第932話

 魔力の雨から、魔力を抽出する。透明に変わった液体が地面にこぼれ落ち、黒く細長い針が破壊神めがけて落下を開始する。刺さった状態で拘束をすればいい。そう判断した。もう死んでしまってもいいだろう。ここまで意識が戻らないとか、死体を強制的に動かされているだろ。


 刺さったところから地面ごとひっくり返し、破壊神の方に土をかぶせた。そこから頭を出すのは、ダンジョンの入り口だ。その土が捲れた瞬間宙に飛び上がり、ステージの中心に聳え立った。抉られていたはずの土は宙に浮いているが、地面としては復活している。ダンジョンの効果のようなものだろう。


 夜遅かったため、出現する瞬間を見た人はあまりいない。だが、地震後から発生したことを考えると、地面から現れたことになる。その空いている隙間はダンジョンの効果で修復されていたのだろう。この出来事でそれが確定事項となった。


 埋まっており、封がされていたダンジョンの入口が解放されてしまった。上に出るための障害物がなくなり、完全に出てきてしまった。地中にダンジョンが埋まっていることなんて、ここ十数年間で1度もなかったことだ。戸惑いというよりかは困惑が勝っている。


 十数年!?察した人は皆避難を開始したようだ。まだ察することができない人は取り残されている。氾濫することが封印され、上の方に上がってきたモンスターがすること。それは共食いや同志討ちだ。出てくるモンスターは、その強力なモンスターの支配下やその共食いの結果強化されたモンスターだろう。ダンジョンの扉が開き始めた。さらにゆっくりと開く、まるで今まで封印されてきた怒りをここで発散させるようにだ。


 完全に開ききった時にはここにいる人間が皆死ぬことになる。死を支配しているのはこっち(ダンジョン)側だ。と言わんばかりだ。その門がゆっくりと開き完全に解放されてしまった。その十数年蓄えられた魔物が氾濫を開始する。空中にいるため、あまり関係はない。そのため、じっくりとモンスターを観察することができる。いつもよりも凶暴化が激しいような気がする。


 目が赤く光っており、狂気に支配されているようだ。血を求めた獣のごとく動き回ろうとしている。ダメだな・・・。土操作で殲滅をしようとしていたが、することができない。どうやらダンジョンが出たタイミングで地面の土にある俺の魔力はダンジョンのものに上書きされてしまったようだ。


 タイミング悪く破壊神の凶暴化が解かれる。人間の部分に少しだけ、動物の要素が追加された程度の変身だった。あと少しで勝てていたのか・・・。それよりもほんと、何してくれてんの。活躍するならこのタイミングだろ・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る