第1254話

 今回はあのスケルトンメイジと違い、柱の全方位に光がついており奇襲をされる心配はないだろう。明かりがついているかついていないのかの違いは、主体となる魔物が動くか動かないかの違いだ。今回はスケルトンナイトがいることで前衛が成り立つため、動く必要がある。そのため、全方位から情報を得ることができるようにしているのだった。


 安全確認のように魔法使いが横の方に立ち右側はウィンドランス、左側はウォーターランスを出し罠を破壊しようとしていた。だが、罠は存在しておらず、何も切り裂かずに奥の壁にあたる。魔法が壁に当たった瞬間だ。有刺鉄線が張り巡らされる。


 走り出そうとしていた短剣の勇者の足が止まった。勇者たちは魔王の動きを全員が見る必要があると判断し、少し前に行き全員を門の中に進ませようとしていた。その間も大楯の勇者を狙い、メイジが大量に魔法を与え続ける。この弾幕が解かれるまでは後ろを見ることが出来ないだろう。一歩、一歩少しづつではあるが勇者たちは進み出す。そして、最後の1人が魔王の部屋に入ろうとしていた時だった。


 側面からスケルトンが召喚され数で押されることを警戒していた魔法使い2人の腹から剣が生える。押し扉の影で隠れていたスケルトンが現れ、前ばかりを警戒していた魔法使いを背中から刺したのだった。急所は外れてしまったため、一命を取り留めたようだ。


 その刺した剣を、引き抜こうとするスケルトンを他の勇者が殺した。全ての勇者が魔王の部屋に入ったことで陣形を組むのだった。前衛と後衛だけの構成だ。前衛のうち数名の勇者が後衛の護衛と、後ろから挟まれることへの警戒をする。


 怪我をした2人の勇者は後ろを見張り、敵が来たら固定砲台として動くように指示されている。何も怪我をしていない後衛の勇者の構成は、魔法使いが3人、バッファー2人、デバッファー1人という構成だ。勇者が前に出るのに対抗し、スケルトンナイトが前衛として前に出る。もう、勇者にバフはかかっている状態なのだろう。


 バッファーも武器を持ち仕事がある魔法使いの警護に当たるようだ。スケルトンナイトの戦い方は大きく変わるのだった。1回目の戦闘の方は速殺対象切り替えといった形で、1体1体の勇者に対して全ての腕を使った本気戦闘を行っていた。だが、すぐに殺されたため戦闘スタイルを変更したのだった。1体の勇者に1本の剣を、これが戦いの考え方に変わる。勇者の動きに剣を合わせるだけで攻撃を防ぐことができるのだから、簡単な仕事だろう。


 このスケルトンナイトと勇者が戦っている間は、勇者側の後衛の魔法使いは何もすることが出来ない。横からの攻撃で殺される可能性があるのだ。そう易々と団体から離れて行動するつもりはないのだろう。8本のライトジャベリンがスケルトンメイジの足元から飛ばされた。勇者とスケルトンナイトのせいで見ることが出来ない死角からの攻撃だ。


 柱と壁の隙間を通り、柱の影を地面に大きく写すはずだった。柱と壁の隙間に飛んだのは2本ずつのものだった。残りの2本は正面の少し高いところからより強い光を出しながら飛んでくる。そのため、光に押し負けた影は、地面ではなく壁に暗闇を写すのだった。


 ギリギリ届かないところを動くことで前衛からの妨害もない。ただ、1人の前衛が後衛を護ために動こうとしている。魔法のスピードに人間が追いつくはずもない。判断ミスだ。大楯の勇者は正面からくる魔法しか理解していない。そのダメージの低い魔法を大楯のスキルで引き寄せ、自身の盾に当て無効化するのだった。


 残っている4本のライトジャベリンは方向を変え、魔法使い側の地面に激突し、煙幕や目潰しを行う。煙幕による目眩しは成功したが、目潰しには失敗した。

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