第1224話

 吹き上げられた土が地面に落下していく。魔力切れだ。回転していたはずの風属性の槍は威力を無くし、地面に倒れている。騎士の自由落下が始まった。4本の槍が騎士の方に飛ばされた。魔力を節約するために1本しか魔力を込めておらず、その属性は闇属性だった。当てて神経系をやりたいのだろう。


 騎士はその属性だけを警戒している。飛んでいる最中、槍を掴み攻撃を封じた。だが、残っていた2本の槍は騎士の体に刺さる。1本は首を狙ったものだった。殺してでも勝つという気持ちだろう。それもあるが、死ぬことを避けるには必ず避ける必要がある。そのため、確実にバランスを崩すのだった。


 騎士は槍を振り、穂先を下に向ける。婆娑羅は槍の属性は解除しており、利用されないようにしているようだ。そして、刺さっている槍を引き抜いた、傷となり血が出てくるがそれでも気にしていないようだ。婆娑羅は騎士がいたところに行き、地面に刺さっている槍を引き抜き投げ飛ばした。騎士はその槍を奪った槍で弾き飛ばす。


 手元にある槍の本数が減るのが良くないと考えたのだろう。投げるのをやめ、数本マジックバッグの中に入れる。最後の攻撃として仕掛けるようだ。婆娑羅の腕には、雷と火の魔法がかかる。もう雨が止んでいる。だが、騎士の鎧の籠手は水魔法で濡れており黒炎を付与することができない。小手の装備を解除し、手元だけ素手になった。水魔法のしがらみが解かれ、黒炎を使うことができるようになる。


 持っていた穂先に血がついている槍を婆娑羅に向かって投げ飛ばした。それを婆娑羅は半身で避け、騎士の動きを観察する。目的は落下位置の予測だ。そして大体の予測がついたのか、走ってその方向に向かう。その際に円の端の方にある槍を1本引き抜き投げ飛ばす。


 そして、大体の予測の位置で動きを止め穂先を上に向け、地面に石突の方をねじ込む。即席のトラップが出来上がる。落下位置は、ちょうど当たりだ。あとは騎士の行動次第で避けることも槍に当たることもできる。婆娑羅の手元には槍を持っておらず、殴りしか残っていない。


 婆娑羅は騎士が落下していく方に走っていく。落下と同時に殴るつもりだろう。落下による威力を逸らすことに失敗した時に攻撃を仕掛ける予定だ。そして騎士が落下をした。騎士は穂先を地面に向け、先に地面が当たるようにし、足が地面に当たるかどうかは賭けに立てようだ。


 飛ばされた騎士が持っていた位置エネルギーは、その穂先と地面が当たった衝撃として消費される。騎士の手はすり減り、皮も捲れている。その血は近くにあった槍の持ち手に付着していた。あの槍が近くにあったからこそ、その槍を掴み、位置エネルギーを分散することができた。


 その結果生き残ったのだった。だが、これで片腕は使えなくなった。ボロボロの手を握り締め、婆娑羅と騎士の拳がぶつかる。騎士が反対の手で婆娑羅を掴み、体重を婆娑羅の方にかける。その体重が急に乗せられたことにより婆娑羅は背中を地面につけた。婆娑羅の左手は手刀として爪のある先端を騎士の首元を刺し、騎士は婆娑羅の首元に右手で握り潰そうと首元を掌を置いている。


 残っている反対の手は、騎士が押さえつけることにより動きを封じている。だが、この指の力により両者引き分けになっているといっていいだろう。この左手がなければ婆娑羅の爪が喉に刺さり、騎士の負けが確定していた。引き分けでは気分が良くないのだろう。正直に言うと騎士の勝ちだった。どっちにしろあの攻撃で婆娑羅の効き手であるはずの右腕は使えなくなっていたはずだ。


 騎士の温情で攻撃されなかっただけだ。本来であれば全体重をかけていた。下にいるものがクッションとなり潰れるのだから、自分が受け身を取る必要はない。騎士が婆娑羅の右腕を引き、投げ飛ばした。騎士はすぐに片膝をつくことで、バランスを崩すことなく戦闘を継続させる。


 婆娑羅が繰り出す殴りを手のひらで受け止め、外に受け流す。婆娑羅が攻撃を当てるために、連打をしてきた。そのうちの1つの拳を手に取り、その腕を引いた。婆娑羅がタイミングを崩すのだった。それを逃さず騎士が左手で殴りを入れた。


 だが、そのカウンターは失敗に終わった。婆娑羅がその腕を弾いたのだった。婆娑羅の腕を掴んでいる右手の上を通る。騎士が弾かれた時を考え、上に拳がいくように考えていたのだった。騎士の首が隠れた。このタイミングで婆娑羅が、掴まれている腕をもう片方の手で支えてカウンターとして蹴りを放とうとしていた。だが、1番狙うはずの首が隠れており、頭に攻撃対象が変わる。


 その攻撃は頭の上を通過するのだった。その掴んでいる腕を下げ、体が落ちてくる婆娑羅に対して膝蹴りを入れた。しにはしないが決着がついたな。最後の決戦は騎士の勝利だ。


__

いい感じに戦闘シーンがかけた!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る