第874話

 足技を使おうとする。その心意気はまだよかった。だが、刀と足技の相性は最悪だ。武器を何もつけていない格闘家が足技を使うのならわかる。刀を使う人が足技を使うのは少し違うように思えてくる。やるとしても踵落としや、やくざキック、膝蹴りだ。


 片足でバランスを取ることが多くなる。刀を鞘に入れた状態でする方が良さそうだ。そう判断し、刀が奪われた時や、破壊された時にそんな行動をとるように考える。ちょうど刀を奪うような存在が目の前にいるのだから、それを活用していくか。


「足技どう?」


 そう悪魔に話しかけ、聞いてみる。

「傷つかない?・・・ひどいよ。戦闘で入れるレベルではないかな?」


 おそらく、言葉を選んでも出てきた言葉がそれだったようだ。・・・救いようがないのか。蹴り技を退けてそのまま戦闘をし、次の休憩時間に入る。水魔法で軽く水分補給をした。その足で少し離れたところに歩き、騎士を召喚する。次の戦闘開始時間までの間、蹴り技の練習台になってもらおう。


 騎士の横腹当たりに回し蹴りを入れたが、簡単に防がれてしまう。足元も全く動いていないことから、威力が足りないのだろう。やくざキックも足首を掴まれることで無効化される。踵落としなんかは相手がバランスを崩している時以外は使い道がない。


 もしかして足技ってハズレ?鍛えれば使えるようになるが、それを多用している人なんて見たことない。殴りとか武器ならよく使う人が多い。だが、蹴り技を使う人はいないな・・・。行動する範囲を絞られるからか?


 攻撃範囲という面では、殴るよりも優れている。だが、受け止められた時や避けられた時の防御手段がなくなることが問題か。片足で攻撃を避けるとかやりにくいもんな・・・。足は全ての面が地面についていることから瞬時に体を動かすことができない。反対に避けることに集中していると、攻撃力が落ちる。


 それ以前にカウンターに対して弱くないか?カウンターをされて足でも怪我をすると、それ以降の攻撃を全て受けることになる。足技の良いところって攻撃範囲ってだけだよな?デメリット多過ぎない?よし、足技やめよう。


 持っている武器次第では組み込んで良いとは思う。だが、刀の時は絶対に使わない。そう決めた。腹当たりではなく、頭を蹴ることができれば役には立つだろう。だが、身長が足りないため、頑張っても胸あたりが限界となっている。(普通に体が硬いため、足が上がっていないのもある)諦めて休憩するために元の場所に戻っていく。


「さっきの誰?」


 そう言いながらキラキラした目で俺を見てくる。


「召喚獣だけど?言ってなかった?」

 言ってなかった?見せたような気がしたから召喚した。


「言われてないよ」

「マジかよ・・・」


 戦力の一部を見せてしまった。

「どんなステータスをしているの?」


 なぜか深掘りをしてくる。そのまま、深掘りとかせずに忘れていてくれればよかったのに・・・。


「内緒ー。易々と教えるわけないだろ」

「勝てば教えてね」


 俺に取って不利すぎるルールを付与してきた。時間よ過ぎ去れー。と思いながら時計を見たが30分も残っている。・・・終わりだ。この戦闘からは逃れることができない。逃げるコマンドがあれば、即それを選択していただろう。


 そのコマンドを押したところで成功するのかもわからない。しかし回り込まれてしまった。みたいなテロップが出てくるのだろう。そして今のように先制攻撃をされるのだろう。・・・首根っこを掴まれ、戦場に引き摺り出されている。


 時間一杯まで逃げ切るか?脳内会議の結果、そっちの方が危ないと判決が出た。戦うしかないようだ。

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