第408話

 だが、ラッキーだ。多く一気に現れてきてくれたことで、範囲魔法を使うことの躊躇いが消える。今夜は刺身パーティー確定だ。


「ストーム」


 3個発動だ。それが時計回りに回り出し、現れてきた半魚人を燃やし出す。焼かれるとその体を海に沈め、それが過ぎ去るのを待つ。だが、それは俺の魔力が尽きるまで繰り返される。


 海水が蒸発する。そして周りから押し寄せてきても範囲魔法によってすぐに蒸発され、補充もされない。そのツヤツヤだった皮膚は蒸発しカラカラになってきている。台風の目のように中心に近い部分だけわずかながらに水が残る。


 それを取り合う形で喧嘩し始めた。その白く艶やかだった肌は、中まであったはずの半魚人の返り血で赤く染まる。そして、進化をし始めた。あの細くしなやかであったはずの肌は、筋肉によって膨れ上がり、うっすらと毛が生えている。


 そして、魚の口だったところは牙と髭が生え、その眼光はぎらついており、今にも襲ってきそうなほどだ。どんな進化をしたのか、魔法への耐性?それとも乾燥への耐性?


 まだ魔法を継続させているが、どんどんその皮膚は瑞々しさを失っていく。乾燥への耐性はなかったようだ。あともう1つ進化がいるようだな。どんまい。


 顔を振り、髭での衝撃波の攻撃も行ってきた。刀での斬撃と似たような感じか?安全なところに騎士を召喚し戦闘が始まる。殴り合いだ。だが、騎士の方が部がある。


 まだその肉体に慣れていないようだ。動きに無駄が多く、バランスも取れていない。早期決着がいいな。俺も手を出すか。皮膚が乾燥しているなら刀を出しても問題ないな。滑りを気にしなくていい。それなら本気で行かしてもらう。


 騎士と俺でそいつの左右を挟む形での攻撃だ。そしてさっきから俺がいた上空には分身体を出し、そいつが魔法を打ち出す。真っ先に殺すべき対象を俺だと判断したみたいだ。俺に対しての殺意をとてつもなく感じる。


 騎士なら、防御力があるので後から方向を変えても問題はない。一番気をつけなければいけないのは俺が真っ先に死ぬことだ。もっと惹きつける。もっとだ。ギリギリまで引きつけろ。


 今。分身体と交代する。腹を半魚人の腕が貫き破壊される。そこにファイヤーランスが大量に降り注ぐ。魔力が切れたやつから消えていく。


「やったか?」


 そんな死亡フラグを立てる分身体がいた。バグ個体のようだ。さっさと消えてもらいたい。両腕を失いながら立っていた。要するに生きていたのだ。俺を見つけることができず、一番最初に目に入った騎士に攻撃を仕掛ける。


 回し蹴りだ。それを左腕と右手で受け止め左に払う。体の重心が前にずれたことで、その体も前に動き出す。そこを左手で心臓を抉り出した。

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