彩りが良いのぅ」
「黄色に緑に赤、本当に見た目だけでも美味しいですわね」
「まず目で味わう。料理の基本だ」
「カケル、この料理には薬味などは付かないのか?」
冷やし中華を前に、まずは見た目の感想をくれる四人。
確かに、冷やし中華の見た目っていいよね。
しかもなんて言うんだろ……鮮やかじゃない?
トマトやキュウリの色って。
はっきりした色というか、そのおかげで清涼感がある感じまでする。
そしてよくぞ聞いてくれましたマジャリスさん。
冷やし中華に薬味? ――もちろんあるぞ!
ただ……俺はあんまり必要ない派なんよな。
だから今回も用意してない、すまんな。
「カラシとか、つける人も居ますね」
「カラシか……」
「後は地域によってはマヨネーズとか、タルタルソースを乗っけてる冷やし中華もあるとか無いとか」
「タルタルソースだとっ!?」
まぁ、タルタルの方は俺も動画で見ただけだし。
というか、冷やし中華にタルタルって味の濃さ凄い事にならん?
タルタルだけで食べるんじゃなくて、普通にタレもかかってたはずだし。
塩分過多が凄そう。
「そんな期待を込めた目でこちらを見るな」
「だって!! タルタルだぞ!?」
「まずはこれを食ってからじゃろ。それに、あると言ってもカケルが用意してない以上、無くても成り立つ料理という事じゃろ」
マジャリスさん、甘味に過剰反応な印象あったけど、タルタルにも過剰反応なのか。
このエルフ人間だったら長生きしないなきっと。
食生活が大変な事になってるもん。
「そうだな……まずは食べてみるか」
うぉい!? いきなり落ち着くな!!
びっくりしちゃうでしょ。情緒どうなってんだお前。
「では、いただきますわね?」
というリリウムさんの言葉を合図に、全員で手を合わせいただきます。
そして、四人は麺を箸で掴むと、そのまま麺だけをすすってもごもご。
「サッパリとした、酸味の強いタレだな」
「鼻にスッと抜ける柑橘系の香りがありますわね」
「よく冷えているためか、口に入れた瞬間は一瞬咽そうにはなるものの、そこからは一気に流れていくようだ」
「冷たい麺というのもいいもんじゃわい。強めの歯ごたえが心地いいぞい」
そういや、冷たい麺類は初なんだっけか。
その内素麺とかも食べさせたいな。……姉貴にお高いのを発注しとくか。
「野菜と食べるとさらにサッパリ感が増す」
「卵も美味しいですわよ?」
「『――』の身とタレの相性が最高じゃな!」
「『――』の幼体の甘さとタレの酸味のハーモニーが極上だぞ!!」
で、麺の試食を終えた四人はそれぞれ思い思いの具材と共に麺を啜った
その感想がこちらになりますっと。
……俺もコシャコナリケリと一緒に麺食べたい。
というわけで一気にズズーっと。
――、
「おっほ! うっま!!」
あんだけガブロさんにおほーとか言うなって感想持ってたのにさ。
言ったよね、当たり前に。
いや、だってさぁ!! コシャコナリケリのプリッとした食感が麺のモチモチとした食感に隠れてて。
そのコシャコナリケリを見つけて噛んだ瞬間に、トロリとした感触とねっとりとしたうま味、強い甘さが広がって。
その甘さも、タレの酸味と塩味、レモンの香りに包まれてさぁ!!
マジで終始笑顔。
咀嚼してる間は顔面の筋肉緩みまくり。
これマジでうんめ。
「キュウリやトマトのような、水分を多く含む野菜と相性がいいな」
「キュウリやもやしの食感もいいアクセントですわね」
「カリッやシャキッっとした野菜と、シャコッとした『――』の対比も美味い要素じゃな」
「食欲が落ちていてもこれなら全部食べてしまうだろうな!!」
うんうん、四人にも大好評みたいですわ。
今まで、ロースハムとかから始まって、サラダチキンでも具材として試してみたけどさ。
申し訳ないけど、このシャコナリケリとコシャコナリケリには太刀打ちできないね。
そりゃあ、好みもありますけど?
なんと言うか、肉より海鮮の方があってると思っちゃう。
もちろんカニカマなんかとも比べ物にはならないけど。
「マジャリスの言葉ではないが、食欲が無くとも麺類ならスルスルと入っていきそうだ」
「こうして冷やしてある麺なら尚更ですわね」
「冷製の麺類のレシピを書いて王にでも送り付けてみんか? 高い気温の時の食欲減退から来る士気の低下や集中力の低下は軍には悩みの種だったんじゃろ?」
「軍に限らん。高い気温というのはそれだけで集中力を削ぐ。その点、このパーティはリリウムの温度調整魔法が効いているからそうでもないが、それが出来ないパーティは寒冷地や火山地帯のダンジョンには踏み込みすらしない程だ」
「なら、この麺料理……冷やし中華というのでしたかしら? このレシピは需要がとてもあるのではなくて?」
あー……コシャコナリケリだけじゃなく、塩茹でのシャコナリケリも美味いなぁ。
……シャコナリケリにだけマヨネーズとか欲しいかもしれん。
いや、タレだけで十分か。
「一度調理師ギルドを経由して……」
「それだと独占されかねん。やはりいつも通りギルド発行の冒険者新聞にて……」
「いつも取材に来とるやつから「もうそろそろ勘弁してほしいっす」って言われたじゃろうが。便利すぎるゆえに新聞に頼ってばかりだったと反省したばかりじゃぞ」
「やはり国王経由が丸そうですわね。ソクサルムを呼びましょう」
なおも話が盛り上がる四人の会話をBGMに、普段よりもずっと贅沢な冷やし中華を完食するのだった。
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