第53話 閑話 襲撃その後

「アステリア! こんな辺境に呼び出して、どういう事だ!!」


 前日のミノタウロスによる襲撃。

 さらに続いたワイバーンの飛来という、不幸とも言える一連のイベント。

 それらにより倒壊した建物の修復が進むダフェードに、光り輝く鎧を着た人物が計五人。

 一人はアステリア。

 リリウム達と共闘し、ミノタウロスやワイバーンを討ち取り、撃退し、町を守ったSランクパーティ『ヴァルキリー』の一人。

 そして、そのアステリアに詰め寄っている四人は、語気的には不満を爆発させているようで。


「緊急だからと呼ばれて来てみれば、既にモンスターは討伐済み!? しかも、町の修復には十分に人がいるじゃない!!」


 町を見渡すと、資材を移動させるドワーフや、建物を修復するドワーフの姿が見て取れる。

 元々製造や建築といったジャンルに置いて、他の種族の追随を許さないドワーフが来ているのなら、応援の意味はまるでなく。


「何のために呼ばれたのか、理解不能」


 五人の中で、一番小さなシルエットの一人がそう口にした通り、わざわざ招集をかけられるような状況には見えなかった。

 だが、


「落ち着いて欲しい。もう来るはずだ」


 詰められているアステリアはどこ吹く風で、誰かの到着を待っている様子。

 呆れて肩を竦める四人は、言われた通りに少し待つと……。


「スマンスマン。指示を出していたら遅れたわい」


 アステリアに駆け寄ってきたのはリリウム達四人。

 その先頭に居たガブロが、


「前に居た工房仲間を呼んだまでは良かったのじゃが、まさか資材が全然無いとは思わんかったわい」


 と説明。

 さらに、


「バリケードにほとんど使ってしまったみたいでしたわ。それらも、ワイバーンによって破壊されてしまいましたけど」

「急遽俺の里の連中に声を掛けて木材だけは調達したが、石材も無いとどうしようもないぞ?」

「そっちは心配いらん。後発組が持って来る手はずになっとる」


 そう続けたのち、ラベンドラが『ヴァルキリー』達の前に出て。


「遅れてすまなかった。早速、例の物を」


 と言って、ディメンジョンバックからオムライスおむすびを取り出して。

 疑問符が浮かぶ四人を尻目に、アステリアは手を伸ばしてオムライスおむすびを受け取ると。


「皆聞いてくれ。この方々の提供してくれる料理は格別に美味いぞ!」


 明らかにテンションが上がった声で、そう呼びかけた。



 町の外れにある小さな丘。

 そこへと移動したリリウム達と『ヴァルキリー』達は、そこでオムライスおむすびを食べることにし、腰を下ろし。

 初めて見るオムライスおむすびと睨めっこをする四人を尻目に、どんな食べ物であるのかを知っているリリウム達が先んじてパクリ。


「ん~! 程よい酸味と甘みが口の中に広がりますわ~! スプーンで掬って食べるのも良かったですけど、こうして手に持って食べるのもいいものですわね!」

「それこそ、昨日食べたものと材料も作り方もほぼ同じだから、当然と言えば当然だが、こうして携帯しやすくなっても味が落ちないというのは画期的だ」

「何よりこの調味料が最高じゃわい! ラベンドラよ、何とか再現出来んのか!?」

「メタボレッドマンドラゴラの歩行種を煮詰めて味を調えれば再現可能だ。今の段階だとほぼ八割といったところか」


 と、もはや『ヴァルキリー』そっちのけでいつものように会話をし。

 その様子を見ていた『ヴァルキリー』達も、意を決してパクリ。

 まずは、唐揚げサンドを食べており、未知なる食べ物への耐性が少しだけついたアストリアが一口。

 その様子を、他のメンバーが見守ると……。


「…………!!? ――ッ!!」


 ゆっくり咀嚼して味を確かめた直後。

 カッと目を見開いて物凄い速度で食べ始め。

 それを見守っていたメンバーもパクリ。

 すると……。


「うまっ! ……失礼、美味しいな」

「この味……好き」

「アステリアが夢中になるのも納得の味だ」

「王都でも中々食べられませんよ? ここまで美味しい料理は」


 と、即座に気に入ったようで、皆あっという間に一個目を完食。

 すると――、


「こんな所に居たのか。探したぞ」


 どうやらリリウム達と『ヴァルキリー』を探していたらしいカルボスターが登場。

 そんなカルボスターに、無言でオムライスおむすびを差し出すと。


「オズワルドから聞いていた別格の料理か……頂こう」


 カルボスターは、特に抵抗もなくオムライスおむすびを受け取って。

 兜を脱ぎ、一口。


「ああ……美味い。――いや、本当に格別に美味いな」


 噛み締める様にゆっくりと咀嚼したカルボスターは、


「厚かましい頼みだとは思うが、もういくつか貰えないだろうか? 子供や妻にも食べさせてやりたい」


 と申し出て。


「一人三個ずつ用意して貰っている」


 ラベンドラが、残りのオムライスおむすびを開放すると、我先にと飛びつく『ヴァルキリー』とカルボスター。

 そんな様子を見ていたリリウム達は、ふと我に返り。


「そう言えば、カルボスターさんはなぜこちらに? 私たちを探していたようでしたけど?」


 と質問。

 すると、


「そうだ、忘れかけていた。報酬の話をしなくてはいけなくてな」


 カルボスターはリリウム達を探していた理由を説明。


「討伐したミノタウロスやワイバーンの素材の分け方についてだが、出来ればギルド側は素材の買い取りを申し出たい。もちろん、自分たちで使う用に持ち帰って構わないのだが、可能な限りこちらに素材を回してもらえると助かる」


 そう言って頭を下げるカルボスターに、ラベンドラが、


「俺が欲する素材はただ一つだ」


 と言い放ち。


「ワイバーンの、手羽元を貰おうか」


 食欲100%の表情で、そう突き付けるのだった。



───────

メタボレッドマンドラゴラ(歩行種)=トマト

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