第1037話

 王子の方はベットで横になっているようだ。壁にもたれかかって寝ればいいか。王子が学校に行くタイミングで俺も一緒に外に出るのは確実だ。起きれるかな?鍵閉めとかもあるから、もし寝坊をすると帰宅を待つことになりそうだ。


 イヤフォンをつけながらダンジョン動画を漁る。面白いものを見つけた。あの結婚式用の黒いタキシードを執事服に見立てている人がいた。もちろん相方はゴスロリを着ているお嬢様だ。呼び方もお嬢様と言っており、本名が広がることを防いでいるようだ。


 執事の戦闘スタイルは、近接のアサシン型だ。となればお嬢様は?そう、ゴリゴリのバーサーカーだ。自身の丈をこえる大剣を振り回し、叩き潰していくような戦闘スタイルだった。執事の人は老け顔の人を採用したのだろう。少し草臥れている人が執事役になっている。


「何見てるの?」


 そう言いながら王子がスマホを覗き込んでくる。特にやましいものもないから覗き込みを受け入れた。


「この人ね」


 ここに来いと言わんばかりに、ベットを叩く。布団を巻きそれを隅におくことで、簡易的なクッションになる。そして、テレビをつけその動画を投稿しているサイトに切り替えている。


「画面は大きくないとね!」


 その戦闘シーン集を集めたものを見ている。猫背になり前屈みになった瞬間に布団を取り出し、それに抱きつく形で寝始めた。寝たことを確認し、テレビを消し乗っていたベットから退く。俺に渡されているのは毛布だが、絶対こんな寝方をしているから風邪を引くのだろう。その毛布を上から被せた。


 起こさないように小さい勉強用のライトを付け、大きな照明の電気を落とした。真っ暗な空間に灯りが1つだけある。人の家にいると寝にくい・・・。目が爛々に輝いているようだ。目を閉じても眠れそうにないため、スマホでその配信をつける。イヤフォンを取りにいくことがめんどくさいため、少しスピーカーでその動画を見ていた。


 白狼を召喚し、その毛を毛布がわりに埋もれている。その温かさにうとうとしてき、気がついた時にはもう朝になっている。両手を上に上げると、肩あたりの骨がぼきぼきと鳴っている。そして、腰の方も鳴らして完全復活だ。白狼の頭を撫でてから、召喚を取り消す。


 スマホの時間は午前6時を指している。早く寝たのだから、早く起きるのは別にいい。いつもの睡眠時間を確保できているのなら大丈夫だ。寝たい気持ちもあるが、今寝てしまうと次起きるのは昼前くらいになってしまうだろう。


 ここはしっかり起きておかないとな・・・。王子がいるはずのベットは膨らんでいることから、まだ寝ているのだろう。起こさないように忍び差し足で、洗面所に行き顔を洗う。マジックバッグから、パンとペットボトルのコーヒーを取り出し、そのセットを食べながら王子が起きるのを待つ。


 もうすぐ7時だ。そろそろ起こすか?時間割も知らないし、1限だった時には遅刻が確定してしまうだろう。


「おーい起きろー」


 そう言いながら布団をゆする。


「あと50分ー。」


 いつもの元気そうな声とは違い、グダーっとしている声だ。おそらく寝ぼけているのだろう。元々真面目な部類のはずだ。単位も余裕だろう。なら大丈夫そうか?スマホのタイマーがなる。そのスマホを充電から急いで引き抜き、届かないところまで持ち上げる。起きなければ、このアラームを止めることができない。渋々と起きてくる。


「顔洗ってきなー」

「ママ、わかってるよ」


 まだ寝ぼけてるな・・・。顔を洗って目が覚めたようだ。


「おはようございます」

「お、おはよう」


 急なテンションの上がり方に驚いてしまった。


「時間大丈夫そう?」

「まだまだ余裕ですね。朝ごはんは食べましたか?」

「食べたから大丈夫だよ」


 朝ごはんを作っておくべきだったか?食パンをトースターに入れていた。


「ちょっと外にいるよ。終わったら教えて」


 着替えがあるだろうから、少し扉裏で待つことになるだろう。冷えた廊下を歩きその場でしゃがみ込み、スマホを触り着替え終わるのを待つ。終わったようだ。バタバタと忙しそうに動いている。洗濯物も溜まっているようだから、この辺りでお暇しようかな?


「帰っても大丈夫そう?」

「そうですね。ありがとうございました。そういえば師匠は今日大学は」


「休みだよ」

「え、ずるい」

「じゃーねー」

 家までのんびりと歩いて帰る。あまり疲れが取れなかったな・・・今日はダンジョンに行かずに家で大人しく寝るか。その昼寝から目が覚めた時には当たりは少し暗くなり始めた頃だった。昼夜逆転したかと思ったが夜も問題なく寝ることができたため、特に問題はなかった。

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