第873話

 水曜日の近接戦闘の時間だ。しっかりと準備運動をし、悪魔との戦闘だ。前回と違う戦闘スタイルだ。前回のように空中に上がってから攻撃を仕掛けてくることはない。地面を歩くようにして、近づいてくる。その手に持っている武器は、片手剣の形をしている。


 そして、振り下ろされる。刀と剣がぶつかろうとしていた時だ。その剣とは打ち合ってはダメだ。そう警告されたような気がする。その勘に応えるように攻撃を打ち合うように防ぐのではなく斬撃に切り替え弾く。一瞬剣がえぐれたように見えたが気のせいだったようだ。


 悪魔の顔がバレたのか?そう思いながら驚いた表情をしてたのだが、一瞬でその表情はいつもの顔に戻る。そしてニヤリと笑みを浮かべている。よく防いだ。と言われているような顔でムカつく・・・。


 打ち合った時に新しい攻撃方法をつけていたのだろう。あり得るなら武器を奪取する方法だ。スライム金属を持っている武器に纏わせることで、その武器の特徴を消すことができる。そんな戦い方だろう。俺の場合は刀の鋭さを殺すために刃に纏わせるとかそんな感じだ。


 腕に垂れてくると、何かあってはならない。そう考え武器から手を離してしまうだろう。さらにスライム金属は一応金属の部類だ。固まればその硬さは金属のようになる。槍のような武器でも木のしなやかさを殺すことができる。


 ・・・恐ろしいな。そして、武器が使えなくなり無力化されたモンスターを仲間の魔法で殺したり、自身で殺したりか・・・。抉れたように見えたのは、刀を覆うために液体化させていたのだろう。最近身につけた戦闘方法なのだろう。まだぎこちない。


 斬撃で時間を稼ぐか?いやそれだと時間が過ぎても戦闘が終わることはない。そのまま続け様に攻撃を仕掛けられ、なし崩しに休憩時間を潰されるだけだ。その前に終わらせる。


 攻撃として近づかれると斬撃を放ち受け止めている間に距離を空ける。この作業をしながら時間を稼いでいたが、戦闘スタイルを変える。攻撃に移動する。近づく時に口をわずかに開け、そこから魔力形質変化で作った針を飛ばす。


 暗殺者でこんな技を使う奴がいたはずだ。真っ直ぐにしか飛ばないことはもうバレているようだ。だがそれを防ぐことで、視界が完全に死ぬ。取った。そう思い刀を縦に振る。だが、その攻撃を受け止められた。金属の棒にぶつかったとも思えない。


 水のようなものに当たったような感じだ。瞬時に刀から手を離し、体を後ろに逸らすことでその攻撃から避ける。あの状態からバックステップを警戒し、伸ばしていた。もしバックステップをしていればそこで決着が付いてただろう。


 慌てて避けたため、後ろに体重がかかり倒れそうになる。その勢いを使い、地面に手をつきバク宙の体勢になる。そしてバク宙をしながら蹴りを入れる。今度は硬いものを蹴った。しかも蹴った位置が悪く。勢いが完全に殺されてしまう。


 バク宙が失敗だ。どうやらスライム金属の防御が間に合ったようだ。そのまま、脚に輪っかになるように掴まれ、持ち上げられる。そして地面に叩きつけるために振り上げた時だ。発勁でそのスライム金属を破壊し、魔力を流し込み片手剣に作り替える。


 刀を手放したからな・・・。なんとしてでも武器が欲しかった。マジックバッグも置いてきているため、武器なしで戦うとか、負けを認めたようなものだ。どっちから攻撃を仕掛けようかと睨み合っている時だった。10分経過のチャイムがなる。どうやら、終わったようだ。


 睨み合うだけで、勝負が発展しない。そのことにどちらも気がついているのか、武器を捨て終了を促す。両方とも同じことを思っていたようだ。あのままだと決着は付きにくいからな・・・。もし終わらなければ、負けていただろう。殺しありであれば、最初の刀で打ち合った時点で負けていただろうな・・・。


 針のようにスライム金属を伸ばすことで、武器を振ることができないように腕に対して確実にダメージを与えることができる。足技の練習がいるな・・・。避けるのか、攻撃をするのかをはっきりさせておかないとさっきみたいな中途半端な攻撃になってしまう。


 いやあれは魔力で刃の形を作って受け止めても、切り落としてもよかったな。反省点がいくらでも出てきてしまう。その分強くなれるのだからありがたいことか。

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