第613話 現代日本食トラップ()

「ふぅ……さて、と」


 結局土瓶蒸しのレシピをウッキウキで受け取り、蕎麦と合わせて持ち帰ったラベンドラさん。

 聞けば、


「たまにはこれ位の朝食でも問題ないだろう」


 との事。

 土瓶蒸しが朝食って、かなりの贅沢だと思うのは俺だけ?

 まぁ、俺が気にする事じゃないか。

 で、四人が異世界に戻るのを見送った後。

 俺には大仕事が待ち構えていた。

 それはもちろん……、


「異世界鱧、何とか簡単に骨がどうにかならないものか」


 貰った食材の骨についてである。

 あ、ちなみにラベンドラさんには骨切りの動画を見せて学習させてある。

 だから、調べれば出てくるレシピを作る分には問題はない。

 だがね、折角の異世界食材なんだ。現代では出来ないような食べ方をしたっていいじゃない。

 ……いやまぁ、某寿司漫画では鱧のレントゲンを撮って骨が組み入ってる部分に包丁入れてピンセットで抜く、なんて力技やってたけども。

 某動画投稿者も同じくピンセットで骨抜いて、刺身で食べてたりしたけども。

 それはそれ。

 俺はもっとお手軽に骨無しで食べたいの。


「と言う訳でゴー君、何とかならない?」


 で、俺が真っ先に頼るのは当然のようにゴー君。

 最近のゴー君は便利機能が付きすぎてるからね。

 きっと魚の骨の一本や百本くらい……。


「ンゴッ!」

「マジで?」


 出来るそうです。

 何なら、現代で売られてる魚たちも、ゴー君に任せれば骨抜いてくれるって。

 どうしよう、あまりにも現代日本人が喜ぶ機能過ぎる。


「ンゴンゴ?」

「いや、干物にはしなくていいかな。とりあえず骨だけ取れればいい」

「ン~ゴ!」

「結構かかるね。でもお願い」


 ちなみに骨を抜くのに4時間かかるってさ。

 正確に言うと、骨だけを消化吸収しちゃうんだって。

 ……四時間もこの季節に庭のゴー君の中に放置するの怖いな。

 傷んだりしない?


(そこはわしに任せて貰おう。元はこっちの世界の食材じゃ。そっちの世界の菌とやらに負けたりはせんわい)


 ……おー、神様が出張って来た。

 ――でも大丈夫? 菌類に対して異世界食材が抗体を持ったら、漬物が出来ないとか無い?


(……調整しとくわい)


 あるんかい。

 あっぶねー。

 気付いて指摘しといて良かったわ。

 今後異世界エルフの漬物が食べられなくなるところだった。


「あ、ゴー君」

「ンゴ?」

「申し訳ないんだけどやっぱり少しは干物にして貰える?」

「ンゴンゴ!!」


 そしてふと思いついたので、やっぱり干物も作って貰う。

 ……コレ、別の魚の時にもやった気がするなぁ……。



 ただいま。

 という事で、仕事から帰ってきまして。

 今日のご飯なんですけど……、鱧のお吸い物に鱧の干物の塩焼き、それから卵焼きとリリウムさん達が付けたお漬物という、異世界食材オンリーの和食御膳なんていかがでせう?

 お吸い物にはイセカイカワブタ節を使用し、卵焼きにはリボーンフィンチの卵を使用。

 唯一米だけだね、異世界産じゃあないの。

 これだけは譲れんよ。


「姉貴からのマンゴーも届いたし」


 個包装の宮崎県産の高級マンゴー。

 しかも四玉。

 値段は……うん。見ると怖くて食べられない気もするから、確認はしないでおく。

 しっかりと保管しておきましょう。


「割と品数多いな……」


 で、御膳と言いつつ不安になって御膳を画像検索したら、結構品数多いのよね。

 でもまぁ、作れない量ではないな。

 ラベンドラさんに任せるし。


「刺身とか、俺が出来る奴だけ手伝っちゃおう」


 適当に出て来た画像の見様見真似ではあるし、思い立った時には買い物なんて済ませてるからね。

 出来る範囲で作りましょ。

 さっき挙げたメニューに刺身と天ぷら、酒蒸しも加えよう。

 蒸し物は茶碗蒸しが写ってたけど、作るの割と大変だし。

 ……待てよ? 『無頼』アメノサ組は茶碗蒸し未経験だったよな?

 でもプリンは食べさせたことあるな?

 ……その時、翔に電流走る。

 えるしってるか、にほんじんは、たにんをだますためのてまはおしまない。


「今から反応が楽しみだなぁ」


 そういや、こっちの世界の牡蠣も食べさせたいなぁ。

 また姉貴に送って貰うか。


「……カマボコとシイタケ、イセカイハモに三つ葉で何とか具材は大丈夫か」


 買って来た具材と冷蔵庫にある具材。

 かき集めれば茶碗蒸しには十分か。


「じゃあ刺身だけ作っとくかな」


 刺身のツマは無いけど、まぁ、うん。

 そこはご愛敬。

 如何せん刺身はする予定無かったからねぇ。

 ……だったらいっそ出汁醤油に浸して漬け風なんてのも美味しそうだ。

 ゴマと大葉を散らしてさ、いいね、そうしよう。


「とりあえずゴー君からイセカイハモを回収しないと」


 ゴー君に任せたのは俺が出勤する前。

 とっくに骨の除去は終わってる事だろう。


「干物にも軽く塩振っときたいし」


 異世界組が来るまでにやれることはやる。

 これまでと違って、俺にはあのマンゴーという、異世界組が居なければ俺の口に入ることはなかったであろう物が手に入っているのだ。

 報酬の前渡し、と言う訳ではないけれど、もちろんご馳走を用意させていただきますとも。

 読んで字のごとく、走り回って、ね。

 ……家の中の範囲を、ですけれども。

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