第393話 堪能アヒージョ
「よし」
「出来たか!? 出来たんだな!?」
俺とラベンドラさんでアヒージョを世話しておりまして。
そろそろチーズを入れるか、と声を出したらマジャリスさんが即座に反応。
……あの、もう少し時間が……。
「カケル、チーズは余熱で大丈夫だろう」
「そうですか?」
まぁ、ラベンドラさんがそう言うなら……。
というわけで火から降ろしてテーブルの上でスタンバってた鍋敷きの上へ。
「状態保存魔法で熱々の状態を維持しよう」
とか言って何やら鍋を撫でるラベンドラさん。
なお、もう片方の鍋はリリウムさんが撫でて同じことをした模様。
「よし、では早速!!」
「「いただきます!!」」
で、四人のとにかく早く食べたいという気持ちが、ほぼ有無を言わさず食事の挨拶に繋がりまして。
各々に取り皿を渡し、俺も一緒に手を合わせた。
さてさて、じゃあ食べますかね。
「エビ!」
「タコ!」
「ホタテじゃ!」
「イカ!」
と、まずは全員が魚介類にがっつくが。
くっくっく、ダメダメ。まるでアヒージョの事を分かっとらん。
アヒージョで美味いのは魚介もそうだが、一番は野菜!
しかも、具材の出汁がたっぷり滲み出たオリーブオイルをこれまたたっぷり吸える野菜。
そう、つまりはブロッコリー! そして侯爵芋!!
「風味豊かな植物油と具材の旨味! さらにはピリリと来る鷹の爪の刺激がもうたまりませんわ!!」
「タコの旨味も問題なく植物油と合う。そして、入れられた塩の量が最高の塩梅だ」
「噛んだ瞬間にホタテのスープと植物油が流れてくるぞい!!」
「油なのにさらりとしていてくどく無い。どころか風味が良く、どれだけでも入りそうだ」
とまぁ、魚介類の食レポしてくれてますけど?
俺は野菜を堪能させていただきますわ。
……むほほほ。これよこれ。
もはや野菜とオリーブオイルの相性とか言うまでも無いんだけど、そこに加わった具材の旨味と塩、さらには鷹の爪の刺激がもう最高。
マジで野菜が一番美味い。具材の中で。
「次は肉ですわ!」
「ズルいぞリリウム、俺にも寄越せ!」
「わしにもじゃ!」
と、魚介の次は肉へと箸を伸ばす三人を尻目に、俺とラベンドラさんとで目が合って。
(美味いのか?)
(はい)
というアイコンタクトを経て、ラベンドラさんがプチトマトへと箸を伸ばす。
ちなみに俺は侯爵芋を口へ運ぶ最中だったり。
――あー、美味い。
マジでみんな試して欲しい。アヒージョで一番美味い具材はじゃがいもだよ。
間違いなく、俺が保証する。
「……美味い」
そして珍しい。
ラベンドラさんが料理の分析とかする前に、味の感想を口走った。
それだけプチトマトのアヒージョが美味しかったんだね。
「ラベンドラ! 今何を食べた!?」
「プチトマトだ」
「なるほど、野菜……」
なお、他の三人にも衝撃的だったようで、何を食べたか聞いてきており。
既に燻製ヒツジナゾニクを口に運んでいるリリウムさん以外が、野菜のアヒージョに手を伸ばす。
ガブロさんは芽キャベツ、ラベンドラさんはマッシュルームに狙いを定め、
「むほほ」
「確かに美味い!」
ガブロさんとマジャリスさん、どちらも笑顔に。
そんな様子を見ていたリリウムさんも、
「わ、私も野菜へ……」
と参入。
野菜はまだまだ買って来てますからね。
煮込めばお代わりありますわよ?
「っ!? この侯爵芋のとろけるような食感が最高ですわ!!」
侯爵芋、普通に加熱するだけでもトロリと崩れるのにさ、アヒージョにすると、その段階が三つぐらい飛ぶんだよね。
箸で持ってもまだじゃがいも、口に入れてもまだじゃがいも。
ただ、舌に当たり、歯で突かれた瞬間に決壊を開始。
オリーブオイルの風味と具材の出汁を解き放ちながら、一瞬で口の中に広がっていくんだ。
昨日パンに塗って食べてたけど、このアヒージョもパンに塗って食べたら絶対に美味いだろうね。
……と言うわけで、
「パンを焼きます」
「やんややんや」
四人に拍手で見送られ、バゲットをスライス。
それをオーブンに並べ、トースト設定でいってらっしゃい。
そして、
「チーズも入れましょう」
ある程度食べるまで我慢しようと思ってたけど、もう俺が我慢出来ない。
というわけでチーズを投入。用意したチーズはカマンベールと……。
青いパッケージでお馴染みの裂けちゃうチーズ。
カマンベールチーズは六等分の切れ込みが入ってるのでそのまま。
裂けちゃうチーズもそのまま丸ごとオリーブオイルにドボン。
そして、チーズがいい感じに溶けたところでパンが焼き上がり。
「このチーズをパンに乗せて食べると最高でしょうね」
ささやき戦術、発動。
全員からの視線を集めるも、見られるのは一瞬。
何故なら、全員が自分の分のチーズを確保しようと集中したから。
「チーズ! 討ち取ったり!」
なんて高らかに宣言するマジャリスさんだけど、討ってない討ってない。
伸びるチーズをパンに乗せ、そこにブロッコリーを乗せてパクリ。
「~~~~~~っ!!」
美味しさを噛み締めて震えてる……だと?
マジャリスさんがデザート以外でこうなるとは……。
アヒージョチーズ、恐ろしい子。
「全部が美味い……」
こちらはチーズとプチトマトをパンに乗せたラベンドラさん。
というかその組み合わせカプレーゼですね。
不味いはずが無かろうよ。
「キノコとも相性バッチリじゃわい」
ガブロさんはマッシュルーム乗せか。
キノコとチーズが合わないはず無いし、そりゃあ美味いよね。
「魚介全般とも最高の相性ですわ!!」
で、リリウムさん……。
流石にイカエビホタテ乗せは何と言うか、豪快というか。
そこまでするならせめてタコも一緒に乗せてあげて欲しかった……。
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