第七章IF 大宇宙と女の子は奥が深い

第846話 地球への修学旅行は刺激的♪

 地球から比較的近い、ラグランジュポイント。


 恒星間を移動できるコロニーとも言える、エルピス号が停泊。


 その内部には、新たな惑星に移住できるだけの動植物や、宇宙で採取や加工、生産ができるだけの設備もある。


 この宇宙船だけで、1つの惑星と同じ。

 しかし、そこにいる上位者は、年頃の女子高生ばかり。


 正確には、超空間にあるミーティア女学園だ。

 物資を節約するため、自らを電子データのようにしている。


 超空間は宇宙と同じで、本人としては実態がある状態だ。

 バーチャルリアリティーとは違う。


 明るい日差しが窓から入ってくる生徒会室で、そのトップにいるルイザは、夏用のセーラー服だ。


 長い黒髪で、まさに優等生。

 美人ながらも優しげ。


 その赤目に、疑問を浮かべた。


「地球へ行きたい? 構わないけど……。介入しないようにね?」


 対するは、肩にかかるぐらいのブラウンの髪で、黄色が入ったパープルの瞳をした女子だ。

 星を模した髪飾りをつけた、ロリ系。


「ハーイ!」


 カペラは、元気よく返事をした。



 生徒会室を出たカペラは、廊下で声をかけられる。


「ちょうど良かった! 私たちも、地球へ行くところ。一緒にどう?」


 笑顔のまま、小首をかしげたカペラは、うなずく。


「うん、いーよー!」


 これが、全ての始まりだった……。



 エルピス号の超空間では、地球の物体に触れられず


 さりとて、機動兵器や等身大のサイボーグでは、いくら文明レベルが低いとはいえ、ゲートなどで察知されてしまう。


 素体を培養しているカプセルが、動き出した。

 中の液体が抜かれ、ハッチが開けられ、裸の女子たちが慣れない雰囲気で上体を起こす。


「あー、久々の生身だ」

「匂いが……」

「たまになら、いいんだけどね?」


 ちょうど、女子高生の年齢。


 医療施設をイメージさせる空間で、恥ずかしがる様子もなく、周りを物色。


「600秒後に、降下船へ集合!」


「えー!?」

「早い、早い!」


 リーダーの女子が宣言したことで、彼女たちは大急ぎでシャワーなどを済ませる。



 ――降下船


 せまい空間で、中央のテーブルを囲む女子たち。


 リーダーが、説明を始める。


「軌道上からの降下ではなく、次元侵入にするから! 現地の住人にはできるだけ察知されないよう、ステルス装備はどんどん使っちゃって! 今回の偵察では――」


 緊急脱出あり。


 現地の文明レベルと技術、思想を可能な限り、見聞きすること。


「東アジア連合にしよう」

USFAユーエスエフエー

REUアールイーユー

「北極」


「北極は、街がないわよ?」

「じゃ、シベリア共同体の首都で」


「私は、日本~♪」


 カペラの宣言に、リラエアが同行を希望した。


 それぞれに、偽装となる制服、IDを身につけ、転送装置の中へ……。



 ――山間にある街


「来たよー!」


 叫んだカペラは、両手を上げた。


 周りに見られたリラエアが、彼女の制服を引っ張る。


「ちょっと! カペラちゃん……」


「じゃあ、さっそく迎えを呼ぼう!」


 スマホを取り出したカペラは、指を動かす。


「あ! ……うん! それそれ♪ 2人で最寄り駅のロータリーにいるから」



 笑顔のカペラは、ロータリーに入ってきた車の後部座席へ乗り込んだ。


 訳も分からず、リラエアは隣の友人に話しかける。


「ねえ! ど、どこに行くの?」


「楽しいところ」


 答えになっておらず、戸惑うリラエア。


 やがて、車は裏門の前で一時停止。


 鉄扉が動いたことで、ゆっくりと動き出す。


止水しすい学館”


 古風な文字で、校名のプレートがあった。



 車から降りた2人は、寄宿舎のような建物に案内される。


「食堂も無料ですが、常識的な範囲でお願いします」


「ハーイ!」

「ど、どうも……」


 2人で相部屋となったが、リラエアは周りが気になって仕方ない。


 部屋に水回りはなく、共用設備のようだ。

 荷物を置いて、探索する。


 とりあえず、食堂で注文。


 食事をしていると、意味深な会話……。


室矢むろやくん、どうだった?」

「すごかった!」

「私なんて、3回は――」


 基本的な知識はインプットしているため、何となく分かった。


「衣サクサクで、肉も柔らかい!」


 顔を赤くしたリラエアは、美味しそうにカツカレーを食べているカペラに問いかける。


「ね、ねえ? ここ、何をやっているところ?」


「それほど待たないと思うよ?」

「じゃなくて!」


 考えたカペラは、意味ありげに答える。


「言葉で説明するより、見たほうが早いと思う。……終わったら、東京観光をしようか?」


 カペラちゃんが言うのなら、大丈夫だ。


 リラエアは、ひとまず考えるのを止めた。


「あ! 記念撮影もできるけど?」


「カペラちゃんがやるのなら……」


 周りに女子が多いのは、女子校だから。


 なぜか、衣食住を無料で提供されているのも、カペラちゃんが情報操作をしたのだろう。


 リラエアはそう思いつつ、2人で3日ほど過ごし、いつもとは違う部屋へ呼ばれた。

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