第32話

 俺の番が回ってきた。と強者感を出しているが2試合目だ。全く待っていない。目立ちたくないので、気配を消して中に入っておく。名前を呼ばれ、解除をした。




 相手は魔法使いだ。というか、なんで魔法使いが多い?割合的には魔法使いより、近接系が多いはずだ。それなのに、なんでこの部活には魔法使い系がこれほどまでに多いのだろうか。




 開始直後に腹パンを入れ決着がついた。腹パンの痛さのあまり気絶をしたようだ。魔法職のこともあり、素早さが足りない。そのため、反応ができていなかったようだ。これがステータスで殴るだ。




 あっさりと決着がついたが、他のパーティーメンバーからは熱い眼差しを向けられている。何が起こったのかわかっているのか不安だ。離れに入り気配を消し元の観客席に戻った。




 勇者君の表情はどうでもいい。一番気になるのは、やはりそうだったのかと言わんばかりにニッコニコの部長が怖いぐらいだ。あの人の腹の底がわからない。




 もし勇者君が主人公だったとしたらもしかしたら負けイベなのかもなー。そんなことを考える。勇者君がしてきそうなことは剣を持って突っ込んでくること、と魔法ぐらいか。そこに気をつけていれば問題なさそうだ。




 そんなことを考えていると、次の試合が終わっていた。勇者一行の一人盗賊ちゃんだ。名前?そんなものはめんどくさくて聞いていない。というか関わるわけない人の名前を覚えて何になる?覚えなくていいものは覚えない主義だ。そのまま、スルーする。




 次もまたもや勇者一行のタンク君だ。鎧はきていないがあの大楯の防御が凄そうだ。あの質量でのシールドバッシュ。あたりたくないな。




 その後も続く。正直勇者君が上がってくるのが目に見えているので、戦いを見なくていい。スマホでゲームを始める。気がつくと名前を呼ばれていた。気が乗らないが、立ち上がり入った。




 なんだか剣士君は怒っているようだ。時間ぐらい守れとか、戦いを見て勉強をしろと口酸っぱく言ってくる。なんか無性にムカつくな。その上からの物言いに。軽く本気を出すか、あの動画を見た後、魔法使いでも同じことができないか調べていた。魔力を全体に馴染ませることで身体強化の魔法ができるようだ。それを使う。さらにそれに合わせて気力操作を使う予定だ。開始前にどちらも馴染ませておく。




 開始の合図がなる。まずは念のための素振りだ。シャドーボクシングのように、何回かシュッシュッと音を出しながらリズム良く空気を切っている音が流れる。だが、向かいの剣士の顔は真っ青だ。さらに顔に何個かに切り傷がある。それは今できたようだ。血がたらりと垂れてきている。




 そんなことに気にすることもなく、そのまま一直線に詰めていく。近接戦闘系の職業だ。恐怖状態なのか近づいてほしくないのかわからないが剣を振り回している。その片方に持っている盾を構えればいいものにと思いながら、拳を振るい、アッパーを入れる。




「やっべ」




 少し、前をからぶってしまった。ガッガッと音がし、地面が抉れた。さらに剣士君はたったまま気絶をしている。そのままデコピンをすると倒れてしまった。




 うん、なんか物足りないね。

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