第906話

 ステータス確認と簡単な戦力調査が終わり、家に帰る。その時にニュースを見ていると気になるものが取り上げられている。それは探索者の間に生まれた子供は?というタイトルだった。ダンジョンが現れてから、16年ぐらいだ。早ければ、もうダンジョンに行っていてもおかしくはない歳だ。


 大体規制されるのが1〜3年だった(日本は3年)。そのことから考えてニュースの舞台になっているのは海外だろう。おそらく、1年目以内でダンジョンを解放した国の人たちのことだ。そして、ダンジョンに潜ってステータスを手に入れてすぐに子供を産んだ人のことだろう。


 そのニュースが報道された。しかも2組いるようだ。1組目はどちらもダンジョンに潜った人、もう1組は片方がダンジョンに潜っていた人だ。まずは、ステータスだ。どちらもそう変わらず数値的には1とか、そんな小さな差が生まれている。


 子供の時に何をしたのかの差と考えると、その差は当たり前のように感じる。最初の職業も大差はない。どちらも最下級職業だ。レベルの上がるスピードも上がるステータスの量も他の人と差がない。


 じゃあ、特に考えずに子供を産んでも問題がないのでは?そう思われていた。だが、レベルが20になった時にその差が大きくなった。1組目のどちらもダンジョンに潜った人の子供は、選択できる職業の幅が広い。どうやら、その時親が取ることができる職業から半分ずつほどだろう。選択できるようになっていただのだった。


 なら、対する父方がダンジョンに行っていたグループは選択できる職業は全て父親と同じになるだろう。誰もがそう思っていた。だが、父親にはダンジョンの才能がなく、取れる職業は数個の戦闘職と半分以上を占める生産職だった。


 ダンジョン2世代の職業は親が持っている職業に左右されることが判明された瞬間だ。強い人は強い人同士で結婚し、弱い奴は弱い奴同士で結婚しろ。そんな感じのことを言われているようなものだ。美人やイケメンはよりどりみどりだが、フツメンであればそれ以下の人を選ぶことしかできない。


 そんな感じのことを教えられているように思えた。ただ何個かは、親が持っていない職業があったことから救いはあるようだ。運だな。そのことが公になった。ただ情報量が少ないため、これが正しいかどうかの判断はできない。


 今のユニークがなくなれば、その職業は消えることになる。そう1番の問題は勇者の消失だ。もし勇者が子供を作らなければ勇者という職業は消えることになる。仮に勇者の子供が皆勇者になる。とするならば、その子供が結婚すれば勇者が増えることになる。まるで絶滅危惧種のような扱いになるが仕方がない。


 だが、勇者のがずが増えないように、勇者の職業を受け継ぐのは、勇者の子供のうち1人だけだ。とされてしまうと、もう勇者は増えないことの証明になるだろう。しかも、勇者が増えないのなら、あの国は勇者を外に出さないようにする。


 勇者を殺してしまったことの大きさに気がついてしまったようだ。もう自国に勇者が現れることはない。勇者が現れたのは、その国に生まれたランダムな子供だった。そのことから、勇者が死ねば、自国に現れるだろう。そう判断していたようだ。


 もちろん仮説なため反対する人もいたが、国家反逆罪の勇者の擁護をするとなれば、そいつも反逆者だと思われ処刑される。多くの国は勇者が現れないようにするという戦犯すぎる行動をとってしまったのだった。

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