第939話

 先に攻撃をしていなくてよかった。もし攻撃をしていると、魔力変化で作った刃が壊れている可能性があった。気力強化による物理スタイルに切り替える。足元にシールドを出し、それに飛び跳ねながら移動することで撹乱する。


 壁走りの応用、無限壁ジャンだ。分身体を出しながら、同じことを入れ替わり行う。どれが本物かわからなくなっているだろう。横から背後に回り込み、8連斬のアーツを発動させる。当たった。だが盾で防がれることを警戒していたため、魔力強化をしていなかった。純粋な切れ味と気力強化によるステータスのバフだけの攻撃だ。鎧に切り傷が入っただけで、本体に大きな怪我が入っていない。


 オークはシールドバッシュをするために後ろに振り替えるが、既に分身体と入れ替わっている。背中が向いたということは、魔力強化が可能になったということだ。オークが分身体にシールドバッシュをしている。チャンスだ。刀と体に魔力を込め、瞬間的なスピードを上げる。刀を抜き、刀を鞘に戻した。


 アーツを使わずに行う4連撃だ。少し魔力強化が強すぎたため、腕が痺れている。だが、背中や首元に深い傷が入り倒れ込む。時間経過で死ぬだろう。これで魔法使いを相手にすることができる。と思っていたが、斧を持ったオークがやってくる。分身体はもう死んでいるため、入れ替わることもできない。


 さらに黒オークがチラッとこっちを見ていた。俺に対する警戒度が少し上がっているようだ。騎士が相手にしているのは大剣を持ったオークだ。今前衛にいるのはこの2体のオークだけだ。殴り屋スタイルの騎士にはきついだろうな・・・。発勁ぐらいしか攻撃が通らないはずだ。殴っても鎧の表面だけ傷つくため、攻撃にならない。


 さらに大剣の重さが厄介で振り回しただけでも、その攻撃に当たるだけで距離を空けられたりする。距離を詰めたい騎士にとっては相手にしたくないモンスターの代表だろう。斧の振り下ろしをバックステップで避けた時だ。ほぼ瀕死になっているオークの首根っこを掴み後衛に向かって投げ飛ばす。


 魔法使いに対しては一斉に魔法を放つことでその死体に魔法を撃たれないようにしている。そして、その死体をヒーラーがキャッチした。さすがはガタイがしっかりしているオークだ。受け止めた時にふらつくことや、倒れ込むことはない。受け止めた状態で、地面にゆっくりと下ろし回復を開始する。


 時間経過で死ぬのが確実になったため後回しにしていた。回復されると戦線復帰をするだろう。しっかりと殺しておくべきだったな・・・。

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