第468話 心ときめく……

 冷凍庫から取り出したるは、買って来たデザート。

 その名も、カタラーナでござい。

 フローズンカタラーナって説明されて、食べるまでは冷凍庫で……との事だったのでこうして冷凍庫に入れていた次第。

 いやぁ……まさか回転寿司屋で食べたカタラーナに衝撃を受けるとは思わなんだ。

 買って来たのはそこのじゃないけど。


「プリンか?」

「似ているけど違いますね」


 しかも一人二カップ分買って来てます。

 いやぁ……注文の時に大きいサイズでって言ったはいいものの、それで一桁個数頼むのもどうかと思いましてね?

 十個ほど頼んだんですよ。

 ……つまりは俺用にも二つあるという事。


「表面は固い」

「キャラメリゼされてますね」


 渡したスプーンでカタラーナの表面を叩くラベンドラさん。

 キャラメリゼ……雑に言うとカラメルですね、はい。

 表面に砂糖とかをかけて、バーナーで炙って焦がす。

 甘さとほろ苦さが追加されて味がグッと深まるって寸法よ。

 まぁ、やってくれたのはお店なんですけどね。


「とりあえず食べてみてください。話はそれからです」

「う、うむ」


 と言う訳で俺に促されてカタラーナをパクリ。

 んふふ~。まずは表面のキャラメリゼをスプーンで突いて崩し、カスタード部分と合わせてスプーンで掬いまして。

 こいつを口に運ぶ! ん~、冷たくて美味しい~。


「美味い。美味い!!」

「しっとりと濃厚なカスタードが最高ですわ!!」

「鼻に抜ける甘い匂いもいい。変にべた付かず、スッと溶けるように消えていく」

「ザクザクとした苦い部分もたまらんわい。こりゃいくらでも食える」


 評判もよしこちゃんっと。


「冷やしてあるおかげかしっかりと噛めるのもいいな」

「それでいて、噛むとクリームのように滑らかになりますの!」

「紅茶! 紅茶だ!」

「わしも紅茶を頼むぞい!」


 ほいほいっと。

 ただね? このカタラーナってスイーツ、カスタード部分に柑橘系の風味を付けたりすることもあるらしいのね?

 と言う事は、柑橘系と相性抜群って事よね?

 となればー?

 紅茶に柑橘系フレーバーでも相性はいいという事!

 とどのつまり! 今日はフレーバーティーご提供です!


「……香りが」

「とても落ち着く香りですわ」


 淹れた瞬間に一気に開花する柔らかい香り。

 こいつをじっくり蒸らして抽出すれば……。


「アールグレイになります」


 ……懺悔します。

 アールグレイって品種の名前だと思ってました。

 だって、ミルクティーとかにアールグレイ使用とかってよく見るし、そういう品種なのかと……。

 調べてみたら、ベルガモットって柑橘類の精油とかで香りを付けた紅茶の事らしい。

 セイロン茶とか中国茶とかに香りを付けてるんだって。

 で、その香りがミルクと相性がいいからミルクティーに用いられるとかなんとか。

 

「色も美しい……」

「スッキリとした味わいじゃな」

「香りが本当に上質ですわ。うっとりするほどに……」

「このデザートとも合うぞ!」


 こちらも好評。

 正直、アールグレイってあまり飲んだ事無かったんだけど、美味しいわ。

 ……店員さんに教えて貰って、言われるがままに茶葉を買ったけど大正解。

 そうそう、アールグレイは明確にホット用とアイス用で茶葉が分けてあったよ。

 なんでも、アイス用は香りが強めなんだって。

 温度が低いと香りが弱くなるらしいんだけど、アイス用をホットで飲むと、香りが強すぎる場合があるからって教えて貰った。

 アイスティーでも定番ですって言ってたから、夏頃に思い出したら買いに行こう。


「紅茶の香り、キャラメリゼの苦み、カスタードの甘さとコク。全てのバランスが完璧だ」

「冷えた体に温かい紅茶も嬉しい限りですわ」

「カスタードの中に入っとる粒々は何じゃい?」

「バニラビーンズですね。甘い香りの正体です」

「なるほど! これが香りの元か!!」


 バニラの香り、最高だよね。

 あと、バニラビーンズが入ってるだけでグッと高級感出ない?

 ただのカスタードクリームより、バニラビーンズ見えた方がテンション上がるって言うか。


「おかわり!」

「もう一個だけですよ?」

「あるのかっ!?」

「一人二個で買って来てますから」

「カケル! 愛していますわ!!」

「どうも」


 なんだろうなぁ……リリウムさんから愛してるって言われても、食事を提供してくれるって枕詞が見えちゃうんだよなぁ。

 いや、言われて嬉しいって言うか照れるんだけど、愛してるって言ってる時も俺じゃなくて俺の取り出したカタラーナに視線が注がれているというか。

 文字通り眼中にないんだよね、俺の事。

 まぁ、変な期待とか勘違いをしなくていいから助かる。


「わしも愛しとるぞい!!」


 あ、ノーセンキューです。

 いらん。愛を安売りするな。

 あとガブロさんの場合は俺でもカタラーナでも無く、解呪用に買った清酒に視線が注がれてるからな。

 こっちもアウトオブ眼中ってわけ。


「カタラーナ♪ カタラーナ♪」

「踊るな、座って食べろ」


 男エルフ達を見習えよ。

 座りつつもウッキウキで上半身揺らして食べてるマジャリスさんと、一口食べては何かを考えこむラベンドラさんを……。

 やっぱりあまり見習わなくていいかも。

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