第872話
その完成したやつはまだ使わない。使ったとしても火曜の授業後ぐらいだろ。まあ、風魔法だ。外で使えば、ある程度の強さを持った風が起きるだけでバレることはない。ウィンドボールで怪我をすることはあっても死ぬことはないからな。周りに気を使っていれば何も事件なんて起きるはずがない。
無難に授業後に魔法を使うところに行ってこのスクロールを使えばいいだろう。と、火曜日の銃を使う授業にやってきた。前の時には騒がしかったグループが大人しくなっている。1人の男が姿を消しているようだ。一番の盛り上げを担当しているようなやつだった。
それがいなくなるだけでこれほど静かになるとはな・・・。授業のチャイムがなる寸前に先生はやってきた。そして、口を開く。
「あー、先週の怪我はなかったか?なければいい。俺の給料に関係してしまうから仕方がないことだ。管理しているやつがミスしていた。昨日と比べてここにいなくなっているやつは、銃関係の職業を持っていなかったそれだけだ。監督不足を謝罪しておく。すまなかった」
そう言いながら頭を下げる。
「そいつのことは本当は内緒だが、当事者だからな・・・。一応言っておこう。良くて退学になる。それほど職業詐称はダメだ。外に出てもダメなのだから、この大学でもダメだ。一番ひどい時には、罰金と退学のセットだな。授業を再開する!」
授業の開始の挨拶をし、元の場所に戻っていく。あの人は、本当に持っていなかったようだ。どうして嘘をついたのかは大体予想はできる。数人グループで孤立してしまうからだろう。あの人たちが1年か2年かは知らないが、元から仲がよかっただろう。
1年だとすれば高校からか、2年なら1年の時から仲がよかったかのどちらかだ。高校の時であれば、クラスが一緒であれば授業も同じだ。そのことに会話をすればいい。そして、この大学でも自分のやりたいことを、押し殺し相手に合わせようとすることで会話について行こうとする。
それが原因だ。何を話そうとしても、共通のことだけを話すようになっていた。そのため、1人になればその話からハブられてしまうことになる。そう思ったから、黙って職業を偽り参加をしたのだろう。
そんなどうでも良いことより、銃系の職業の補正ってなんだろうか?初めて使う武器の制御能力アップとかだろう。それか銃の暴走を防ぐとかそんな感じの効果だ。この2つのどちらかだ。最初に銃を持って、撃った時なんかはその反動が腕にズンとくる。それを慣れさせていくことが重要になる。
静かになったことで、銃を打つときも外野の騒がしい声がヘッドフォン越しに聞こえてくることはない。集中でき、周りには誰もいないような空間になっているように感じる。心地良いテンポ感で放たれる銃声、それがたまらなく良い。
そして、授業が終わり帰ろうとしていた時だった。後ろを少し大きめの影が通り過ぎていく。後ろを振り返ると、結構大きめの人がいた。大体176ぐらいか・・・。彼氏だろう。関わらないようにしようとしていた。
「もう、終わり?一緒に行こう!」
その声を聞いた瞬間驚いてしまった。声は低いが図太くなく、か細い?なんというか女性的な声だった。後ろ姿でしか見ていなかったが、正面を見ればこいつが女だということがわかる。出口付近では、なんだか女子の人だかりができている。こいつが王子様とか言われていた存在か?
王子様?よくわからん。さっさと帰るか。面倒だし関わってはいけない相手だろう。振り返ろうとしてた時だった。・・・最悪目があった。
「友達?」
そう言いながら、隣で片付けをしている女子に話しかけている。友達じゃないのでさっさと帰らせてくださーい。そう思いながら、急いで適当にマジックバッグの中にぶち込んでいく。急いで入れているが、家で整理すれば良いだろう。
「んー、違うと思う」
よし、これで帰れる。そうホッとした。だが目の前に入ってき、行手を阻んできた。そんなの予想通りだ。シールドを使い、空中を移動しながら出口を目指す。間一髪だ。もし、行く手を阻まれたときに判断が遅ければ掴まれていただろう。狭いため、そんなにスピードを出すことができなかった。
何より行き先が1箇所しかないのがダメだ。そこに行くための最短ルートを防がれると、少し遠回りをしてから向かうことになる。それが掴まれそうになる原因だった。出てからも俺を追いかけようとしていた。だが、その入り口に集まっているのは、あの王子様のファンクラブとかの人だろう。
その人がちょうど王子様の通り道を塞ぐ。その集団の上を通ることで、脱出することに成功した。反射神経と瞬発力に特化したような人間だな。捕まれそうになるなんて久しぶりだ。ただ、精神的に疲れた。
スクロールのテストは今度行うことにするか・・・。明日は悪魔と戦うことになる。明日も絶対にスクロールのテストはできない。なら、木曜日だな。
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