第233話 詰めろ逃れろ

「それで……弁明は?」


 魔法陣から四人が現れた直後。

 俺は、どか弁の経緯を四人に話し。

 話の途中から、全員が目を逸らし始めたのでやっぱりこいつらか、と容疑を確信。

 今日の晩御飯やデザートという、絶対的な交渉材料を盾に供述を引き出した。


「その……便利になるだろうと思って……」

「実際便利でしたよ? ただ、あまりに現実味が無さ過ぎて不安になりましたけど」


 何を詰めても重さが変化しない弁当箱。欲しがる人は結構いるのではなかろうか?

 特に部活に励んでる学生とか。

 弁当って結構荷物になるもんね。

 ただ、一般社会人の俺には無用の長物なんよ。


「飯は温かい方が美味い。間違いないだろう?」

「確かに間違いないですし、現に保温機能を付けた弁当箱も存在します」

「なら……」

「でも、ただのどか弁が詰めたままの温度を保たせられる訳が無いんですよ」


 今日は焼肉弁当にしたから助かったけどさ。

 これで常温解凍の冷凍食品とか入れてみ? 食べる頃にも溶けてないどころか凍ったままなんだぞ?

 自然解凍で食べられるようにと作ってくれた企業努力を無駄にすんな。


「あ、洗うのも手間かと思いまして……」

「風化もせんほうがいいじゃろうと……」


 この二人についてはため息しか出ない。

 よく分からんけど、汚れとかが一切付かないような加工を二人で施してるみたいだし。

 あと、腐食とか錆とかも発生しないように、ドワーフの技術を使ったとか。

 もう一度言うね? 一般社会人の俺には無用すぎる長物なんだよ!!


「ちなみに聞きますけど、この弁当箱がそちらの世界で売られてたとして……買います?」

「買う」

「人数分は確実に買いますわね」

「あるだけ買い占めるじゃろ。エルフとドワーフの合作じゃぞ? 他に存在せんわい」

「まずは王へと捧げられるだろう」


 ……はい。

 つまりこの弁当箱は献上品として普通に受け入れられる性能って事か。

 三度言うぞ? 俺は! 一般!! 社会人なの!!


「その……解除した方がいいか?」

「いや、大丈夫です。便利な事には間違いないんで」


 ぶっちゃけ、前もって教えてくれてたら良かっただけなんだけど。

 マジでさぁ……報連相が大事ってエルフ達は知らないのかい?

 人間の世界では常識だよ?


「む、むぅ……」


 ちなみに全員正座してるんだけど、ガブロさんが一人だけモジモジし始めたんだよね。

 足が限界かな?

 ――そう言えば、


「昨日程服がボロボロじゃありませんね?」


 昨日より格好が奇麗だな。

 全然ダメージを受けてないように思える。


「ああ、それなんだが……」

「昨日持ち帰ったワインがあったでしょう? 当然の如く神様に持って行かれたんですけれど」

「えらく気に入ったらしく、しばらくは神直々の加護を俺たちに与えてくださるらしくてな」

「そのおかげもあって、かなり順調に進んどるぞい」


 ……神様気に入ったのか、サリーチェサレンティーノ。

 次は何をお土産にさせようか……。

 ――待てよ?


「順調に進んだって事は、ボスとか倒しました?」

「倒したぞ」

「かなり厄介な相手でしたわ」

「だいだらぼっちと言ってな。巨大すぎて見上げても顔すら見えない程の大きさだった」


 おおう、知った名前が出てきたぞ。

 魔物フィルターもかかってないし、おおよそ俺が想像するだいだらぼっちと同じでいいと判断する。

 確か、沼とか山とか作りがちな大男だよな?

 とにかく巨大って特徴しか知らんが。


「巨体相応の動きの遅さなのだが、何より質量が違う」

「少し何かに触れただけで吹き飛ばされ、大きなダメージとなり得ましたの」

「身体がデカく、攻撃範囲もふざけているの一言だ」

「リリウムの転移魔法が無けりゃ、危なかったかもしれんわい」


 ……見たい。

 超見たい。その戦い。

 こう、その戦闘映像を魔法か何かで記録してこちらで見せてくれない?

 絶対面白いと思うんだ。


「最後はマジャリスの弓で目を狙い、隙を作ってリリウムの魔法でとどめを刺した」

「ラベンドラが動き回って気を引いてくれたおかげで、俺はじっくりと狙うことが出来たんだ」

「ガブロも凄かったですわよ? 目を潰されて闇雲に振ってきた腕を受け止めたんですもの」

「何だかんだ最後を持って行ったリリウムの魔法の火力じゃろ。あれよりダメージの出る魔法は多分存在せんぞい」


 ……こう、自分の功績を自慢するんじゃなく、他の面子の行動を紹介するの、仲の良さが出てていいなぁって思う。

 ようは、自分以外をしっかりとリスペクト出来てるって事だもんね。


「ぬがぁぁー-っ!! もう限界じゃ!!」


 なお、ガブロさんの足は耐えられなかった模様。

 他の三人を見習え。正座してるのにすました顔してるぞ。


「我慢が足りない」

「根性なしですわね」

「やはりドワーフか」


 酷い言われようだけども。


「黙らんか! わしは貴様らみたく魔法で浮いてズルなんてしとらんからな!!」


 前言撤回、見習わなくていい。

 ……あ、マジだ。よく見たら床に足が接地してない。

 汚いなさすがエルフきたない。


「……まぁ、とりあえずご飯にしますか」

「その言葉を」

「待っていましたわ!!」

「私は何をすればいい?」


 で、ご飯にしよう声をかけたらこれ。

 転身早いね。

 それじゃ、海外で有名な日本食の上位存在、すき焼きを作っていきましょー。

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