第510話 悪名高く
「カケル、持ち帰りの料理だが……」
「フレンチトーストなんていかがでしょう?」
「??」
と言う訳でお持ち帰りのご飯ですけど?
チーズ水をどう調理しようかと思って、思いついたんだよね。
パンに染み込ませて加熱したら、パン自体が伸びーるチーズみたくなるんじゃないかって。
んで、それを一番楽しめそうかつ味わえそうなのはフレンチトーストなのでは? とね。
「卵液を吸わせたパンを焼くだけなんですけど、これが割と美味いんですよ」
なお、想定しているのは家で作るような、食パンに卵液を吸わせて作るやつ。
間違ってもホテルとか、カラオケ店とかで出てくるようなアイスが乗るフレンチトーストではない。
アイスとかと一緒に食べても美味しいだろうな、チーズ水。
「ふむ……」
どう作る? とでも言いたげにラベンドラさんが寄って来たので、レッツらクッキング。
と言ってもリボーンフィンチの卵を割り、そこに砂糖、牛乳、チーズ水を入れてかき混ぜて。
食パンを浸して染み込ませたら完成。
後は焼くだけだもんね。
「染み込ませる時間が短いとパンの中央には染み込まないのでフワフワに。逆にしっかり染み込ませるとトロトロの食感になります」
まぁ、中までじっくり火を通す必要が出てくるし、何より染み込ませる時間が長くなっちゃうから俺はいつもそこそこで焼いちゃうな。
たまーにガッツリ染み込ませたりするけど。
「付け合わせは生クリームか?」
「ですね。シロップやベリー系の果物とも相性いいです」
一応、甘さは控えめにつけてあるから、生クリームやアイスなんかは乗っけてもいいと思う。
シロップもまぁ……許容かな。
チョコまで行くとやり過ぎかもってなる。
「あ、あと、明日の俺の朝ご飯用に一枚貰いますね」
漬けたばかりでまだまだ全然染み込んでいない食パンを拝借し、卵液も少しおすそ分けして貰いまして。
ふふふ、これで朝にコーヒーでも淹れればご機嫌な朝食になるって寸法よ。
「ベーコンとサラダでも添えるか」
「あ、いいですねぇ。ザ朝食って感じで」
サラダとベーコン、いいね。
俺も真似しちゃお。
「よし、ではカケル、また明日」
「はい、また明日」
「チーズ水レシピ、楽しみにしとるぞい」
「次はワインもお願いしますわね」
「ははは……」
と言う訳で四人を見送り……。
「えーっと、チーズに合うワイン……と」
俺は、世界一博識な検索エンジンに、どのワインを買うべきか教えを乞うのだった。
*
「むぅ、美味い」
「こちらのスープもまた何とも言えず……」
「交渉は捗っているか?」
「それが、やはり国を離れるには相応の保障が必要と言う事で……」
ニルラス国王都。
ここでは現在、ラーメン――ラメーンの料理対決決勝が行われており。
その優勝賞品である、個人店の『夢幻泡影』による出店の後押し。
これに対し、声を挙げた者達が居た。
それは貴族であり、冒険者に保障させるなら我々にも権限を寄越せと王に詰めかけ。
であるならば、優勝ではなく各人で気に入ったラメーンを出す調理士に資金を援助しろと国王が通達。
三回目にして、もはや優勝が名誉だけになりかけている中。
「アメノサ、どう思う?」
「
「交渉さえ成立すりゃあ、料理人を自国に引っ張って行っていいって話だよ」
貴族だけでなく、もちろんこの場に読んだ他国の国王たちにとってもこの話は適用。
つまりは、先程までカレーだチョコだと見せつけられた未知なる食べ物。
そこに追加されたラメーンを作る料理人を、国内へと呼び寄せられる。
しかも市場に居るのは本線へと勝ち上がってきたいわば選りすぐり。
他国からすれば十分な旨味が期待できるが……。
「
「せめて飲み込ンでから喋れよ」
口一杯に麺を頬張り、『無頼』に答えていたアメノサは、一度口の中を飲み込んで。
「自国に戻って即貴族を呼び、このラメーンを振る舞う。貴族たちの知らない料理を食べさせたとなれば国王の権威を示すには十分。それに、より友好関係を続けたいと思わせられる」
と、一息に。
「次の大会の開催を周囲に流すだけで、こぞってニルラス国王に謁見しに来る……か」
「あと、恐らくだけど少しでも怪しい動きを見せれば調理師を回収される」
「……スパイも兼任ってか?」
「恐ろしく上手い手。私じゃなきゃ見逃しちゃうね」
「んで? 我らがエクラール国はどのラメーン職人を連れていくんだ?」
「分からない。多分三人くらい……」
「……金、あンのか?」
「軍備から出すって。側近を説得出来たから、軍拡に回ってたお金がこっちに回せる」
ほんの少し前では考えられないその言葉に、『無頼』は思わず眉間に手を当て天を仰ぐ。
「バハムートの話題から、こうして友好国への格上げ。そして気が付けば、抗戦や侵略は意識から外される」
「随分頭の回る参謀が居るな」
「うん。それについては知ってた人物。と言うか、あいつなら……と納得出来る」
「俺知ってるやつ?」
「絶対に知ってる」
「誰だ?」
そうして、ニルラス国の参謀の名を聞くため、アメノサの顔を覗き込んだ『無頼』の耳に。
「
「うげ……」
おおよそ頭に付いてはいけない一文字を付けられ、ソクサルムの名前が伝えられるのだった。
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