第94話 米騒動……?
というわけで竜田揚げ作り。
ここで問題。
竜田揚げと唐揚げの違いを説明しなさい。(配点5点)
まぁ気になって調べてみたら、一応醤油で下味をつけて、片栗粉をまぶして揚げたのが竜田揚げらしいよ?
でも、同じことをして唐揚げって言ってる場合もあるらしい。
……つまり名前が違うって事だな!
「適当な大きさに切った肉を、醤油に漬け込みます」
漬け込む醤油にはチューブにんにくとチューブ生姜をぶち込んでかき混ぜております。
んで、漬け込み過ぎると味が濃くなりすぎるから、今回は十分程度漬け込みまして。
「これに片栗粉をまぶして揚げます」
油に入れ、揚げ始めると。
ラベンドラさん以外の三人がこっちに顔を向ける。
今から食べるのじゃありませんよ?
というか、油の音に反射的に反応するようになっちゃってまぁ。
一体誰のせいなんやろなぁ……。
「音を聞いてるだけでテンション上がりますわね」
「わしなんて涎が出てくるわい」
「ダンジョンもようやく終えたわけだし、踏破記念に朝から揚げ物か」
ん?
ダンジョン踏破したの?
「ダンジョン、踏破したんです?」
「ん? ああ。踏破はしたぞ」
なんか含みがある言い方だな。
聞いてみるか。
「何かあったんですか?」
「いや……踏破はしたんだがな――」
「当初の目的が果たせませんでしたの」
あー……なるほど?
ダンジョン踏破とは別に目的があって、そっちがダメだったのか。
にしても、リリウムさん達、結構強いはずなのにダメだったんだな。
「にしても、米っちゅーもんは中々見つからんわい」
へ?
米を探してたの?
……そもそも異世界に生えてるんだろうか?
「白い特徴的な植物だから、すぐに見つかるだろうと思ったのだがな。そのような実を付けた植物は見当たらなかった」
……何言ってだこの人。
米が白米の状態であるわけねぇべ。
マジかー。米探してたのかー。
「ちなみになんですけど、米って別にこの見た目のまま存在してるわけじゃありませんよ?」
「なんだとっ!?」
全員がこっちに詰めかけてきたよ……。
「じゃ、じゃあ、どういう見た目なんだ!?」
ちなみに一番近いのはラベンドラさん。
というか、胸ぐらに手が掛かってますよ? 必死過ぎてこわひ……。
「えっと、ちょっと待ってください……」
命の危機を感じたのでスマホで画像検索。
ヘイ俺! 稲穂の画像を探して!
「これが米ですね」
というわけでたわわに実った稲の画像を四人に見せると……。
膝から崩れ落ちる四人。
ふぇっ!? 何事!?
「ま、マジか……」
「確かに形は米に似とるとは思っとったが……」
「まさか本当に米だったとは……」
あ、これ見つけてたやつだ。
でも、食べてた米と結びつかなくて違うって判断してた反応だ。
「でも、私たちが見た米はもう少し細長かったような……」
あ、はい。こちら我々日本人の食への探究が生んだブランド米、こしひかりの画像にござい。
細長いって事はインディカ米とかになるのか?
「でも良かったじゃないですか。米はあるみたいですし……」
「もっと早く知っておれば、刈り取ってきたものを……」
「――待て、絶対に刈った後に必要な工程が存在するはずだ。カケル、米は刈った後にどんな工程を経て我々が食べたやつになるんだ?」
お、ラベンドラさん気付いちゃいました?
そうだよね。刈ったばかりじゃ米は食えないよね。
って事で、脱穀やら精米やらの工程を紹介する動画をお見せしましてー。
その間に揚げあがったトリ竜田をバーガーにしていきますわ。
ソースをどうしようかと思ったけど、面倒だしタルタルソースだけでいいか。
手作りのやつじゃなく、市販品のタルタルソース。
手作りも美味しいけど、市販品じゃないと味わえない美味しさってあるよね。
というわけで、千切りキャベツ、トリ竜田、タルタルソースと乗せたら挟んで完成。
不味くはないでしょ、これは。
「……」
出来たのを伝えようと振り向いたらラベンドラさん達が絶句してた。
? 何か変な工程でもあったんかな?
「どうかしました?」
「いや……工程が多い上に原理は分かるがほとんどが機械化されているのだろう?」
「まぁ、そうですね」
「我々の世界でこの工程をするとなると、かなり複雑な魔法で、しかも複数回必要になるか……」
「この映像の働きをする機械を一から作ることになる。どちらも現実的じゃないわい」
「これですと、向こうの世界でお米を食べるのは諦めるしか……」
……こう言うとアレだけどさ、俺らの先祖さまって、機械がない時でも米を食ってたわけで。
例えば、千歯こきとかの、今は使われなくなったけど昔は使ってた道具を使えば、効率は機械に劣るだろうけどいけるのでは……?
これも見せるか?
「一応、機械になる前に使ってた道具もありますよ?」
「なんじゃと!? 是非とも見せてくれんか!?」
食いついたのは、ガブロさんでした。
多分あれだな、米を食いたいって気持ちと、ドワーフ由来の初めて知る道具についての興味があったからだろうな。
というわけで、明治時代とか、その頃に使われてた農具紹介動画をご清聴ください。
あ、一応竜田バーガーは出来上がりました。
「どうだ? ガブロ」
「これ位ならまぁ……」
「『ヴァルキリー』にも米の全容を伝えよう。刈り取った米はどこか一か所に集めて……」
「だったら調理士ギルドや農業ギルドに情報を流した方が早いですわ。農業ギルドであれば栽培にも着手する事でしょう?」
「上手くいけば向こうでも米が食えるようになるな!」
なんだか皆さんの中で色々と描かれてるようですわね。
……バーガー、冷めますよ?
「そうと決まればやることは決まった! カケル! 感謝する!!」
そう言って立ち上がり、俺の手を力強く握り。
バーガーを回収したラベンドラさんは。
「向こうでも米が食えるようになったら、報告するわい」
「まだまだ米に合う料理もあるのだろう? 期待している」
「これからもよろしくお願いしますわ」
一足先に戻り支度を済ませた三人を追って、魔法陣の中へ。
……大丈夫だよね? 俺のせいで向こうの世界で、大稲作ブームとか起きないよね?
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