第363話 神様もエルフもさぁ……
……あれ? 魔物の名前が普通に通じてる?
てことはそれらしい名前の生き物がこの世界に居るってこと?
ちょいとスマホ……。
――吸血鳥じゃねぇか!!
フィンチって全然聞かないなぁ、なんて思ってたら、ガラパゴス諸島に生息する、血を吸う鳥、だってさ。
安定のガラパゴス産で草。
あそこに住んでる生き物、マジで独自進化遂げすぎてるな。
「んでも、それはそうとよく翻訳しましたね」
(それらしい特徴を持ったそちらの世界の生き物の名前を出しただけじゃ。こちらの世界のリボーンフィンチは全長50m位に成長するぞい?)
いや、死ぬが?
そんなのに吸血されたらチュッってだけで死ぬが?
それにしても、何もせずとも増える卵か。
……これ一個国が管理してれば、食料尽きる事無くなるのでは?
(早めに使わんと残機1のリボーンフィンチが誕生するだけじゃな)
ダメか。あと、残機1でリボーンを名乗るな。
復活出来ないだろ。
(ちなみにおススメはオムレツじゃな)
あ、神様のリクエストは聞いて無いっす。
それに、今日作る料理はもう決めちゃってるからね。
で、神様とそんなやり取りしてる間に魔法陣出現。
いらっしゃ~い。
「邪魔するぞ」
と言って先頭で入ってきたラベンドラさん。
……疲れてます?
「やっと一息つけますわね」
リリウムさんも、珍しく疲労の表情が……。
「すまない。茶を一杯」
あのマジャリスさんまでもが大人しい……だと?
「……ふぅ」
ガブロさんに至っては家に来るなり座り込んじゃったし。
大丈夫で?
「お疲れですか?」
レレレのレ。
「今潜っているダンジョンが中々に難易度が高い」
「潜れんことは無いが、気が抜ける状況が全く無くてな」
「カケルの家で寛げるのを心待ちにしておりましたの」
「……そうだ、カケル。送ってくれた酒なんだが――」
「あ、はい」
「大好評だった」
うし。
『無頼』って人がどんな人かは分からないけど、雰囲気的に日本酒は好みそうだったんだよね。
……少なくとも、貰った酒よりは全然美味しいだろうし。
「おかげで彼の真名という物を教えて貰いましたわ」
「……名前ではなく?」
真名、ねぇ。
こう、ゲームの中でしか聞いたことないよね。
本当に親しい人物にしか教えない、みたいな。
真名がバレると呪術がかけられるようになるだの、加護が消えるだの、作品によって扱いは様々だけどさ。
「彼の力の源、との事らしいですわ。まぁ、教えて貰ったんですけれど、普段は『無頼』と呼ぶように言われましたけれど」
「緊急の時、真名で呼びかければどんなに遠くとも念話が可能らしい」
「我々と違う国に住む、一部種族の特徴だと言っていたな」
「へー」
『無頼』さん、人間じゃないのかな?
なんか、聞いてる感じ人型ではあると思うんだけど……。
「そんな事より、スマンが飯を頼めるか?」
「あ、はい。分かりました」
「今日は何を?」
「タンカツのカツ丼を作ろうかと」
*
昨日四人には渡さずに確保していた部位がある。
それはタン元。
タンの中でも柔らかく、中々口に出来ないその部位を、俺はどうしても渡せなかった。
ただ、それも別に俺だけで食べるというためではなく。
こうしてタンカツにするために確保していたわけで……。
四人なら許してくれるよね?
「あ、そうそう。貰った卵、分身しましたよ」
「……そうか。説明していないんだったな」
「渡す時に説明お願いしますよ? 普通に驚いたんですから」
ジライヤタンのタン元を適当な大きさに切り、外側に浅い切れ込みを入れる。
揚げた時に形が歪にならないようにね。
で、そこに下味の為の塩コショウ。
そしたら、小麦粉、卵、パン粉の順番に付けるんだけど……。
さっきの神様との会話でさ、早めに使わないと卵が孵るとか聞いたらさ。
まぁ、リボーンフィンチの卵使うよね。
というわけで、ご対面。リボーンフィンチの卵は何色かなぁ……?
「……」
ラベンドラさんを見るボク。
「……」
目を逸らすラベンドラさん。
……あの、緑色の黄身はちょっと聞いて無いですけど?
大丈夫? 食べれる?
「はいかイエスで答えてください」
「それ選択肢無――」
「知ってましたね?」
「……はエス」
言えっての。
心の準備が出来てない不意打ちが一番怖いんだから。
いやまぁ、でも緑でも正直食べ物の色ではあるからさ。
それこそジェノベーゼとか緑色だったわけで。
これが水色とかだと無理! てなってたかな。
というわけで衣付け再開。
見た目ゾンビ肉みたいになったジライヤタンのカツを、油で揚げまして。
油で揚げてる間に、出汁などの用意。
玉ねぎを薄切り、鍋に水、麺つゆ、砂糖、醤油、みりん、料理酒を入れて火にかけまして。
カツが揚がったら、これまた緑色のリボーンフィンチ卵でとじてご飯に乗せて完成。
こう、色云々言ってたけど、正直見た目はそこまでじゃない。
もちろん、明らかに俺が知ってるビジュアルのカツ丼ではないんだけれども。
「色はあれじゃが匂いがたまらん! 早く食おう」
ガブロさんもこう言ってるし。
とりあえず柴漬けと、インスタントの味噌汁を添えまして。
ジライヤタンカツ丼! 完成!!
……じゃあ、毒見は任せますわぞ~。
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