第816話 紫苑学園の生徒会と現代貴族
「えー! 本日から編入する
黒板の前に置かれた
どの顔も、興味津々。
「ベルス女学校から転校したものの、本人は忙しく、顔を出せないそうだ」
「「「ええ~!?」」」
生徒たちの声が、教室を揺るがす。
「あのベル女なのに!」
「クラスメイトだったら、初日は来いよ!?」
「そりゃない!」
主に、男子の嘆きだ。
「先生! 俺が、咲良さんに連絡しましょうか?」
「いや、その必要はない」
勇敢に申し出た
1周目はマルグリットが
そのため、姿を見せず。
とたんに、クラスのSNSで
:誰か、見た?
:いや
:ベル女ってことは美人だろうなあ……
:
:つーか、あいつも来ていない
:詩央里ちゃんもいない……
:まあ、室矢が来たら問い詰めるってことで!
――高等部の生徒会室
ここのトップである
「そっかー! 室矢くん、留学するのか……」
「こちらも、ベル女から情報を得ました。大変だったようですね?」
すぐに謝る。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません……。そちらへの影響は?」
「ウチが何かしたわけではなく、問題ありません。室矢くんのほうが心配ですよ?」
凛の発言で、改めて告げる。
「大きな目標があります! だから通信制へ移り、その上で留学。……こちらは咲良です」
俺の隣に座っているマルグリットが、会釈した。
「ベル女から転校した咲良です……。はじめまして」
「生徒会長の澤近だよ!」
「書記の大角です」
それぞれに自己紹介。
親睦を深める気はなく、用件だけ済ませる。
「生徒会に伝えたいのは、さっきの留学と、カレナたちも連れていくことです」
「今の占いは、もう無理と……。カレナちゃんは元々、あっちの生まれのようだし。里帰り?」
葵菜の問いかけに、首肯する。
マルグリットの反対側に座っているカレナが、事もなげに言う。
「そうじゃ! ユニオンのウィットブレッド公爵令嬢で、騎士
驚いた凛は、ガシャンと音を立てた。
「え!? そ、そうでしたか……」
マイペースな葵菜が、突っ込む。
「凛ちゃん、驚きすぎ! 貴族といっても、昔の話でしょ?」
「それはそうですが……」
自分の紅茶を飲んでいるカレナが、説明する。
「葵菜が言ったように、過去の話じゃ! それでも、都心の一等地を占めている大地主の公爵がいるし、大企業の経営者もいる。貴族同士の繋がりは決してバカにできん! もう爵位を授けられず、純血は減る一方だからな……」
面白がった葵菜が、茶化す。
「やっぱり、『平民なんて!』と見下しながら、豪遊しているの?」
ジト目のカレナが、ため息を吐いた。
「むしろ、逆だ! 先祖代々の城や領地で、観光業または農園を経営しておる……。騒がしいのが嫌いゆえ、郊外で静かに暮らす者が少なくないぞ? 本物の貴族は、次代へ血筋や財産を引き継ぐことが使命だ」
「でも、お金あるんでしょ?」
「大半は、普通に働いておる! どこでも同じだが、資産評価額=可処分所得ではない。プロに運用を頼んでいれば、10年単位で引き出せん。そもそも、先祖代々の土地家屋を売り払った後はどうするのじゃ?」
意外だという顔の葵菜は、疑問に思う。
「ユニオンにいれば、お嬢さまの扱いでしょ? どうして日本に?」
「
答えたカレナは、補足する。
「ウィットブレッド公爵家といっても、私は居候だ! 直接の係累がおらず、いてもいなくても変わらん」
「そ、そうなんだ……」
マズいことを聞いたと思ったらしく、葵菜は大人しくなった。
俺は、場を仕切り直す。
「これから欧州へ行くんで、帰ってきたら教えてあげますよ!」
「というか、どれぐらい滞在するの? さっきは聞かなかったけど」
葵菜の質問に、首を捻る。
行ってみないと、分からない……。
「未定です! 国や学校を吹き飛ばさないうちに帰るつもりで――」
「吹っ飛ばすの!?」
「え?」
口をポカンと開けた女子2人。
すぐに突っ込んでくる。
「えーと……。し、指名手配にならないでね?」
「紫苑学園が潰れますので……」
安心させるために、笑顔で言う。
「大丈夫ですよ! その時は、地球から逃げ出します!」
「スケールが違った!?」
「いや、本当にお願いしますね?」
――敷地の
部活の掛け声が響く中で、俺たちはコソコソと集まった。
「とりあえず、生徒会に話したから……」
「あとは、学園への手続きぐらい?
「ここにいたのか、
男子の叫びが、人目につかない場所に響き渡った。
俺たちが見れば、【
そういえば、いたね!
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