アナザーストーリー:2周目に導かれし者たち

第四章IF 女子校のオルギアと新たな力

第757話 1人ぼっちの交流会!?

 最初に、説明しておきます。


 これは、重遠しげとおの選択が少し違った場合の、アナザーストーリーに過ぎません。


 また、「本編を完読している」と見なして、詳しい説明を省きます。


 

 「もう1つの可能性」として、ライトに描写します。


 では、ごゆっくり、お楽しみください……。




 ――「第四章 遠き星空の果てから来るもの」の直前



 ベルス女学校の交流会が決まった、タイミング。


 室矢むろや家の食卓は、緊迫した空気に包まれていた。



「カレナは……全く、サポートしないんですか!?」


 南乃みなみの詩央里しおりは、驚いたように、声を上げた。


 ダイニングテーブルについている室矢カレナは、首肯した後で、重遠のほうを向く。


「正直なところ、下手に干渉するほうが、マズい……。詩央里? 改めて、確認するぞ?」


「な、何ですか?」


 カレナは、改まった口調で、言う。


「重遠がベル女で手を出しても、構わんな? ……こやつの生死に関わる話じゃ!」


「ま、まあ……。命がかかっているのなら、多少は」


 しぶしぶ、首を縦に振る詩央里。


 すぐに、言い返す。


「ですが! 手あたり次第という――」

「詩央里の許可は、出たぞ?」


「あ、ああ……」


 困惑した俺は、対面で不貞腐れている詩央里を見た。



 どういうことだ?


 こんな言い方をすれば、詩央里が怒るのは、分かりきったことだろうに……。


 見えないところでヤって、引きずらないのなら、多少は大目に見ます。


 それが、限界だ。



「どーせ、私1人じゃ、満足させられませんよ……グス」


 ほーら!


 詩央里が、ねちゃった!



「それと、お主らが手配している武装一式は、キャンセルしておくように!」



 カレナの宣言で、涙目になっていた詩央里も、顔を上げた。


「え? ま、待ってください! 若さまに、丸腰で行けと!? あそこは他流の本拠地の1つで、何が起きているのかも、不明なのに!!」


「銃が効く相手ではない! 下手に警戒するほうが、危険じゃ……」


 言い終わったカレナは、立ち上がった。


「とりあえず、詩央里の相手をしておけ……」


 俺のほうを見たカレナは、付け加える。


「薄々mmの箱も、不要だ。……あそこはもう、それどころの場所ではなく、お主が助かるかどうか、だけ」


「や、止めましょう! 今からでも、参加を――」

「詩央里! うろたえるな!!」


 怒鳴られた詩央里は、ビクッと、なった。


 いっぽう、カレナは、真剣な雰囲気で、諭す。


「もう遅いのじゃ……。奴は、私たちを知った……。ここで、あえて飛び込まなければ、もっと万全に準備をしたうえ、襲ってくるか、催眠や洗脳といった手段で篭絡するだろう。今が、勝負どころ!」



 ――敵は、ここで叩く!


 

 きっぱりと宣言したカレナは、歩き去った。



「わ、若さま……」


 いつの間にか、寄り添っている詩央里。


 そっと、抱きしめる。




 ――出発の日


「で、では! くれぐれも、気をつけてください!」


 内股で立ったまま、フラフラの詩央里。


 見送りの彼女にキスをした後で、紫苑しおん学園へ。



 私立らしい、大型バスが悠々と移動できる、広い駐車場。


 そこには――


「装甲バス……。同じく、要人護衛の車が、数台か……。たいしたものだ」


 制服越しに風を受け、ボストンバッグを肩に吊るしたまま、ベルス女学校の迎えと思しき、大型バスへ向かう。



 バッグを預けた後で、思わず、言い返す。


「他の参加者がいない? どういう事ですか?」


「申し訳ありません。詳しくは、何も……。予定がありますので、恐れ入りますが」


「ああ、はい……」


 前方の横にある入口から、車内へ。



 中央の通路と、左右に仕切り。


 これは物置ではなく、パーテーションで区切られた座席だ。


 俺の名前が張られた引き戸を開けて、中の快適な椅子に、身を預けた。



『では、出発いたします! 振動に、ご注意ください』


 

 エンジン音が高まり、下のコンクリートと擦れるタイヤの感触。


 窓の視界も、ゆっくりと、動き出した。



 とりあえず、中央の通路との間にある引き戸を閉める。



 紫苑学園の2年、3年の先輩も、自分と同じ学年で、婚約者を見つけるはず。


 それが、2人とも、いきなりの欠席か……。



 言い知れぬ不安を感じた俺は、座席の前方に据え付けられたモニターを見る。


 点滅で催促していたから、1つのアイコンを触った。


『当校の交流会は~』


 退屈な、紹介ビデオだ。


 その後で、“生徒からの挨拶” という画面へ。



 俺が冗談で書いた、お世話係の希望書。


 それに基づいたらしき、金髪碧眼の少女がいる。


 ピッ


『ハーイ♪ 咲良さくらマルグリットです! あなたのお世話係になったから、私がベルス女学校で、案内するわ!』


 とてつもない、巨乳。


 詩央里も許してくれたし、羽目を外しておこうかな?


『楽しみ♪』


 そーだね!


 ……んん?


 まだ、3つほど、生徒の顔写真があるぞ?



『1年の主席、時翼ときつばさ月乃つきのだよ! 咲良がお世話係になったけど、ボクも、君の好みだと思うから……。よろしくね♪』


『2年の主席補佐、雪野ゆきの紗織さおり! 私は、お姉さんだからね? お・ね・え・さ・ん!』


『3年の主席、脇宮わきみや杏奈あんなよ……。今回は、あなた1人に負担をかけて、ごめんなさい。だけど、私もしっかりサポートするから、安心して?』



「どういうことだ?」


 さっきから、同じセリフだな? と思いつつ、独白。


 すると――


 ガララ


「ああ……。今回はイレギュラーだから、不満を出さないよう、君に全学年を回ってもらうの!」


 女子の声が、俺のブースに響いた。

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