第1007話

 騎士などのタンク系の職業をしていたため、素早さのステータスは下がっている。そのため、28階層の魔法鹿を相手にした時に近づくことができていないようだ。この鹿の特徴は魔法のみを使うこと、近づくとすぐに逃げ出すことだ。


 近づくには地形の把握と、そこに慣れた動きが必要になってくる。魔法で囲っていいくらいだ。その場合は察知されやすくなることから、さらに考えることが増えるだろう。ライトプロテクトの効果ってどんなのだった?無難に素早さか?それだと風魔法と被っているな・・・。別に風魔法と被っていてもいっか。


 果たしてどんな戦い方をするのか?使える魔法も光魔法くらいなだけだ。光魔法を速度重視にすれば当てることはできるか・・・。けど、速度重視にしていくと、だんだん小さくなってダメージが減ってしまう。魔力を込めた時もこれは変わらない。大きさは変化しないが耐久値が上がるという感じになる。


 結果だけ見れば変わらない感じだ。1撃で仕留めるほどの量と数が必要になってくるだろう。もし1回目で怪我を負わせてしまった場合、即逃げに徹せられる。この方法を取るのなら、最初の方は受け止めさせてからするのが正解だろう。


 さあ、王子と鹿が出会った。最初に見つけたのは王子だったため、その鹿に向かって魔法を放つ。一応どんな特徴があるのか聞かれたため、魔法が得意なで素早いことを伝えた。調べても同じような結果しか出てこなかった。


 将来的には俺から離れてソロでダンジョンに行くことになる。調べるかどうかは知らないが、大抵は調べるだろう。情報を調べて、魔物の特徴を理解してからその階層に行くはずだ。ネットで出るよりも詳しいことを言わないようにしていた。


 もちろんネットもそうだが、あまり載っていないことがある。それは一般常識のようなものだ。ここにもそれがある。先制攻撃をした時の鹿の行動だ。王子の与えた攻撃により、鹿が王子の存在に気がつく。そして、傷を癒すために逃げ出した。


 木々の隙間を移動しながら逃げていく鹿を王子は追いかけていく。ステータスは上がっているが、そこまで深くは考えていないようだ。ライトプロテクトを自身に付与し、気力操作で身体強化を施し走っていく。鹿の傷がだいぶ回復した時だった。


 反転し王子の方に向き直る。そして、ウォータージャベリンを作り放つ。対する王子はライトボールを作り出し迎え撃つようだ。小さく圧縮さえているためスピードがあるのだとわかる。その上がったスピードでウォータージャベリンを破壊しながら鹿の方に進んでいく。


 1日潜った時に魔力が持つのかが不安だな・・・。魔力回復のあの杖があるのだから今はできている方法だ。今日から使わないようにするか。圧縮したウォーターボールを作り出し、ライトボールと相殺する。長引きそうだな・・・。


 魔力の差を感じたのか、ウォーターボールの数を増やしてきた。それを潰すために圧縮したライトボールを作っていた。だが魔力の残量や戦闘の継続時間から、剣や盾に魔力を纏わせた。なったばかりの魔法使いとその上をいく魔術師の場合だと、圧倒的に魔力量の差が出てくる。


 もう少し判断を早くしないといけないところだ。次々にいくのが早かったか・・・。物理系のステータスは足りているが、魔法系のステータスが全く足りていない。そこで勝敗が分かれてしまいそうだな・・・。しばらくはレベル上げになるだろう。その時ならソロでもいけるだろうから、来週は一緒に潜るのは休みになるかな?


 飛ばされてくるウォーターボールを剣で2つに切ったり、盾で弾いたりしながら魔力消費と回復を待つ。時間がかかりすぎだな。隠密を発動した俺が横から鹿の首を切り落とす。そして、そのドロップを渡した。


「あと少しで勝てたのに・・・」

 そう言いながらいじけている。


「負けてたから大丈夫。1日ダンジョンに潜ることを考えると、それくらい魔力を使っていればもう潜れないでしょ?」

「けど、あの杖があるじゃないですか?」


「それは俺のだからね。慣れるのは困るから、今日は貸すけど次からは貸さないよ?探しながら今回の反省点をしようか。で?何が反省するところだと思う?」

「威力と魔力不足」


「まあ、それはそうだけど。そこはレベル上げをするから、来週はソロで潜ってもらおうと思うよ。来週は俺はいないからね」

「了解です!反省点は何ですか?」


「先制攻撃の甘さだね。今のレベルだと、あの鹿と自分どっちが強いと思う?」

「あの鹿ですね」


「正解、スキルレベルと魔力量のどちらもあの鹿には劣っている状態です。優位かつ勝ち目があるところはなんだ?」

「油断している時?」


「それもそう。あとは力を測るための先制攻撃だね。あそこが1番脆いかな?最初に光魔法で怪我を負わせたじゃん?その時の攻撃数が足りないかな?正直あの場所で決着はついていたかな?結果論でごめんね」

「逃げられる前ですね。あの時も攻撃が通るかの確認をしていたので別にいいかなって思ってましたね」


「ちょっと甘いかな?最初の攻撃で防がれると格下って思われるから攻撃は続くよ?同じくらいの力でも成長すれば、脅威と判断して攻撃をしてくるし殺せる時に殺しておかないとね。」

「はい・・・」


「そこ以外は満点かな?あとは最後かな?魔力消費を気にして武器に気力流したでしょ?」

「なんでわかって・・・」


「そこは良かったよ。防いで魔力切れを狙ったのもいい作戦だった。けど判断が遅いかな?慣れていけばいいから大丈夫だよ。時間も勿体無いし、さっさと30階層まで進んでみるか。魔物は全部スルーするよ」

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