第191話 容疑者多数
ふぅ。
ご馳走さまでした……。
とても美味しゅうございました。
「ところでカケル? 今日のデザートなのだが……」
「あー……。今日は皆さんから貰ったあの果汁? は少ししか使ってなくてですね……」
でまぁ、食事の後は当然といった感じで、デザートについて言及してくるマジャリスさん。
もう目線がさ、チラチラとバカデカアーモンドッポイミルクを見てるもんだから、あらかじめ釘を刺しちゃった。
「そ、そうか……」
「カケルの事だ。何か理由や考えがあるのだろう」
「そうですわ。カケル様を信じるべきですわよ?」
「ワシも少し気になっとんたんじゃがのぅ」
どうやらガブロさんも、あのバカデカアーモンドッポイミルクからどんなデザートが出来上がるのか気になったらしい。
……そんなに使いたいなら今日買って来たフルーチェがだな。
いや、でもデザート作っちゃってるしな。明日以降でいいか。
「じゃあ持ってきますね」
と言って冷蔵庫から取り出したるは、しっかりと固まったチョコムース。
すげぇな、チョコと豆腐で出来てるとは誰が見ても思えないくらいのムースっぷりだ。
「これは……」
「まさか……っ!?」
「チョコですの!!?」
「チョコを溶かしてなんやかんやして冷やし固めたチョコムースというデザートです」
なお四人への解説は適当である。
チョコも無けりゃあ豆腐も無い、そんな世界の人達にどう説明しろって話。
……つまりこのデザートは、俺が四人に驚く顔をさせたいがために作ったデザートであるという事。
――何か問題でも?
「かなり滑らかだ」
「それでいて、しっかりとしたチョコの重さが感じられますわね」
ラベンドラさんやリリウムさんは、始めにムースをスプーンで掬って観察開始。
こう、顔が整った男女が真剣にスプーンの上のムースを見つめてるのはなんというか笑っちゃうな。
「ふゅはっ!」
「ちべたーい!」
で、そんな二人を余所に、真っ先に食べたのはマジャリスさんとガブロさんなんだけど……。
今、ちべたーい、とか言うふざけた反応しくさった大の大人はどっちだ!?
その反応が許されるのは小学校低学年までだって習わなかったのか!? おおぉぉぉんんん!!?
「冷えたムースとやらを舌の上に乗せると、じんわりと溶けだして口の中をチョコでコーティングしていく」
「舌で動かすだけで、溶けて解けて滑らかに無くなっていきますわ」
「舌に残る濃厚な風味と味がいい。昨日貰ったチョコよりもどっしりとした香りとコクなのも最高だ」
「甘さが物足りん気もするが、それを差し置いてなお満足出来るデザートじゃわい」
容疑者不明により迷宮入り、と。
ったく、二度とするなよ?
「どういった物を使って固めているんだ?」
「え、あーえっと……」
なんて考えてたら、ムースの作り方をラベンドラさんに詰められました。
……まぁ、言っちゃうか。
「本来はそんな作り方をしないんですけど、今日はチョコと絹ごし豆腐を丁寧に混ぜて作りました」
「?? その二つが合わさるとこうなるのか?」
あ、多分これ翻訳魔法で何かしらに置換されてる。
しかもそれがラベンドラさん的にあり得ない組み合わせになっちゃってるやつ。
でもこれ悲しいかな、どんな置換がされて、それをどうすれば解決出来るかが分からないんだよな。
俺が豆腐と言った食べ物は、翻訳魔法によって異世界豆腐に変換されるわけで。
ラベンドラさんが異世界豆腐と発言しても、俺の耳には翻訳魔法のおかげで豆腐としか聞こえないからな。
俗にいうアンジャッシュ状態になっているかもしれないのに、判断のしようがないんだよな……。
ま、大丈夫か。無視で。
「やはりチョコが最強なのでは……?」
「どうにかして似たようなものは作れませんの?」
「じゃが味も風味も初めましてじゃぞ?」
「カケル! 頼む!! この世界のチョコの作り方を教えてくれ!!」
なんて、既に半分以上のチョコムースを食べた四人が、土下座する勢いで俺に詰め寄ってくる。
いやまぁ、別に教えてもいいんですけども。
「俺が食べてからでいいです?」
せめて食べ終わるまでは待とうね?
出来るよね?
「それもそうだな」
「かなり急ぎ過ぎていましたわね」
「チョコ……」
「わしは待~つ~ぞい」
……ギリセーフだな。
あと少しガブロさんの歌った音程がアレだったら、JA〇RACが家の扉を叩いてたかもしれん。
ふぅ……気を取り直して、チョコムースを一口。
「ちゃんとムースっぽい」
プチ感動。
いや、だって材料知ってるんだし。いくらレシピがあるとはいえ、絹ごし豆腐とチョコ混ぜたらムースになりますは信じがたいじゃん?
でも、それも杞憂でしたわ。
しっかり美味しいチョコムースだった。
ビターなのがいいね。さっきまで食べてたミルフィーユカツに負けない感じ。
あと、絹ごし豆腐のおかげで滑らかさと喉越しがすこぶるいい。
今後困ったらこれ作るかって選択肢に入るぐらいには手軽だったな。
……ミキサーを使うのと、洗い物がそれで大変になるのだけがマイナスポイントかな。
でも、それ差し引いてもかなり作りやすいと思う。
今後も作っていこう。
「ごちそうさまでした」
ちゃんと手を合わせてそう言ったら、四人がぞろぞろと俺の方に近寄ってきたよ。
チョコの作り方を教えろって事なんだろうね。
しゃーなし、動画サイトで『チョコレート 出来るまで』とか調べて、カカオからチョコを作るまでの工程の紹介動画を見せてあげた。
……それにしても、やっぱりカカオっぽいんだよなぁ、バカデカアーモンドッポイミルク。
あれずっとすり潰してたら、チョコになったりしないの?
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