第463話 飲む点滴
デザートが出てくるかと思った?
ざ~んねん! 飲み物からなのでした~!!
「……これは?」
「先日話題に上がった甘酒になります」
まぁ、その飲み物もリクエストのあったものだから許して欲しい。
「これがその甘酒か……」
「早速味見だな」
ちなみにその甘酒、ちゃんと和菓子のお店で取り扱われてる奴を買って来た。
一升瓶に入って売られてる奴で、まぁこの人らなら飲むだろうと思っての購入。
……これで口に合わなかったらどうしようか……。
「……ん?」
「これは?」
瓶からコップに注ぎ、匂いを嗅いでチロリと一舐め。
そうしたガブロさんとマジャリスさんの反応は……どっちだ?
「どうしたのでしょう?」
「飲めばわかる」
怪訝な顔で尋ねるリリウムさんにも、甘酒を勧める二人。
だから、その反応はどっちだ?
「……まぁ、そう言う事でしたの」
だ! か! ら! その反応はどっちなんだよ!!
「ああ、ポーションの味と似ているのか」
「――はい?」
なんて? ラベンドラさん。
甘酒の味がポーションに似ている?
「そうなんだよ! マナポーションの味に似ているんだ!」
「ここまで甘くないし、風味も無いがのぅ」
「雰囲気でしたら、一番近いのはマナポーションですわね」
えー……皆さん。
異世界ポーションを飲んでいる感じを味わいたいなら、甘酒を飲むのが良いそうです。
――嘘やん。
「美味いな」
「ええ。ポーションもこれ位美味しいのでしたら歓迎しますのに」
「美味しくないんですか?」
「カケル、ポーションは魔力や体力を回復するために飲むもので、味を追求する必要はないんだ」
「察しました」
まぁ、いわゆる飲み薬なわけですよね? ポーションって。
わざわざ薬に美味しい味付けなんて……やるのでは?
え? やるよね? イチゴ味とか、オレンジ味の薬なんて俺子供の頃に飲んだ記憶あるが?
「こりゃ美味いわい」
「酒でも、甘味でもない……いや、十分に甘いは甘いが」
「? なんか、魔力の回復が早いような……?」
ちなみに口にはあったらしく、コップに注いでは飲み、注いでは飲み、を繰り返している。
……甘酒って、そんなペースで飲むものじゃあないと思うんですけど……。
「味だけかと思ったら、効果までポーションに似ているな」
「うん……?」
「やはり魔力の回復量が上がったと思ったのは気のせいではなかったか」
「魔力が少ないわしですら効果を実感するぞい」
「効果量的にはハイポーション……いえ、オメガポーションと同等ですわね」
ハイポーションの上ってオメガポーションなんだ。
というか、中級ポーションとかじゃないんだ。
翻訳魔法さん? それでちゃんと合ってる?
「カケル、この甘酒とやらはカケルが飲んでも何も影響は出ないのか!?」
「えぇ……っと。出ませんけど……」
あるとしても飲む点滴って呼ばれるくらいに栄養価が高いことくらい……。
ハッ!? つまりは点滴はポーションだった!?
俺たちの体内にポーションを入れる事で病気に対応していた!?
……栄養ドリンクとかどんな立ち位置なんだろうな。
「魔力が無いカケルが飲んでも体調が変化しない……だと?」
「つまりは副作用が取っ払われたポーションという事か!?」
え? ポーションに副作用あるの?
怖いんだけど。
「副作用……?」
「魔力が低いものがポーションを過剰摂取すると体内で魔力が暴走し体調を崩すんだ」
「この甘酒の回復量ですと、コップ一杯で魔力を持たないカケルは倒れるレベルなのですけれど……」
う~ん……。
甘酒を飲んで倒れたって話はちょっと聞かないかな。
もちろん、飲み過ぎとかは別にしてさ。
コップ一杯程度なら……まぁ。
「うぅむ……このオメガポーションは持って帰りたい……」
甘酒ね。
……そこまでか。
「作り方を教える……ではだめですかね?」
「もちろん聞く。が、同じものが出来るとは限らんだろう?」
「まぁ……それは」
酒粕とか米麹とか、甘酒作りに欠かせないものが、異世界で手に入るかって言われたら難しいだろうしなぁ。
買ってくるか……お代わりを。
「味も美味いし回復量も多い。従来のオメガポーションがこれに置き換わる日が来るかもしれない」
魔力回復の為に甘酒を飲むのが一般な異世界か。
……シュールだなぁ。
「で? まさかこれがデザートとは言わんな?」
「言いませんよ。ただ、飲みたいって言ってたのでお出ししただけです」
もとより思ってませんとも。
そもそも、この甘酒もお店でデザートを買ってる時にたまたま見つけたものだったしね。
と言う訳で本日のデザートはこちら!!
「……団子?」
「ですです。色んな種類を買って来たのでどうぞ」
ちょっとドライブしてたらさ、いい感じの雰囲気の和菓子屋さんを見つけたわけよ。
そこで目に入ったのが団子だったからさ。
それらを買って来た。
「粒あん、こしあん、みたらし、栗、サツマイモ、ごま、きな粉になっております」
団子をそれぞれ紹介しつつ、ケトルにてお湯を沸かす。
団子を食べるってなったら、当然緑茶が必要でしょ。
「ふむ……なるほど」
「美味しそうですわねぇ」
「そもそもカケルの用意したデザートが不味かったことは一度もない」
「いただきま~す!!」
と言う訳でフライング気味のマジャリスさんを先頭に、各種団子……いただきます。
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