第1219話

 スケ3が持っていた武器全ての武装が解除され、新たな武器を装備し直す。そして、両足の足元に腕が出現する。腕に作られたのは氷の魔剣だ。再び降ってくる雨をその魔剣に当て、小さな氷塊に変え婆娑羅に弾いた。濡れているスケ3の体は凍りつき、骨は氷の鎧に覆われた。水が滴りながら凍ったため、小さな氷柱(つらら)ができている。


 足にできた腕には火の短剣が握られており、足ごと凍りつくことを防いでいる。このタイミングで婆娑羅も武装変化だ。雷槍を背負い、マジックバッグから別の槍を取り出そうとしている。そのマジックバッグに手を入れたタイミングだった。スケ3が攻撃をするために走り出したのだった。凍っていく地面に火の短剣を突き刺し、地面を作り出しつつ凍っている地面を溶かす。自分の陣地だけがしっかりと足場になり、滑らないようになっている。


 抜き取ろうとしたタイミングで、足元の短剣から斬撃を出す。その斬撃に火属性がのり氷が溶け、滑ることのない足場が生まれた。斬撃が当たるタイミングで空中に飛んだ。婆娑羅が真上に飛んだことで詰められることは無くなった。スケ3は自分のフィールドを作ることを優先したようだ。斬撃を地面に放ち、水が浮いたタイミングで凍り壁になる。そして、その裏に頭蓋骨を設置していく。


 奇襲を仕掛ける準備ができた。だが、火属性の槍が出てきたことにより、張られた氷は溶かされる。その出された槍は地面に突き立てられ、張られた氷をゆっくりと溶かしていく。地面に突き刺してすぐに背中の槍を取り出し、投げた。壁として張られた氷を砕きつつ、スケ3の方に向かう。槍に対し、スケ3は地面の泥を振り上げそれを凍らせることで槍を巻き込みながら威力を殺す。


 順調な戦いだ。受け止め、視界から婆娑羅が消えているタイミングで、溶けている氷壁の裏にいる頭蓋骨が土魔法を放つ。火属性の槍を引き抜き薙ぎ払い斬撃を出すことで、魔法を破壊したはずだった。スケ3が命令したのは魔法を放つだけではない。地面を狙うことだった。跳ね返る泥で目潰しをしようという算段だった。


 だが、溶けた氷は地面に溶け込み、その後蒸発して消えていた。跳ね返ったのは水分を何も含んでいない土だった。斬撃で数体の頭蓋骨に被害を出しつつ、続けて魔法を放った。今度は水魔法で婆娑羅の足元に水を張るつもりだったのだろう。乾燥した地面に水はよく染み込んでいく。そのため、表面上に泥は発生しにくい状況だ。


 スケ3が攻撃に出るために再び前に進み出す。その時に婆娑羅は、槍に火を付け投げた。だが、スケ3は避け背後の泥の氷塊に刺さり、溶かし出す。地面を溶かすよりも範囲が狭いため、瞬時に泥が混じった氷塊を溶かしきる。


 そして、投げられていた2本の槍が一人でに宙を浮き、スケ3の背後から首にその穂を向ける。婆娑羅の勝ちが確定した。武器や物を扱うタイプのスキルを持っているのだろう。それを使うのが奥の手か?あれは初見殺しだ。仕方がないな。善戦した方だろう。

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