第441話 今こそ室矢家ハーレムの力を見せる時だ
「皆の発言を踏まえたうえで、行動を開始する。俺たちは、東京ネーガル大学の女子大生2人、
集まっている女子たちは、無言で
それを見た俺は、次の話に移る。
「女子大生2人の過去の調査、留学生への事情説明、スナッフムービー(殺人の動画)などの分析、留学生との交流会についての情報収集は……。
独自のネットワークを持つ
「夕花梨さまが、『承知いたしました』って!」
頷いた俺は、東ネの調査を進めるべく、話を進める。
しかし、今は……。
意図せず、日本と世界の異能者の命運を決める、最前線となった。
――WUMレジデンス
「というわけで、お兄様から依頼されました。では、詩央里? 指示を出してください」
私に丸投げしても構いませんが、その場合は、正妻の座をいただきます。
彼女の視線と表情で、その意志が伝わってくる。
夕花梨の式神である
それを渡された
「カレナと、
詩央里の自宅に集まったのは、このレジデンスの責任者にして、
それから、室矢
リビングのソファに座っている南乃詩央里は、室矢家の中でも組織を動かせる女たちを見た。
中高生の年齢だが、そこら辺を歩いている人間を指差すだけで、すぐに破滅させられる面々だ。
詩央里は、彼女たちを見た後で、冷静に告げていく。
「若さまが、主犯である女子大生2人と、
言いながら、詩央里は自分の考えをまとめていく。
「大きな問題は、2つ。女子大生2人の正体を突き止めること、
話を聞いた悠月明夜音は、頷いた。
詩央里は、次の指示を出す。
「留学生については、私たちのコネを活かして、内密に相談します。夕花梨、明夜音、カレナ! あなた達は、誰に連絡できますか?」
「私は、存じ上げません」
「ドイツ大使館を通して、留学生の関係者と話せます」
「ユニオン大使館に、話をするのじゃ!」
レジデンスを見張っているパトカーは、数台の車が入っていく光景を見た。
『千代田2より本部へ。……WUMレジデンス平河1番館に、3台の車両が入りました。どうぞ?』
『本部より千代田2へ。……当該車両について、特徴を知らせよ』
『3台とも、青のナンバープレート。先頭には、「外」の文字があり――』
外交官ナンバーの高級車が、次々に入った。
警視庁の刑事を撃った犯人と関係者は、海外への亡命を考えている。
そう判断した本庁の捜査本部は、外務省に協力を要請した。
――外務省
「
「は、はあ……」
以前に、東アジア連合の傅 明芳(フゥー・ミンファン)と、室矢
課長の命令とあって、断る選択肢はない。
けれども、南乃詩央里に連絡できる仲とは、言えず。
思い返せば、彼女と話していないのだ。
室矢くんに紹介されて、お互いに会釈をしただけ。
むろん、個人的な連絡先は、交換せず。
「彼女たちと接触した外交官に、話を聞いてみます」
皓司は、上司へ返答した。
了承をもらったことで、すぐに外出の準備を進める。
今回の件で、責任を押しつけられそうだ。と感じていても、動くのみ。
宮仕えの辛いところだ。
しかし――
本当に、室矢重遠が刑事を撃ったのか? と疑問に思っている。
わずかに接しただけでも、凶行に及ぶタイプには、見えなかった。
東京の全体で、警察が目の色を変えている。
異能者の団体も……。
「ねえ? 最近、みょーにサツが絡んでくると、思わない?」
「うん。どこに行っても、見張られている感じがする」
何も知らない学生たちですら、電車や街中で不安そうにしている。
外国の勢力までも、絡んできた。
「ココを選んで、良かったのか悪かったのか……」
外交や貿易によって成り立つ日本を支えたく、御省を希望――
牧尾皓司は、面接の志望動機を思い返しつつ、大使館に辿り着いた。
それでも、これは今の自分にしか、できないことだ。
――WUMレジデンス平河1番館
わざわざ来てくれたのは、南乃詩央里が連絡した東アジア連合、悠月明夜音と縁があるドイツ、室矢カレナを貴族と認めているユニオンの3つ。
外交官のナンバーだから、見張っている警察は手を出せず。
彼らは、自分の国を背負っている代理人。
たった30分の話し合いは、少女たちを疲労
自宅のリビングで、ぐったりとソファにもたれた南乃詩央里は、独白する。
「彼らは、交流会に参加するようですね……」
千陣夕花梨と悠月明夜音も、それぞれに発言する。
「ぼかした言い方を逆手に取り、分かったうえで参加するのでしょう。密かに護衛や脱出方法を確保しながら……。3つの国に警告できたことは、大きな成果です。他の参加国にも、この情報は流れると思います」
「不参加でも、異能者を虐殺する連中が日本の中枢にいることは、変わらず……。だから、この機会に見極めるつもりだと思います」
満を持して、室矢カレナが口を開く。
「まだ、室矢家を信用していない。その一言に尽きるのじゃ……。自分だけが貧乏くじを引かされるのは嫌だから、メンツを守りつつも、保険をかける……」
言い終わったカレナは、くすくすと笑い出した。
詩央里たちが見守る中で、彼女は笑顔になる。
「お主ら、今回は面白いものを見られるぞ? いざ実力行使となれば……」
――重遠1人だけで、制圧できる
その意味を理解する前に、カレナは嬉しそうに続ける。
「極限まで追い詰められたことで、あやつも吹っ切れたようじゃ! 今回の原因になった捜査本部の幹部たちは、楽に死なせてやってもいい」
心配になった詩央里は、カレナに尋ねる。
「それでも、若さま1人では――」
「いや。負ける要素はない。1つもな?」
式神の
それなのに、カレナは自信たっぷりに、断言した。
「明夜音! 詩央里から言われたように、女子大生2人の過去を探れ。遅れた場合には、お主のせいで、国が滅びるだろう」
「す、すぐに、指示を出します!」
返事をした明夜音は、レジデンスの地下にある通信室へ走っていった。
通常のスマホ、ネットについては、警察が監視中だ。
リアルタイムで盗聴されている、と考えなくてはいけない。
――不破家の戸建て
『
ブツッと切れたことで、リビングの大型モニターは沈黙した。
女子大生2人、
不破アシーナも、ターゲットの情報を見て、自分の感想を言う。
「何これ? 彼女たち……」
そこで息を呑み、改めて口にする。
「まったく、別人じゃない!?」
妻の叫びを聞いた哲也は、椅子に座ったままで、目の前のモニターを見た。
そこに表示されたデータによれば、東京ネーガル大学の入学時と、現在で、別人と呼ぶほどに違う。
アシーナは、推理していく。
「背乗りで、どこかの諜報員が、戸籍を乗っ取った? 整形? それとも、魔術?」
入学時には、どちらもパッとしない。
ところが、イベサー『フォルニデレ』に入った時は、絶世の美女と呼べるほどの容姿だ。
哲也は、コーヒーを飲んだ後で、アシーナに応じる。
「いずれにせよ、原因を突き止めるぞ? 彼女たちが変わった直前で、怪しい動きを探す」
入れ替わり、変貌のどちらでも、何もないままで変化は、あり得ない。
哲也のプログラムが動き、自動的に絞り込みをスタートした。
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