第646話
その広い表面が氷の地面とぶつかったことで、その体を凍らせ始める。体の形を変えればいい話だが、すぐに体の形を変えようとしない。何か制約があったのかもしれない。凍り出したことでその動きもゆっくりに変わっていく。
下半身が馬の4足歩行で、股あたりに馬の頭がある。なんとも奇妙なオブジェが完成した。俺の予想では、体を元に戻した後、また最初の体の形に戻さないといけない縛りがあると思う。形を記録できるのだとすれば、そのメモリーは2つなのだろう。
そのうちの1つは馬に使われており、棘の形にしてはその形状をメモリーから消し、新しい形として溶ける形を入れていたのだろう。だが、馬の形に囚われている。元の名前がケルピーだったからだろう。伝承によって最初の縛りとも言える形が決まっていたのだろう。
その歪な氷像に斬撃を放ち木っ端微塵にした。転がるコアを騎士が踏み潰した。パリンとガラスが割れたような音が響き、ケルピーが死んだことを示す。そしてドロップしたのは瓶詰めされた液体だ。うっすらと緑掛かっていることからケルピーの体の一部なのだろう。
鑑定をしてみると、それはケルピーの汁(魚)だ。どうやら出汁が取れたようだ。緑ってのが許せないな。せめて無色であるべきだと思う。緑の食べ物が少ないように色との相性は最悪だ。魚の出汁なんて、味噌汁で使われるようなものだ。
茶色と緑が合わさればカーキーだ。そんな食べ物を食べたいと思うか?俺は思わない。スープにする方がまだマシだろう。野菜から色素が落ちたといえばいいだろう。ダンジョン産ということや紫キャベツなんかの例を出していれば馬鹿は信じるはずだ。
本当のことを知っている人からすればあまり手を出したくない一品でもある。大人になってからは見た目からの毛嫌いが一番多くなるらしい。その一端を見てしまった形になった。これが未来に行けば受け入れられている日が来るのだろうか。来て欲しくないな・・・。
まさかのここにきて出汁か・・・。液体が来るということは、あの馬刺しが落ちるということはデマだったことが確定したと言っていい。ドロップするとしてもケルピーのコア?のようなものに他の種類の出汁、あとはスキルブックや指輪といった装飾品が落ちる。
もう馬刺しが入る余地なんてものは存在していないだろう。クソが・・・。食べたい気持ちを返せー。口の中が馬刺しの気分だった。帰りに阿蘇おで料理してもらおうかな?そう考えていた矢先にドロップしないとか酷すぎだ。
帰りは馬刺しがある店に直行することができまった瞬間だった。そして、出汁といえば野菜が溶け込んだもの、豚骨、中華、鳥、魚。ぐらいか?今思いつくものはこれぐらいだが、多く集まればまさに最強で究極のラーメンを作ることができそうだ。
時間が経ち普及するその時が楽しみだ。ダンジョン産業が発達している中手を出さないそんな人はいないだろう。
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