第1018話

 42階層にやってきた。オークはリーダーを中心としたグループを作ることはわかっている。それが大きくなって集落になっていても不思議ではないだろう。木々の背が高く太いため、丸太トラップを仕掛けたときも正常に働くようだ。


 森の中に入ってすぐ、丸太トラップがありそれを回避する。先端の尖った丸太の中心を意図で結び、木に吊るし落とすことでその先端がそこにいる人に当たるような仕組みだ。だが、これには欠点があった。それは設置している位置が高いことだ。


 木々が高いことで元から設置しているところが高くなっているのはわかる。だが、試験として運用していた対象がオークだった影響だろう。丸太の1番ダメージとなる先端の場所が俺の頭の上を通り過ぎる場所にある。完全な設計ミスだ。


 どうやってトラップが作動した?人感知センサーなんて高度なものはオークが作ることができないはずだ。作動するようなボタンを踏んだつもりもない。隠密はダンジョンに入ってから常時発動しているため、察知されていないはずだ。


 チュートリアル用にこんな罠がありますよという報告だろうか?そのためだけに、人間感知用のセンサーが置かれていたのだろう。それならまだ納得できる。分身体を2体出し、木の上に引っかかっている糸を切り罠を壊していく。


 ドン、ドンと丸太が地面に落ちていく音に釣られて、何体かのオークがやってきている。落ちている丸太から糸を見つけ出し、上を見上げどうやって壊されたのかの確認をしているようだ。経年劣化で壊れることはよくあることだ。それであれば、他の丸太の点検に行く必要が生まれた。


 一旦道具とかを取るために、集落に戻るはずだ。分身体を消し、そのオークの後ろをついていく。動きが遅いことに少しイライラしながらも、集落にたどり着いた。その後1つの小屋に入っていき、鉈と糸を持ち少人数のグループを呼び出して森の中に消えていった。集落の周りには柵がされており、一方向からの侵入しか許さないようにされている。また、物見台も設置されており外敵からの対策もバッチリだ。


 森の中に消えたオークの家は石造りの家だった。石を積み上げて、何かの材料で固めているものだ。そして、床には毛皮が敷かれている。その床をめくってみたがただの土だった。雨風を守るために石の壁を立てた感じだ。足からの寄生虫を防ぐために毛皮が敷かれているのだろう。


 あまり火魔法が効くとは思えない。家ごと破壊するなら、土魔法か水魔法だろう。家の中に立て込まれた場合は、その家の屋根や壁を破壊して生き埋めにする。水魔法なら、立てかけてある土を柔らかくして倒しても良さそうだ。


 地面を固めることなんてしていないはずだ。もししていると水の侵入が遅くなるため、無効化されてしまう。人がよく通るところでも同じようなことをすることができる。だが、家の隅なんてわざわざ通ることはないだろう。近くに道があるのだ。そっちを通る方が当たり前だ。

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