第54話 チーズダッカルビ……?

 あ~……酒が無性に飲みたい。

 別に普段から酒飲みってわけじゃないんだけど、定期的な周期でこんな感じに酒っ!! ってなる時がある。

 念のために行っておくけど、普段は一週間に缶ビール一本飲むかどうかくらいだからね?

 というわけで今日は酒が進むような料理にしよう!

 と、考えたわけですよ裁判長。

 そして私はスーパーで材料を購入し、調理に至った、というわけです。



 まぁ、実際は四人が来るまで待ってからの調理なわけだけども。

 というわけで、


「お邪魔するぞ」


 いらっしゃ~い。

 よう来んしゃったね~。


「む、今日はキムチを使うのか」


 と、部屋に転移したばかりのラベンドラさんが、テーブルに準備されたお徳用キムチを即座に発見。

 そう口にすると、


「キムチ……。あの赤い辛い野菜だったよな?」

「あれ美味しかったですわね。辛いだけではなく、後から後からと尾を引く美味しさでした」

「酒にもバッチリ合う飯じゃったな!!」


 と、三人の反応は意外にも良く。

 どうやら辛いものが苦手というのは、この四人には居ないらしい。


「この間作ったものを、肉を変えて作る感じですけど」


 とりあえずはそう説明し、早速調理へ。

 へへ、悪いね。もう待ちきれんねぇんだ。

 トリッポイオニクを一口大の大きさに切り、フライパンに油を引いて、肉に火を通す。

 このトリッポイオニク、味とかには文句が無いんだけど、一つだけどうしても許せない部分があるんだよね。

 それは――皮がない!!

 いや、鶏肉じゃないから仕方ないっちゃ仕方ないと思うよ?

 でもさ。

 やっぱりあの皮もあってこその鶏肉の美味しさだろ!?

 それが付いてないたぁどういう了見だい!?

 …………カエルの皮とか付いてない方が嬉しいけどさ。

 さて、肉に火が通ったら軽く塩コショウを振り。

 お待ちかねのキムチをドーーン!!

 さらにここに追い醤油と追いみりんを追加し、汁っぽさが無くなるまで火にかけて。

 最後の仕上げにこれでもかとチーズを投入。

 弾けろチーズ! 全てを包み込み、旨味を閉じ込めろ!!


「というわけで完成です」


 豚キムチ系列の料理は調理時間が短いのがいいよね。

 作るのが楽で、美味しい。最高だな。

 どんぶりにご飯を盛り、そこに先程作ったトリッポイオニクチーズキムチをたっぷり乗せる。

 ……あ、思い出した。チーズダッカルビだわこの料理。

 あれは別に丼みたいにはしないはずだけど、レシピ的にはチーズダッカルビだし。

 ダッカルビ丼とでも呼んどくか。

 盛り付けたら仕上げにごまをぱらりと振って、インスタントお味噌汁を添えて完成。

 本日は長ネギと豆腐の味噌汁になっております。


「カケル、すまないがキムチのレシピを見せてもらえるか?」


 そこまで終わったタイミングで、ラベンドラさんに言われたのでキムチの容器を差し出して。

 そこの成分表? を食い入るように見つめ始めたラベンドラさんを置いて、三人にダッカルビ丼とみそ汁を配膳。


「もう匂いで美味い」

「待ちきれませんわ!」

「ラベンドラ! はよ来い!! 先に食うぞい!!」


 長期間お預け喰らってた犬かよ、ってくらいには勢いがあったな、ガブロさんの言葉。

 一方呼ばれたラベンドラさんは、相変わらずキムチの容器を見ながら移動して。


「はぁ……」


 なんかため息をついて着席。

 そうして四人が揃った瞬間、全員が勢いよく食べ始めた。

 いや、ラベンドラさんもそっち側かい。


「うんめぇ……」


 一瞬ギョッとしちゃったよ。

 なんというか、今までクールだったマジャリスさんの口からそんな言葉が聞こえたから。

 ……イケメンが語彙無くしてそんな言葉使うの、ギャップ凄いな。


「はぁ……。美味しい」


 リリウムさんとかうっとりしちゃってるし。

 俗にいう飯の顔ってやつ? 美食の喜びを知りやがって。


「いや、もう美味い。ただただ美味い」


 ラベンドラさんもいつもの分析しながら食べるみたいな事も無く、珍しくがっついてる。

 それはそうと、着席する前のため息はなんだったんだろう。

 ちょっと興味がある反面、なんか聞きたくない気がしないでもない。

 んでまぁ……ガブロさんは、


「カケル!! 後生じゃ! 酒を……ビールをくれ!!」


 今にも死にそうな声で。

 あるいは、何日も彷徨った砂漠でオアシスを見つけた時のような声で。

 俺に酒をねだってくる。

 ハイハイ、買って来てありますよ。俺が飲むためにこのメニューにしたんだもん。

 そりゃあ酒もあるって話で。

 ガブロさん用のもちゃーんとあります。

 ――発泡酒。

 出しても分からんでしょ。


「ガブロさんにはコレどうぞ」

「おお!! 流石カケルじゃわい!!」


 売上一番を謡ってる発泡酒の人気な奴。

 受け取ってすぐにカシュッ! という音を上げ。

 喉を鳴らして傾けて。


「プハーーっ!! この間のビールとは違うがこれも美味い!! かなり飲みやすくて軽いな!!」


 ……流石ドワーフだったわ。

 だがまだ、この間のビールとは違うと言われただけで、ビールじゃないとは気付いてないみたいだな。

 しばらくは発泡酒で我慢してもらうぞ。

 さてさて、それじゃあここらで俺もダッカルビ丼を頂きますかね。

 まぁ、絶対にマズイわけがないし、四人がこの反応ですわよ?

 勝利確定演出の確定音にハンドルバイブ、保留レインボーですわー!!

 というわけで俺はどんぶりを持ち、ダッカルビ丼を思い切り掻っ込むのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る