第220話
少し進んだときだった。
「制限解除・・・」
そんなことを呟く声が聞こえる。もちろん俺は戦闘体勢だ。勇者くんと出会うときはいつ攻撃を仕掛けてくるのかがわからないからな。マジックバッグから刀を取り出している。しかも戦闘中は常に刀に魔力を通しており、切れ味も高い。勇者くんは周りに人がいるにも関わらず、俺の方に突っ込んでくるようだ。
せめて奇襲をするのであれば気配や感情を殺せ。あと勇者なんだから、周りに気を遣えよ・・・。刀でその攻撃を受け止める。戦闘態勢でなかった部員たちは打ち合ったときに起こった風のせいで飛ばされてしまう。部長もその中に含まれているようだ。
当事者である勇者くんは、自我がないのか、怒りで我を忘れているのかわからない。周りには人がおらず、俺が狙われる状況になった。めんどくさいがとりあえず武器壊すか。振り下ろしてくる剣に合わせて刀を振るう。自我を失っているため、魔力操作も行われていない。
魔力操作ができなければ、魔力による保護もできないだろう。刀に負け真っ二つに剣が折れる。その剣先は、会場の壁に突き刺さった。その剣を俺の方に投げ飛ばしてくるので、次は縦に真っ二つだ。綺麗に折れたので修理も簡単に済むだろう。
腕を切り落としても、今の俺の回復魔法では治すことができない。そのため武器をマジックバッグにしまい。ガントレットを装備する。気絶するまで殴り合おうじゃないか!!握り拳同士をぶつけ気合を入れる。殴り合った場合、素手とガントレットどちらが勝つのかは明白だ。骨ぐらいは折れても病院に行けで済ますことができる。
原因は勇者くんにあり、俺にはない。注意されても動画という証拠がある。どのみち勝つのは俺だ。勇者くんが殴ってくるのに合わせて、俺も殴りを入れる。ここで掴むわけにも行かない。折るのなら殴った方が早い。魔力操作で頑丈になっている。打ち合ったはずの指は折れており、全てが別の方向に向いている。
だが、また突っ込んできて、殴ってくる。これ以上折ることになると、その後の過剰防衛という4文字が頭に浮かぶ。こんなのに対して慰謝料を払うのも嫌だしな・・・。わざわざ、魔法を禁止してまで戦っているのに、意識はないしめんどくさいわ。
殴る手を弾くことで防御ついでにスタミナを削る。
「化け物かよ・・・」
怪我をしているのに突っ込んでくるその狂気に俺まで飲まれてしまいそうだ。殴られた手を避け、腕を掴み地面に背負い投げる。カハッと言いながら唾を吐くが、まだ気絶はしていないようだ。掴む位置を胸ぐらに変え、誰もいない壁に投げつける。
ヒビが入っているが、その前に部長のこめかみに当てている手に気が付く。それは修理費だろうな・・・突っ込んでくる際の踏み込みで割れた地面。そして、その攻撃を受けた際の重さに耐えきれず割れた地面やガラス。そして、背負い投げの時に体重や力を入れすぎて割れてしまった。もちろん最後の投げもだ。
壁に当たったことで気絶をしたようだ、これにて一件落着。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます