第352話 再会食材
……朝からウニ雑炊を食べる事のなんと贅沢か。
ウニしゃぶのシメに食べた雑炊の美味さにちょっと感動しちゃってね。
前日から仕込んでたんだよなぁ。
出汁でウニを溶かして、そこに洗った米を入れて弱火でコトコト。
ご飯が柔らかくなったら卵を回し入れ、刻んだアサツキを散らして完成。
シンプルな美味いの暴力! 雑炊だからサラサラと流れる様に食べられるし、アサツキのほんの少しの刺激がいい塩梅。
あと、何といっても出汁を吸った卵が美味い。
んで、ちょいと残ったのを異世界の神様にお供えっと。
お酒ばっかり飲んでたらダメですよーってね。
というわけで仕事、行きたくないけど行ってきます。
社会人の辛い所ね、これ。
*
ただいま。
という事でね? 今夜はあの四人は来るんだろうか?
この、来るか来ないか分からん状態ってのが一番もどかしいんだよね。
行けたら行く、の極みじゃない?
となるとですよ。俺が出来るのは、来ても来なくても大丈夫な状態を作ることなわけで。
もっと言うなら、作り置き出来る料理を作る事だと思うわけですよ裁判長。
そうなったらこれよね? って事で、カレーを作りましょ。
前作った時は鍋の素を入れての和風カレーだったし、今度はガッツリ洋風のカレーで。
例えるなら、前回が蕎麦屋のカレーで、今回はカレーハウスのカレーって感じかな。
「……ていうか、この間味見したジライヤタン、滅茶苦茶美味かったな」
カレーの具材の皮を剥き、適度な大きさに切り。
鍋に牛脂を転がし、溶けたら牛肉を炒めていく。
そんな料理中に思い出すは、味見としてほんの少しだけ食べたジライヤタン。
いや、マジで美味かったからね?
あのままシチュー……いや、今作ってるカレーに入れても美味しいだろうなぁ……。
なんて考えてたら、魔法陣が登場。
――そして。
「カケル! ジライヤタンを貰って来たぞ!!」
「でかした!!」
なんとまぁタイミングがいい事に、ラベンドラさん達がジライヤタンを運んできてくれたのでした。
*
「結構アクが出ますね」
「だな」
頂いたジライヤタンは、それぞれタン先やタン元、タン中といった部位ごとにカットしましてね?
弾力のある部位は薄めに、柔らかい部位は厚めにカット。
それをカレーを作ってる途中の鍋にぶち込みました。
幸い、まだ牛肉しか炒めてなかったから、タンにも火が通るまで炒めまして。
野菜を入れ、水を入れて、現在絶賛アク取中。
これが意外と出てくるもので、ラベンドラさんと二人でせっせと取ってるよ。
「じゃあ、明日からその新しく見つかったダンジョンに潜るんですか?」
「そうなる。その頼みを聞いた見返りがそのジライヤタンだからな」
で、昇格会とかの話を聞きまして。
ジライヤタンを譲り受けた経緯も話してくれたんですよ。
なんでも、面倒くさい(意訳)パーティと一緒にダンジョンに入るけど、クッションとして『夢幻泡影』も来てくれないか? って事らしい。
癖があるパーティらしいんだけど、どんなだろ?
あまり変な人達だと、そもそも昇格すら出来ないだろうから、文字通り会話できない人たちじゃないと思うんだけど……。
「にしても、本当にSランクになったんですね」
「しっかりと国王からの承認もいただきましたわ」
「周りも、あまりのスピードに驚いていたな」
「別途で渡された私たちの功績一覧を見て目を白黒させていた」
「関わったギルドの代表全員からSランク昇格への太鼓判を押されとったのも効いたわい。一体どんな洗脳魔法で……なんていう輩も居たそうじゃがな」
……やるかやらないかで言えばやるよ? この人ら。
洗脳魔法……。
「洗脳なんてあんな非効率な魔法使いませんわよ。私が本気でしたら関係者全員失脚させて、私の息が掛かった方々をそこに就任させていますもの」
……こっわ。戸締りしとこ。
「冗談はさておき、そろそろ煮えたんじゃないか?」
「じゃあ、ルゥを入れますか」
安心してください、冗談とは思ってませんから。
知ってる? 冗談って、聞いてる人が笑えないとダメなんだよ? 笑えんて。
リリウムさんの言葉は。
「カケル、今日は……」
「全部甘口で統一してますよ」
「……助かる」
全く、マジャリスちゃんはおこちゃまでちゅね~。
前回の時にかなり辛さに苦戦してたからね。
カレーの中でも特に甘いと評判のやつ。それの甘口を買って来てあるから。
流石にマジャリスさんの口にも合うでしょ。
「となるとわしらには物足りんか……」
「まさか、俺が辛く出来る調味料を持ってないとでも?」
「という事は……」
「もちろん、今日のカレーは最初っから甘いですからね。各人で調味料を追加してお好みの辛さにカスタマイズしてもらう前提です」
「ひゃっほい!!」
まぁ、カレーって甘くも辛くも割と簡単に出来るけどね。
……懺悔します。辛くなり過ぎたカレーに、リンゴジュースをいれればいいのでは? とぶち込んだ結果。
フレッシュなリンゴの香りがかなり強い、辛いカレーが爆誕しました。
不味くはなかったんだけど、香辛料全ての風味よりもリンゴの方が強くってさ。
思わず笑っちゃった。リンゴジュースを入れる量は気を付けようね。
「というわけでカレーの完成です。チーズ不要の方~?」
どうせ要るだろうと、チーズは前提。
その上で抜く人を聞くけど挙手は0。
ほな、ジライヤタンカレー、食べますわぞ~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます