第618話 精神を刻む者、リリウム
というか、あるんだ、不死鳥の卵。
「これが姉貴から送られてきた高級フルーツですよ?」
「どう見ても我らの知る不死鳥の卵だぞ!?」
「我ら、に私達を入れるのやめて欲しい。私は不死鳥の卵を見た事無い」
「同じくねぇな」
「あるわけないわい」
「むしろどこで見たんだよラベンドラ」
……おろ?
異世界組ですら本当にこれが不死鳥の卵か? と疑問に思ってるみたいデスヨ?
あと、マンゴーだからね、確実に。
「いや……スマン。取り乱した」
「……聞いた方がいいです?」
「忘れてくれると嬉しいが……」
とりあえず、マンゴーを切りますね?
あと、後ろからラベンドラさん以外の異世界組が話を聞きたそうににじり寄って来ているので……。
俺は忘れたとしても、そっちは忘れてくれそうにないかと……。
「うぉっ! すっげ」
「おら! 吐け!! 不死鳥の卵なんて激レアなブツ、どこで見た!!」
「私の魔法干渉より魔法防御を高められますの? 吐かないなら直接脳内を読み取ってもいいのですわよ?」
「仲間にも容赦ない、リリウム」
「俺ら何もしなくても情報得られそうだよな」
マンゴー、手に持っただけでも香りが漂うんだけどさ。
ちょっと皮に包丁当てただけで、室内に爆発的に広がるマンゴーの香り。
あ、ちゃんとマンゴーの切り方は動画で確認したよ?
マンゴーの真ん中部分に親指を当てて、その親指の縁に沿ってマンゴーを三枚にスライス。
で、よく写真とかで見るさいの目状に切って裏返す奴は、割と食べにくいとの事なので……。
三枚にスライスしたマンゴーを、更に三等分。
皮を剥いて、一口サイズにカットしてお皿に。
「果汁すげぇな」
「匂いだけで甘い」
で、そんな様子を『無頼』アメノサ組が観察に。
どうやらラベンドラ尋問会には参加していないらしい。
「凄いですよ。切るだけで滴って来ますからね」
三枚にスライスした中央、つまりは種の入った部分は、桃をカットする時と同じく、種の周りを落としていって……。
「種の周り……齧ります?」
「齧る!!」
最後は、包丁じゃ難しいから直接、ね。
――殺気!!
「許される訳がない」
「抜け駆けは許しませんわよ~」
「ピィッ!?」
俺から種を受け取ろうとしたアメノサさんが、音もなく背後に現れた甘党エルフ二人からの圧で種を取り落とす。
……なお、床に落ちる前に魔法で宙に浮かぶもよう。
「尋問は終わったか?」
「終わりましたわよ」
「ラベンドラの故郷の長老からの伝聞だったそうだ」
「へぇ、でも有益な情報じゃねぇか」
「不死鳥の存在が確定。今までも空想上の生き物なのでは? と度々疑問視されていた」
……俺から言わせりゃ、不死鳥以前にここに持って来られる食材たちが全部空想の生き物なんだけども。
まぁ、いいけどさ。
「……手伝うぞ」
「大丈夫でした?」
ナチュラルにマンゴーをカットするのを手伝おうとするラベンドラさんだけど、大丈夫?
リリウムさんに精神魔法喰らわされそうになってなかった?
精神を刻む者、リリウム。
「なんとかな」
「精神干渉、防がれたの初めてかもしれませんわ」
「精神防御に全魔力を注ぎ込んだのはこれが初めてだ……」
……仲良く喧嘩しな。
「じゃあ、切り方はこれで」
「む、分かった」
……明らかに疲れた声してるな。
マンゴー食べて回復してもろて。
「切ってるだけで手がべたべたになりますね」
「果汁が凄いからな」
動画を見せて二人で切ってたんだけど、マンゴーってここまで果汁滴るの? って思うほどに凄い。
そもそも皮を剥いただけで果汁が垂れてくるからな。
どれだけジューシィなんだって話。
「……流石に舐めたら俺はパーティから抜けるぞ?」
「ししししませんわよ?」
「俺も舐められたら明日から食パン一枚しか提供しません」
「しないしない」
……で、なんだけど。
切ってる都合上、俺の手にマンゴーの果汁が滴ってくるわけで。
それを……こう……恐らく舐めようと狙ってた甘党エルフ共が居まして。
嫌だよ、他人に指舐められるの。
しかも絶対に味わってくるじゃん。
背筋ぞわってなるわ。
「もう出来る。座って待っていろ」
「マジで凄いな……」
切ってお皿に盛り終わったら、人数分の爪楊枝を刺しまして。
完成! 高級マンゴーの盛り合わせ!!
楽しみだなぁ!!
*
「う~ん……あんまり合わないかぁ」
「何しとる?」
蒸留ギルド、試飲スペース。
現状その場所は、作られた蒸留酒を補完するためのスペースになっており。
それらの保管されたお酒たちは、もうすぐ開催されるカクテル大会において使用される予定。
そんな場所で頭を悩ませるギルド職員は、その姿をドワーフの一人に見つかってしまう。
「僕も大会に参加しようと思いまして」
「ほぉ」
「それで、色々と組み合わせを試してみてるんですけど……」
ちなみに参加表明をすると、現在量産が可能になっている蒸留酒が各種少量ずつ支給され。
その少量をカクテルの練習に使うのだが。
如何せん酒同士の組み合わせなどは誰もが初の試みであり、そう上手くはいかない。
「飲ませてくれんか?」
「ドワーフに提供すると僕がどやされるんですよねぇ」
なお、どれだけ参加表明をしようが、ドワーフ族には一滴も練習用の酒は提供されることはない。
どころか、かの種族ほど酒に通じる種族は無いと、ドワーフ族全体が一般審査員として告知されており。
それらに大会期間前に酒類を提供することは禁止事項となってしまった。
なお、そんなドワーフ達は大会を非常に楽しみにしており、セルフで禁酒をして大会に臨む徹底ぶり。
…………禁酒日数脅威の二十時間を、禁酒と呼べるかは置いといての話だが。
「まぁ、納得いくものを出す予定ですから、大会では飲みに来てくださいよ」
「そうするか。……お主、名前は?」
「僕、バッカスって言います。よろしくお願いしますね」
──────────────────
最後に出てきた蒸留ギルドの職員はコメントいただいた名前を採用しました。
ドワーフから「酒が湧く人間」と呼ばれることになる彼です。
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