第237話 パンはあるけどケーキを食べればいいじゃない

 キーマンの美味しい淹れ方は、お湯に浸して五分程度待つとのこと。

 なんでも、茶葉が閉まってる方が品質が良いらしく、姉貴が贈ってきたキーマンはかなり茶葉が閉まってると思う。

 多分。

 いや、そもそもキーマンを見るのが初めてだから詳しくは分からんけども。

 と言うわけでポットにお湯を注ぎ、茶葉が開くまでゆっくりと……。


「カケル、先に食べてていいか?」


 待てるわけが無かったね、このエルフ達は。


「あ、どうぞ」


 と言うわけで先に食べてくださいと促して。

 その言葉を合図に、四人全員がフォークをそれぞれのケーキへと刺していく。


「しっとりしているな」


 とは、ガトーショコラにフォークを刺したマジャリスさん談。

 店によってはパサパサなガトーショコラもあったりするけど、このお店のはしっとりしているらしい。

 パサパサなやつも美味しいんだけどね。まあ、好みが分かれるところではある。

 

「味は……うむ! 言われた通りチョコのずっしりとした感じはあるが、そこまで重たいという事も無い」


 で、味の感想と。


「チョコの鼻に抜ける熱を帯びたような香りと、舌をねっとりと覆うような甘さとコク。濃厚でチョコレートではあるが、これまでの軽いものと違いハッキリとした強い存在感を示してくるチョコだ」


 ……ガトーショコラ、美味しそうだな。

 俺もガトーショコラにすれば良かったかも……。


「まぁ!! フォークを入れた時に層を感じはしましたけど、口に入れてもハッキリと感じますわ!!」


 で、こちらがオペラを一口食べたリリウムさんの感想にござい。

 オペラ……買ったはいいんだけど俺は食べた記憶ないんだよな。

 リリウムさんの食レポを聞いて味の想像でもするとしますか。


「層の違いから生まれる風味や歯ごたえ、味の変化が口の中で何度も起こり、飲み込むまで飽きというものと無縁のデザートですわね!!」


 あー……確かにそうかも。

 そうやって変化があると、食べてるのに楽しくなったりするよね。


「ほろ苦い層やコーティングされたチョコが苦い事もあり、ただ甘い一辺倒の味ではないところもいいですわ。味の深みがより強くなりますもの」


 深み……か。

 どうしよう、オペラも食べたくなってきたぞ……。


「美味い。クリームや生地にチョコを混ぜるだけでここまで変わるか」


 そんなリリウムさんの感想に割って入るはラベンドラさん。

 オーソドックスなチョコレートショートでしたわね?


「私の世界のケーキの話になるが、ここまで柔らかく、軽いものは珍しい。それに、間に挟まってる苺の酸味が凄くいい」

「やっぱりショートケーキはあるんですね?」

「あるにはあるが、あれはもはや主食の域だ。少なくとも、こうして食事の後に食べようとは思わん」

「そもそもケーキは食事と食事の間に空腹を満たすものですもの」


 ……おやつって話か。

 まぁ、確かにケーキもおやつっちゃあおやつだけどさ。


「もっとも、こうして切り分けたものではなく、ホールのまま一人で食べきるものだが」


 アメリカかな? いや、知らんけど。

 なんか、勝手なイメージアメリカ人はホールケーキを一人で食ってそうなイメージある。

 ……俺だけ?


「こ、こ、このケーキは――」


 んで、ザッハトルテを食べてたガブロさんが騒ぎ出した。

 どうした? 


「生地に酒が染み込んどるぞい!!」


 ……ん? マジで?

 ――あー……。そう言えば買った時に運転前に食べるなとか、子供にはあげないでくださいとか言われたような……。

 そうか、酒使ってるから言われたのか、納得。


「濃厚でコクがあり、甘さが控えめのチョコと、生地に染み込んだ酒の香りが最高じゃ!!」

「そんなにか?」

「噛むと生地からジュワッと酒が溢れるんじゃが、その酒もチョコの風味をしっかりと吸っとってな! 口の中に爆発的に広がるチョコと酒の香りがたまらんぞーい!!」


 まぁ、ご満悦ならいいか。

 ……そろそろ紅茶がいい感じなはず。

 ――うん、茶葉は開いてるし、多分大丈夫。


「紅茶の準備が整ったので注ぎますね」


 と言うわけでティーカップに注いでいくと……。

 凄かった。琥珀色っていうの?

 なんと言うか、かなり赤色に近いような黄土色と言うか、茶色と言うか。

 こう、イメージする奇麗な紅茶がそのまま出てきたような色。

 ……別に汚い紅茶を知ってるわけじゃないけど。


「とてもフルーティな香りですわね」

「甘みもあるな。蜜のような香りが感じられる」

「色を見ろ。かなり綺麗だぞ」

「ケーキに合いそうじゃのー」


 なんて感想を言うエルフ達の前にティーカップを置き、冷蔵庫から満を持して取り出したるは俺のチョコレートチーズケーキ。

 紅茶を淹れるまで待ってたんだよね。

 やっぱり、紅茶とケーキは一緒に味わいたいからさ。


「カケル、そちらのケーキは?」

「? 俺が食べたかったやつですけど?」

「ちなみにどのようなケーキなのだ?」

「チーズケーキにチョコレートを混ぜたやつです」

「チーズケーキ……?」


 あ、コレチーズケーキすら知らない感じ?

 そんなことある?


「えっと、チーズを使ったケーキで……」

「いや、それは分かるが……」

「どんな味なんだ……?」


 あの、なんか獲物を見るような目で俺のケーキを見てますけど……あげませんよ?

 あげませんからね!?

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