第935話

 というか、ここに購入者がいるのかよ・・・。俺が実験した時よりも威力が上がっていることを見ると、爆発物にバフがかかるようなスキルを持っているのだろう。威力が4倍ほどに膨れ上がっている。どんなバフを積めば、これぐらいの威力になるのだろうか?


 そんなオークは入り口付近にいる魔法を使うゴブリンを薙ぎ倒し、その上を通過していく。体重の重さに体が耐えることができずにメシメシと音をたて、死んだようだ。これで魔法を使う部隊は少々減った。


 だが、殺したことでステータスのバフを得たようだ。時間制限以内に殺していくことでバフが足されていくタイプのものだろう。通常の出てきたオークには、スナイパーライフルで殺すことができた。だが、バフを手に入れたオークは殺すことができなかった。


 入り口が1箇所で助かる。これでもし複数の入り口があるときには中心に寄せられるという地獄の空間になっていただろう。と言うか、こいつら殺すことに躊躇いがなかったな・・・。オークが通るための道が切り開かれる。


 こんなのがボスのわけない。違う奴がボスになっているのだろう。やっとオークがきたということは順番で言えば魔法かナイト個体かのどちらかが次にやってくるのだろう。出てくるモンスターを全て殺し切るその間に下が耐えることができるのかが問題になるだろう。


 順当に進化をしたと考えると、他のダンジョンでいうところの15階層あたりか?オークのリーダー個体がいることから考えるとこの辺りが妥当だな。このオークの戦闘スタイルは個人主義ではなく、団体主義のようだ。


 半分ほどのゴブリンやコボルトが殺された時だった。オークが前衛部隊とぶつかる。次のモンスターは、ウルフゴブリンだ。狼に乗っているゴブリンだ。役割は遊撃だ。オークがいることで前衛が成り立っている。殺すために動かすのなら、遊撃や魔法系を出すのが1番だろう。


 赤い目をしているのは狼だけだ。狼を殺すことができれば、残りはただのゴブリンということになる。ここのゴブリンは小さい個体からリーダー個体まで様々だ。最初からこの部隊を作ることは決まっていたようだ。


 騎乗系の職業を持っている人も少ない。持っている全員を使わなければならなかったのだろう。レベル差があるため、言うことを聞いていないように感じる。そろそろ潮時かな?引き際が大切だ。他に人が来ないということは見捨てられているということなのだろう。どんどん壁際まで押されていく。


 狼なら簡単に殺すことができる。血の匂いで興奮しているのか攻撃方法が単純だ。結界系で封印してくれればいいけどなー。入り口付近に車が多く止まっている。どうやら人がやってきたようだ。おそらく避難は完了しているのだろう。


 手助けかー。これでやっと心置きなく逃げることができる。そう思っていた。会場全体に結界が貼られた。薄く、1回の攻撃で壊れてしまいそうなものだ。脱出しようとしていたものが帰ってきたようだ。ちょうど結界が張られたタイミングだ。そうなっても仕方がないだろう。


「見えない壁で外に出れない。俺たちは見捨てられたんだ・・・」


 そう言いながら絶望の特攻を開始していた。空中も覆われており、飛行生物がいても外に出れないようにしているようだ。おかげで脱出の瞬間を間違えてしまったようだ。そして、出てきたのはジャイアントバットだ。でかい蝙蝠だ。食べることができないのだから、ドロップはその血とかだろう。


 飛行生物の相手は俺になるだろうなー。唯一無二の利点である空中に人がいるのなら真っ先に狙われるのが当然だ。魔術師を召喚しその対処を任せる。薄かった1枚の結界は、2重3重と重ねが消されていく。壊してすぐに脱出することは不可能になってしまった。


 破壊はできるが、その後の戦闘が不可能になってしまうだろう。それなら破壊しないほうが得策だ。今からデスゲームを開始してもらいます。そう言われた気分だ。

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