第34話

 決勝が始まる。




 勇者君が出てきた途端。キャーと黄色い声援が上がる。部長よりは少ないが多いものだ。俺が出てきた時には静まっている。まるで、戦争が始まる前のような静寂さだ。




 さて勇者君の表情は何やら怒っているようだ。どうせわざと殺そうとしたとか思い込んでそうだ。観客の方では「光君勝ってー」と声援が聞こえる。本気を出すならば、勇者君を殺してしまいそうだ。そのため手を抜いているのだが、なんでこんなに弱い?ダンジョンも一つ上の4階まで行っているのに。




 俺なんかは一つ下だ。なのになんでだ?やはり大人数で潜っていると、自分の能力が弱くなっているようだ。最初から一人だった俺は勝ち組だったようだ。




 さて試合が始まる。最初は勇者君が突撃してきた。剣を水平に振りかざす、それは予想ができていたのでバックステップで避ける。そのまま切り返して真上からの振り下ろしだ。短剣に気力を通すことで、固くなり壊れにくくなる。それを使うことで少し横に流し、自分は半歩横に移動することで、回避する。




 地面に直撃をした剣はそのまま土煙を上げる。これではどのように行動するのかが見えない。そのため、少しバックステップで下がり様子を見る。




 魔力が高まっているのがわかる。急いで回避をとった。予備動作がわかっていたので余裕で回避をすることができたが、当たっていれば無傷ではいられなかっただろう。魔法を使ってくるのであればこちらも魔法だ。




 お返しとばかりにウィンドジャベリンを繰り出す。魔法職20レベほどのステータス+αだ。魔力的にもこちらの方が強い。連射する。そのせいで砂埃がたち勇者君の位置がわからない。近づいてくる気配を感じる。しかも後ろからだ。振り下ろしてくるようだ。さらに「はあっー」っと声を上げている。なぜ奇襲をするのに声を上げる。本当に意味がわからない。




 何かわかることがあるかなと思い、魔力操作や気力操作でのステータス上げを行わずに戦っていたが、何も感じることができない。どちらかというとタンク君との方が楽しかった。魔法の威力がわかったという学びがあった。だが、この勇者君はどうだろうか?全く学べることがない。




 どちらかというと死ぬような思いをせずに楽しくダンジョンに行っている。そんなような気がしてなんか今日の中で一番イラついてくる。なんか勇者一行もそうだし、ムカつく人が多すぎやしないか?




 こんな茶番をすぐに終わらせる。アースジャベリンを上の方に作る。それをつき刺すように落としていく。さらにその隙に横からはアースバレットだ。死なないように、頭の部分は丸くしてある。




 死にはしないが気絶ぐらいはするだろう。




 案の上気絶をしていた。しょうもない茶番だ。今は勇者君に注目が行っている。今のうちに気配を殺して、家に帰るか、幸い部長からの事前メールで終わると帰ってもいいと言われていたので問題ない。




 明日からの学校で浮かなければいいなー。気分が悪いので家に帰ります。とだけメールをし、家に帰る。

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